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Ⅲ ヒロインの宿命?
35. ヒロインぶってみた
しおりを挟むそうして苦行とも呼べる授業を終えると、すぐにレイラ様が駆けつけてくれた。
「ごめんなさい、ミュリエル。また、あなたを助けて差し上げられなかったわ」
「いいえ、答えられなかった私がいけないの。レイラ様が謝るようなことではありませんわ」
正直、心苦しかった。けれど、同時に腹立たしくもあった。
ミュリエルとして生きてきた記憶が残っていれば、こんなことにはならなかっただろうと思うと、いるかどうか知らないが神さまを恨みたくなる。
あの平民とは名ばかりの絶賛貧困生活から脱出させてくれたことには感謝していたが、今は今で別の辛さがあった。
「ミュリエル、大丈夫か」
やってきたのはセーファス様。後ろにベイル様とクリフォード様もいる。
レイラ様に頼んで二人には内緒にしてもらっていたのだけれど、どうやら噂が届いてしまったようだ。
「セーファス様、ベイル様。ご心配おかけして申し訳ありません」
「それは構わないが、この学院の質も落ちたな」
「そうですね。ミュリエル、安心してくれ。このような配慮もできない者に、教師という職は長く続けられない」
険しい表情を見せるセーファス様。そして物騒なことを口にするベイル様。私はぎょっとした。
ベイル様のお父上は公爵だ。公爵様から学院側に申し入れがあったら、学院側は教師を処罰せざる得ないだろう。
けれど、この件で、ベイル様の手を煩わせるわけにはいかなかった。
確かに答えられないとわかっている生徒一人を当て続けるという行為は、教師としてあるまじきものだろう。けれど、留学から帰ってきた生徒の実力を測ろうとすること自体はおかしくないのだ。これをその一環だと捉えることもできた。
「いえ、本当に……未熟な私がいけないのです。教師に責任はありません。どうぞこの件に関してはお捨て置きください」
「だが、これはあまりにも露骨だ」
初日の授業で当てられたのは各科目一回だけだった。けれど昨日と今日の授業では平均三~四回、そして先ほどの授業では、正解を答えられるまで当て続けますと宣言されて、かれこれ十回ほど当てられていた。
これが根っからの貴族であったなら、恥をかかされたと苦情を言うところだ。
「ベイル様、次の休日のお約束ですが……やはりご一緒できません」
ベイル様と約束していた次の休日は明後日に迫っていた。けれど、この状況でベイル様と過ごすなど到底できるとは思えなかった。
「それは他人の視線が気にしてか?」
言い当てられて焦る。ベイル様まで、気持ちの良くない視線にさらすわけにはいかないという気持ちは強い。自分一人なら耐えられる――とは言わないけれど、むしろ耐えられないからこそ、一人になりたかった。
「いえ、こんな状況ですので、自習をしなくてはならないと気づいたのです。ですから……申し訳ありません」
「そういうことなら……わかった。だが、手伝いが必要になったらすぐに呼ぶように」
「はい。ありがとうございます」
なんて、いい子ぶってはみたけど……。
もちろん半分は本音だよ。でも、もう半分は――。
集中砲火とか、ふざけんな! 教師むかつくー!! ドブに落ちて嵌っちゃえ!!!
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