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Ⅺ 青い鳥はすぐそこに
163. お弁当箱の中身は?
しおりを挟む畑の手入れをし、朝食を済ませ、ご領主様依頼の修理を進めようと腰を据えたちょうどその時、戸口がコンコンと叩かれた。
「はいはーい、どうぞー」
村はずれまでくる村人はそう多くない。来るのはバッソさんがダントツで多く、他もバッソさんの(干物屋のおばちゃん曰く)悪友たちばかりなので、立ち上がらずに招いた――のだけれど。
「すまない、邪魔させてもらう。その、神秘の器具を修理できると聞いたのだが」
「ふぁぃえ!?」
驚きのあまり変な声が出た。
やってきたのは、意外にもウィルだった。
「ちょ、あ、うわっ、ご、ごめん。汚いよね。ええと、座れる場所は」
「いや、このままで構わない」
「……ごめん。えーと、修理の依頼だっけ? 直せるかは見てみないとわからなくて。今、持ってる?」
「ああ。これを」
ウィルがななめ掛けの布袋に手を入れた。出てきたのはシンプルな木箱だ。長方形で、お弁当箱サイズの。
その木箱を見た瞬間、記憶の映像が奔流となって脳裏を駆け巡った。
私はこれを、知っている。
「どうだ?」
「あ……うん」
震える手で受け取り、故障を確認すべく自身の神秘を目に集める――のだけれど、見えたと思った瞬間、霧散してしまった。それほどまでに私は動揺していた。
木箱は、学院の最初の実技で使用したものだ。
そしてこの箱は――私が授業で神秘の構成を組み込んだ、神秘の器具だった。
他の誰でもない、私が作った神秘の器具だった。
どこで手に入れたのだろうか。どうして直そうとしているのだろうか。聞きたいことは山ほどあった。
ちらりとウィルに目を向ける。ウィルは真剣な表情でじっと私を見ていた。
「難しいか?」
「え? あ――ごめん。もう少し」
うっかりとしていた。これは仕事だ。私事を持ち込んではいけない。
ウィルの言葉で我に返り、私は改めて目に意識を集中した。
「っ」
見えた神秘の状態はひどいものだった。
もともと構成されていた回路から、枝毛のようにいくつもの余分な道ができ、あるいは別の所では回路が途切れていたり、詰まって流れなくなっていたり。そんな箇所が山ほどあった。もはや数えられる数ではない。
普通に使っていただけならば、絶対にならないであろう破損状況だった。
「どうしてこんなことに……」
「すまない。あまりはっきりとは覚えていないんだが、自分の感情を持て余して――ぶつけてしまったようなんだ」
私は目を見開いた。ウィルはとてもそんなことをする人物には見えない。いつだって冷静で、落ち着いていて。だから信じられなかった。
「あのときの自分は、どうして苛立っているのかもわかっていなかったんだ。ただ憎くて、腹立たしくて――苦しくて、悲しくて、寂しくて、むなしくて……。気づいたときには、もう……」
ウィルの苦しげな声で告げる。私の胸はもう引き裂かれてしまいそうだった。
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