まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅹ 集まる想い

150. 運の良し悪しの結果

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「あの、では、メリッサさんのおじ様は一体どこまでかかわっていらしたのですか? もしかしておじ様がメリッサさんを利用されていたのですか?」

 一通り報告書に目を通してから尋ねる。
 メリッサさんのおじ様が絡んでいるということは、その可能性もあるということだ。メリッサさんがミュリエル様を苦々しく思っていたことは、メリッサさんの行動からわかってはいるけれど。

「いいえ。その点は最初の推測の通りでしょう。ウィガーラは可愛い姪のおねだりを聞いて、人員を手配しただけ。神官の手配もしていたけれど、本当に秘儀が使えるとは思ってなかったのではないかしら。秘儀は大神官にしか伝えられていないもの」
「秘儀……」
「そう、入れ替わりの神秘は秘儀なの。だから、ウィガーラもその構成は知らなかった」

 思い返せば私も、入れ替わりの神秘をどこで知ったのかと問い詰められていた。それが、知っていてはいけない神秘で、その構成を新たに編み出そうとしてもいけないと言われていた神秘だったことを思い出す。

「マリたちにとってはちょっと不運が重なってしまったのね。大神官以外知らないはずのそれを、ドビオン伯爵令嬢が知ってしまったから」
「そんな、どうやって」
「はっきり言ってしまえば、単なる運よ。偶然、大神官も把握していないような場所にあった古い記録を見つけてしまったようなの」

 そんな偶然があってたまるかといいたいところだけれど、実際にあってしまったのだから仕方ない。そしてこの秘儀を知ったからこそ、メリッサさんは神官を連れていったのだろう。

「ウィガーラが自主的に動いたのは、マリの予知の話を聞いてからね。新しい巫女を見出したとなれば中央に返り咲けると考えたのでしょう」

 ドビオン伯爵家(の分家?)は元々大神官を多く輩出していた家系だという。けれどここ何代かは別の者にその席を奪われてしまっていたため、これをいい機会ととらえたようだ。

「それでウィガーラは王太子殿下に、ミュリエルの体に悪霊が入っていると指摘した。それが、ボルトがエイドリアン伯爵を通して、ミュリエルを見つけたと伝えたすぐあとだったの」

 そのころ私は何をしていたのだろう。ベイル様と会えないことにばかり気がとられていたけれど、裏ではこれだけの人が動いていた。そこから、私にとっては晴天の霹靂だったセーファス様たちによる糾弾も、彼らからすれば待ちに待った機会だったのだとわかる。

「ボルトの暴言のことも聞いたわ。なにも貶めるような言い方をしなくてもよかったでしょうにね」
「あ、そ、そのっ」

 私は焦った。ボルトがベルネーゼ侯爵家の従僕だということを失念していた。ボルトの私に対する反感は、ミュリエル様以上に強いに違いない。領地にいるとはいえ、私がここに滞在していることを知ったら――。

「ごめんなさいね。罰らしい罰は与えられないの。せいぜいミュリエルから引き離して社会勉強させるくらいしかできなかったわ」
「えっ!?」

 私はぎょっとした。そもそもボルトは罰を与えられるようなことはしていない。むしろ、
ミュリエル様を探し出したのだから称えられて然るべきだ。

「ええと、その……ほ、褒賞を与えないのですか……?」
「ミュリエルを探し出したから? それは違うわ。ミュリエルは自分から家出したんだもの。危険があると承知でね。それにあの子は馬鹿じゃない。どんな苦しい状況下にあろうとも、帰ってこようと思えば自力で帰って来れたわ。つまり余計なことをしただけなのよ、ボルトは。私たちにとっても、ミュリエルにとっても」

 ずいぶんな言いようだ。けれど裏を返せば、奥様がそれだけミュリエル様を信頼しているのだとわかる。

 いや、やっぱり自力で帰ってくるというのは無茶じゃないだろうか。その時のミュリエル様の見た目はマリだったのだから。

「あの子たちのことはいいのよ。放っておいても勝手に幸せになるわ。それよりマリよ。ちゃんと幸せになりなさいね」
「それは……」

 国を出て以来、ずっと、私に幸せになる資格はないと思っていた。けれど、たぶん、幸せになるのに資格も何もなかったのだ。幸せになれるなら、なればいい。

「大丈夫です。あの方が幸せになれば、私も幸せですから」

 幸せの形も一つではない。それなら私はベイル様の幸せを願う。それが叶えばきっと私も幸せだ。

「そう。なら気合いをいれないといけないわね」

 そして奥様が合図をすると、テーブルの上にどっさりと紙の束が置かれる。

「奥様、これは?」
「裁判で使う予定の資料よ」
「え……ええ!?」

 私は驚いて資料を手に取る。そこには三年前のメリッサさんの行動記録や、神殿の動き、裁判前後の貴族たちの動きなど、様々なことが事細かに記されていた。

「この短期間でこんなに……」
「短期間ではないわ。二年近くかけてのことだもの」

 呆然と呟けば、奥様が平然と答えた。

「二年……?」
「これは私が集めた資料ではないわよ? 言ったでしょう? マリには力強い味方がいると」

 それは聞いている。けれど、奥様の他に……?

「それは――レイラ様、ですか?」

 奥様は答えなかった。




 そして――。
 王都に到着しておよそ一か月。ベルネーゼ侯爵は裁判の申し立てをした。入れ替わりの真相解明と、神官による越権行為の追及という議案を掲げて。

 
 
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