まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅰ ここはどこ? 私は誰?

1. 夢? それとも現実?

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 ガシャン と耳障りな音がした。

 どこかで聞いたことのある、重厚な金属音。
 真っ暗な闇の中。ざわつく胸を押さえながら、私は体を震わせた。




 瞼越しに光を感じた。
 少しひんやりとした空気に、懐かしさを感じる土の香り。遠くからは水のせせらぎが聞こえていて――。

 目を開くとそこは、のどかな農村だった。
 青い空の下。車や人が撒き散らす騒音もなく、代わりに小鳥のさえずりが聞こえるという贅沢さ。
 なんて気持ちがいいんだろう――。

「って、ええええええええええー!!!」

 のどかな農村の、道の端に突っ立つ私。

「こ、ここここここどこっ!? 何っ!? え、怖い! え、ええっ!?」

 周りの景色を認識して、思わず声を上げた。気がついたら見知らぬ場所でしたとか、そんなのホラーでしかない。
 何か一つでも見知ったものがあればいいのだけれど。見回して目に映るのは、旅行先でも目にしないようなタイプの木造の家や小さな畑、家畜小屋くらいだった。あ、あと舗装されてない道。つまり、見知ったと言えるものはどこにもなかった。

「えーと……? これ、どう見ても日本じゃないよね」

 口に出すまでもなく、私とてわかっていた。
 なにせ道の少し先を、背の高いブロンドの髪の男性が、荷車を引いて歩いていたのだから。


 私、水井茉莉(みずいまり)は、れっきとした日本生まれ日本育ちの日本人女性。でもって海外旅行にも行ったことがない純粋培養(え、違う?)だ。
 もしここが、私の見ている夢の世界だったとして、そんな私がこんなリアルにこの光景を思い浮かべられるだろうか。いや、無理に決まっている。

「あ。でも、海外っていうよりゲームっぽい? プレイヤーが初期装備を買う最初の村って感、じ、が――」

 言い切る前に、ガツンと頭を殴られたかのような衝撃を受けた。物理ではなく、精神的に。

「えっ!? ええぇぇぇぇっ!?」

 右を見て、左を見て……見上げたり、前を向いたりして。それから恐る恐る自分の体へと視線を落とし――すぐに目をそむけた。

「いやいやいやいや、まさか、ね」

 もう一度自分の姿を見て、頭を抱える。

「嘘でしょ……」

 一言で表すなら、私の恰好は貧民スタイル。丈夫さだけが取り柄だろう、厚手のごわごわした生地で作られた七部袖のシャツと長ズボン。
 ズボンは足首が紐で縛られているので、日本人としてはモンペを連想する感じ。しかも色は汚い土色。染めたんじゃなくてたぶん汚れだ。

 そして髪。ブリーチしまくったあとの髪のようにごわごわのがさがさで、肩にも届かないくらい短い。よく見えないけれど、灰色っぽい? 白髪じゃないよね?

「そかそか。服だけじゃないんだ。外見も変わってるってことね。やー、最新のVRゲームはリアルだねぇ……………なわけないか」

 即、一人ツッコみをしてため息をついた。

 そもそも食費節約のために、カロリーを消費しないよう家の中でじっとしていることを選択してしまうほどの貧乏人だった私に、VRゲームを体験しに行ったり、本体を買ったりできるお金などあるはずがない。そういう意味でもVRゲームの中だという選択肢はなかった。

「――転生、ねぇ……?」

 前世の記憶を持ったままゲームのような世界に転生するという話は、ラノベ業界ではよくあるものだ。お金があったころは、どっぷりとはまっていた私だから、まっさきに思いつくシチュエーションではあるんだけど。

「いや、ありえないでしょ。なんで私が」

 嘆いたところでこの現状。転生という二字は脳裏から消えてくれなかった。

「……うん。一旦忘れよう。とりあえず誰かに話を――ん?」

 無意識のうちに腕をかいていた。なんとなく体がかゆい。ぼりぼりと腕をかいて、足をかいて、それだけでは飽き足らず頭に手を伸ばし、はっとする。

「ちょ、やだ! うそ! ひどい! ありえない!」

 私は気づいた。気づいてしまった。

 これは――





 一週間お風呂に入っていないときのかゆみだ!

 
 
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