まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅲ ヒロインの宿命?

30. 魔法と科学の中間くらい?

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 そろそろ家を出る時間だ――と思ったちょうどその時、メイド長のタイムがやってきた。

「お嬢様、奥様。王太子殿下がお迎えにいらっしゃいました」
「まぁ」
「――は?」

 楽しげな表情で口を覆うお母様。
 驚き、言われた内容を理解すると同時に顔をひきつらせる私。

 お母様、ここは動じてしかるべきところじゃないですか!? だって、これ、一緒に学院に行きましょうってやつだよね?
 嫌なんだけど! だって目立つじゃん。悪目立ちするじゃん!!




 なんて思ったところで、逃げることなどできるはずもなく、その数分後、私はセーファス様と同じ馬車の中にいた。

「おはよう、ミュリエル。今日も女神のようにきれいだ」
「え!? あ、はぁ……ええと、おはようございます」
「迎えにきたら君が恥ずかしがるというのはわかっていたのだけどね。どうしてもこれを君に渡したくて」

 夜会ではメイヴルール公爵夫人の目があったから、と補足もとい言い訳しながら出したのは、セーファス様の広げた手と同じくらいの大きさの小箱だった。

「メイズヤーンだよ」

 セーファス様が蓋を取ると、中に入っていたのは銀線細工のブレスレットだった。
 銀糸を編んだようなそれは模様を形作ることなく、ただただ複雑に三次元的に絡まっている。その絡まりの複雑さがメイズヤーンの特徴といえば特徴ではあるのだけれど。

 メイズヤーンが何であるかは、社交界デビューする前の詰め込み授業で少しだけ聞いていた。
 いわく、神秘の力を使うときの補助具だそうだ。

 ……何それって? うん、最初はそう思うよね。しかもどこから突っ込めばいいのやらって感じだし。

 まず、この世界に魔法はない。でもって、科学技術が特に進んでいるわけでもない。
 にもかかわらず、結構快適な暮らしができている。特にトイレとか。
 水洗でもぼっとんでもないのに、用を足したあと、跡形もなくきれいになってるんだよ。すごくない?

 ん? 他にキレイな例えがあるだろうって? いやいや、大事だから、これ。毎日のことだから、うん。

 とにかく、そこに使われているのが神秘の力。神秘の技術って言ったほうがしっくり来るかもしれない。
 実際、神秘を使うには豊富な知識と経験と訓練が必要だと言われている。それは想像ではなく、客観的に説得できる理論を元に構築しなくてはならないからに他ならない。

 例えば、豆電球を光らせる回路を想像してみる。電池があって、導線があって、豆電球があって、また導線があって電池に戻ってくる。
 その図面をそのままなぞるように神秘の力で描くと、あら不思議。明かりがついちゃいました――ってなるんだけど、これを「光よ」って感じでいきなり神秘の力を光にしようとしても、光にはならないのだ。


 神秘の力自体は、みんな持っていて、その源は体内にあるらしい。ただ、この神秘の力は訓練次第で増えることもあれば、減ることもあるという。だから減らさないために筋トレがごとく訓練が必要になるのだ。

 で、メイズヤーンの登場だ。これはその神秘の力を使うのに必要な道具になる。正確には使用を容易にするための補助具らしいけれど。
 これには体中に散らばっている神秘の力を集める性質があり、その集められた神秘の力を、同じく銀で作られたペンでもって描くことで行使するという仕組みだ。


 ちなみに、戦争にも神秘は使われているけれど、ゲーム世界の魔法なんかとは違う使われ方がされていることは言っておこう。
 ファイアボールとかは飛び交わないけど、代わりに神秘で作られた大砲みたいなものがバンバン使われているらしい。あんまり知りたくなかった情報だ。


 ま、ともあれ、これがあることによって、現実的かつファンタジーな世界を体現できているのだ。
 中世ヨーロッパっぽい世界なんだけどね。もう少し近代的に感じるのは、きっとこれのおかげだ。

 
 
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