まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅱ 侯爵令嬢ミュリエルです

16. 貴族令嬢の身の振り方

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前の話に修正が入っています。
繋がりの関係上、1話前から読んでいただいた方がいいかもしれません。
よろしくお願いします(2019/07/13)

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 広間の奥までやってきたベイル様がはっとした様子で足を止めた。
 私を見て驚き、目を細め――。

「……きれいだ」

 思わずといった様子で言葉をこぼす。その言葉には万感の思いが宿っているようで――。
 かっと頬に血がのぼった。

 ベイル様はシルバーグレーの服と、深い濃紺の宝石がついたタイピンという出で立ちだった。ベイル様は暗めの色を纏うことの多いので、普段とは違った色味の服に、私もまた目を奪われていた。

「ベ、ベイル様も、その……とてもカッコいいです……」

 途端にベイル様の顔が真っ赤に染まった。そんなベイル様が可愛らしく見えて、思わず笑いを零す。

「な……ミュ、あ、それは、反則だろう……」

 赤くなったことを恥じるように視線をそらして小声で抗議する。

 ベイル様、そのお姿は先程よりもっと可愛らしく見えますよ!

 なんてやり取りをしていると、私とベイル様の間にお父様が割って入った。

「私を忘れていただいては困りますな、エイドリアン伯爵。ミュリエルのファーストダンスの相手はこの私。エイドリアン伯爵の出番は当分ございません」

 あ、お父様、意外と大きかったのね。ちょっと残念。せっかくイケメンの正装をまじまじと見れる機会だったのに。

 いや、わかってるよ? 本気で言ってないってば。
 ここが乙女ゲームと同じような世界でも、乙女ゲームそのものじゃないってことは理解してるつもりだ。ヒロインだから何もしなくても攻略対象と結婚できるだなんて思ってなんかない。

 でも、そっか。社交界デビューを果たしたら、もういつでも結婚できるんだよね。早ければ来年の今頃には結婚している可能性もあるんだ。
 ここを現実と受け止めるなら、恋愛はともかく、結婚についてはちゃんと考えなきゃいけない。


 結婚、ね……。


 日本にいたころは、結婚なんて人生の墓場だと思っていたから興味なんてなかった。
 それは男の言い分じゃないかって? いやいや、女性だって人によってはそう感じても仕方ないと思う。誰だって無給の家政婦にはなりたくないでしょう?

 そもそも結婚っていうのは、男は欲望のはけ口とするためか、家族を養ってるというプライドを保つためだし、女はもしもの時のための経済的保険だったり、愛されてる自分というものに酔いしれて楽しむためだ。
 共通するところでは、自分たちの血を引く子どもを生むことで、老後の安心を買うというのもあるだろう。

 だから男は結婚したあと、女を都合のいい家政婦としか見ないし、女もまた男を自分をちょっと可愛がってくれるお財布としてしか見なくなる――というのが持論だ。

 愛だなんだと言いつつも、結局はそんな関係で、見栄を気にしないのであれば、結婚など煩わしいだけのものでしかないと思っていた。

 だから私は恋もできなかった。
 二十歳過ぎれば、結婚を見据えての付き合いになり始めるし、私もここに来る前はもう二十四歳で、周囲はぽつぽつと結婚し始めていた。
 学生時代のうちに恋愛しておくんだった、って思ったのはまぁ社会人になってから。でも結婚が視野に入ってきたことで、その頃には男に興味を持てなくなっていた。


 ただ、結婚に興味持てなかった理由が、自分のひねくれた結婚観のせいだけじゃないって、ここにきて気づいた。
 日本の私の周りには紳士的な男性がいなかったからだ。

 見た目のカッコよさだけで言えば、好みの男性がいないわけじゃなかった。
 けれど、下心を隠そうともしないスケベ男だったり、母親代わりにされるだろうことが丸わかりの甘ちゃんだったり、仕事にしか興味がない自己中な男とか、そんな男ばかりだった。――少しは隠そうよ。

 そんな男ばかりに囲まれて、恋なんてできるはずなかった。

 まぁ、類は友を呼ぶなんて言葉もあるくらいだから、結局は私自身に問題があった可能性は否定できないけれど。
 とはいえ、この世界の常識的に、きっと政略結婚をすることになるだろうから、そう気にすることもないだろう。


「存じております、ベルネーゼ侯爵。ですが」

 あぁ、会話、続いてたんだ。
 ぼーっとしてられないことを思い出し、二人の会話に意識を戻す。

「はじめての社交場で、ミュリエルが緊張しているかもしれないと思いましたので」

 ベイル様……心配してくれてたんだ。
 心が温かくなった。一人じゃないという事実が心強い。

「ご心配ありがとうございます、ベイル様。少し緊張はしてますが、大丈夫ですわ」

 お父様の横に移動して顔を見せる。視線が合うと、ベイル様は表情を緩ませた。

「そうか。でも、無理はしないでくれ。陛下たちの入場までにはまだ少し時間がある。別室で休んでくるか?」
「本当に大丈夫です。今は楽しみという気持ちのほうが勝っていますから」

 なんてね。見栄を張ってみたけれど――緊張してないわけないじゃん! ガクブルですよ。歩けませんよ。別室になんて行ったら戻って来れない自信がある。
 ホントやばい。どうしよう。こんなんで国王陛下に挨拶をしたり、ファーストダンスを踊ったりなんて、絶対にできないよ。助けて!

 
 
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