まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅹ 集まる想い

151. 注目の裁判のはじまり

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 裁判が開かれたのは、真っ赤なカエデが舞い散る晴れた日だった。

 今回の裁判では、ベルネーゼ侯爵が原告であり、検察で――メリッサさんとその叔父が被告にあたる。さすが侯爵家というべきか。御前裁判でないにもかかわらず、多くの貴族が集まっていた。
 そんな人々の中で、声高に話す男性の姿があった。

「いくら侯爵家といえども、このような事実無根のことで裁判を起こすとはいかようものか。このような勝手を許していいものか」

 メリッサさんの叔父、ウィガーラだ。ウィガーラは今回の裁判がいかに理不尽なものであるか、不服であるかを訴えてまわった。聴衆の中にはそれに賛同する者も出ており、場は少々混乱していた。

「心配はいらない。すぐに真実が何であるか、みなも理解するだろう」
「そうよ。大船に乗ったつもりで待っていてちょうだい」

 侯爵様と奥様は私を安心させるようにそう言って、議場へと向かっていく。私は侯爵様と奥様を見送り、使用人の控室へと下がった。侯爵家の侍女といえども議場には入れないのだ。
 私はそっと壁際に寄り、目を閉じた。


 こうして、三日に渡る裁判が始まった。


 私は、直前まで整理作業に追われていた資料のことを思い出していた。先日、私の味方だという人物が揃えてくれた資料だ。
 資料は量もさることながら質もよかった。綿密な裏どりが行われ、ささやか過ぎる証言や証拠もすべて記録されていた。丁寧な仕事ぶりからは、その人物がどれほどこの件のために心を砕いてくれているかが感じられた。

 例えば、私がレイラ様の協力で牢を脱出した日。資料によると、私は身代わりの孤児とすり替えられ、神殿に連れていかれる予定だったという。孤児というより天涯孤独の少女か。少女は私の代わりに処刑されることになっていたとか。
 現状、巷の噂では処刑されたことになっているけれど、私はもちろんその少女も無事だ。少女は保護され、事情聴取をされたあと、安全な場所に身を隠しているという。

 で、その身代わりの用意を指示したのが、ウィガーラだった。少女を拘束したのは例の破落戸たち。少女の証言からそれは明らかで、そこからウィガーラとの繋がりを確認できたという。
 ウィガーラの罪は、少女の誘拐、それからメリッサさんに破落戸と神官を提供したことによる犯罪幇助か。神官を勝手に派遣しているので神殿の規則にも反している。神殿は半分国の機関であるから、国家資産の横領というような扱いになるかもしれない。
 何気に重いのが、セーファス様に対する虚言や唆しだ。セーファス様は王太子であるから、嘘を吹き込んだり騙したりすることは重罪にあたる。入れ替わりに直接関与していなかったと言えども、刑罰から逃れることはできないだろう。


 それから、奥様も言っていた、メリッサさんが偶然入れ替わりの神秘を見つけてしまったという話。その仔細も書かれていた。
 王都からほど近い場所に、ドビオン伯爵家が管理している塔があるのだという。古代神殿の一部だろうと言われている塔で、遺跡だ。
 塔には隠し部屋があり、その壁面に、入れ替わりの神秘の構成が記されていることがわかった。管理は任せているけれど、ドビオン家の資産ではないということで、強制的に立ち入りをし、確認したらしい。

 というのもそこは、たびたびメリッサさんが出入りしていた場所だったからだ。目撃者も多数おり、さらに、残された足跡などから、メリッサさんが隠し部屋に入ったことは間違いないと言われていた。
 現状、秘儀と言うよりは、都合のいい神秘の器具がないか探していたのではないかと考えられている。

 そういった細かな行動がわかってくれば、自然とメリッサさんの罪も浮かび上がってくる。
 まず、神殿所有の施設に許可なく立ち入ったこと。
 使用が禁じられている秘儀、入れ替わりの神秘を発動させたこと。
 高位貴族であり、王太子殿下の婚約者候補であったミュリエル様を狙ったこと。
 入れ替わりの後、遠くの町に捨ててきたというのも、誘拐に類似した罪となる。
 軽いものを含めれば、きりがないほど罪を重ねていた。きっとメリッサさんには厳しい判決が下されるだろう。




「え? 認めてない? の、ですか?」

 帰ってきた奥様からの報告を聞いて、思わず聞き返してしまう。
 証拠は十分にそろっていた。ディダの酒屋のおばあさんも、グラッセラ子爵も証言に立ったという。
 だから、すぐに観念すると思っていたのだけれど。

「マリの時と違って、首輪をつけるわけにはいかなかったのよ。だから、尋問から逃げることができてしまうの」

 何が障害になっているかというと、罪として要求すべき出来事が単発ではなく関連する複数の事柄からなっていることらしい。これが証拠だと示しても、この件とその件とは関係ないと言い張られてしまうと、その効力が弱まってしまうというのだ。

「大丈夫よ。可愛い私の娘たちに手を出したのだもの。絶対に逃がさないわ」

 奥様はいつになく強く断言した。


 二日目も、さほど進展はなかった。
 そのため、本来では出すつもりのなかった、メリッサさんの侍女にも証言台に立ってもらったという。侍女はやはりメリッサさんに黙っているよう脅されていて、奥様に真実を話す際もひどく怯えていたらしい。だから、侍女を気遣い、表には出さない予定だったのだけれど。

 奥様たちのことは信じている。けれど、やはり少しだけ不安になった。



 そして三日目。
 最終日の今日は、判決が下されることになっていた。

 
 
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