まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅰ ここはどこ? 私は誰?

11. なぜ気づかない、私

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 なんとか離れてもらい、ようやく一息つく。
 いまだに正視はできないが、こういう時に役に立つのが社会人のマナー。というか、就活の時の知識か。
 顔を見なくともネクタイ辺りを見ていればそこそこ視線が合っているように感じるという――むむ、この距離感だともう少し上を見ないと駄目か。うん、今日のところはいいことにしてもらおう。

 ネクタイネクタイと思って見ていれば、それが目に入る。

 あー、あの首のスカーフみたいなやつなんて言うんだっけ……じゃなくて、話を進めなきゃ。

 口調はこれまでやったことのある乙女ゲームやラノベの情報から引っ張り出して頑張ってみる。
 だわ、とか、おほほっていっておけばいいんでしょ(笑)

「あ、あの! 本当に、ご心配おかけしました。ええと、エイド――」
「ミュリエル」

 思わぬ方向からの声にぎょっとする。言葉を遮るように割って入ったのは侯爵様。
 ――ってあれ、侯爵様いたの?

 私はいまだ出入り口付近に立っていた。ということは、侯爵様は最初からずっとこの部屋にいたことになり――。

 あー……(遠い目)

「こちら、王太子であらせられるセーファス・リングドル殿下だ」

 もうやだ。記憶抹消したい。ここまでのやりとり全部見られていたなんて…――あ、思い出した。クラヴァットだ。
 スカーフっぽいけど、やっぱり違うよね。何より女性がしていることが多いスカーフとは違って男性がしてるからだいぶ印象が変わる。

「ああ、失礼しました。王太子で――っ」

 殿下!?

 聞き流しかけた言葉を拾いぎょっとする。けれど、そのせいで中途半端に言葉を切ってしまった。
 そのままフリーズしかけたところを、侯爵様がごほごほと咳をして先を促す。


 正直、頭の中は真っ白だった。私は何も考えられないまま、侯爵様が示した金髪の青年――セーファス様に向かって口を開く。

「し、失礼いたしました、王太子殿下。改めまして……ご心配おかけしたことお詫びいたします」

 ああああああ! そうだったぁぁぁぁ!
 金髪碧眼って、まさにセーファス様の特徴じゃん! 他にその色使いの攻略対象いないし! 気づけよ私!



 ……………いや、まぁ、気づいてたらうまくできたかと聞かれれば、それもまた違うんだけれども。

「詫びなど必要ないよ。むしろ君が大変な状況に陥っているときに助けてやれなくてすまなかったね」
「いえ、謝罪などなさらないでください。殿下は何も悪くないのですから」
「だが……」

 だ、大丈夫だよね? 王太子殿下に謝罪させたらアウトとかないよね……?
 でも、この茶番みたいなやりとり続けなきゃ駄目かな……。

「セーファス様。そのくらいにいたしましょう。せっかくとれたミュリエルとの時間なのですから」

 仲裁してくれたのはベイル様だ。私の困惑に気づいてくれたのだろう。ありがたや、ありがたや。
 これはもう、神様、仏様、ベイル様って感じだね!

「それもそうだな。記憶がないというなら、なおさら、ね」

 セーファス様の同意も得れて、ふうっと息をつく。
 やっぱり王子様っていうのはハードル高いよね。いや、恋人とかそう言うんじゃなくて、普通に会話するにしてもほら、常識が違い過ぎるでしょ?
 それならまだ次期公爵様の方が話やす……あー、彼も王族の血を引いてるのか……。



 だ、駄目だ。
 どうしてお見舞いに来たのが彼らだったの?
 どうしてもっとふつーのふつーの子たちじゃなかったの?



 うん。それは、まあ、ミュリエルがヒロインだから、だよね! わかってた!
 ……はぁ。

 
 
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