47 / 188
Ⅳ 日本人は空気を読める子、だよね
46. 爆弾投下
しおりを挟む学院に通い始めておよそ一ヶ月半。季節は冬に差しかかっていた。
先生がたの対応は相変わらずだ。ただ、面倒になってきたのか、授業で指される回数は減った。クラスメイトたちの蔑みの視線も相変わらずだけれど、いいのか悪いのか同情の眼差しは減りつつある。
いじめられるというよりはいないものとして扱われることのほうが増えてきたかもしれない。最初はこっちのほうがましだと思っていたけれど、地味に辛い。何度セーファス様たちのクラスに逃げ込もうと思ったことか。
ただよかったのは、授業がだんだんとわかり始めてきたことだ。未だにあてられても答えられないが、解答を聞けば言っていることはわかる。だから少しだけど授業は楽しくなってきていた。
そんな感じでミュリエルをやっている私だけど、実はこういうこととは別に一つ、気がかりがあった。
そう、通学初日にしたベイル様との約束だ。
あのとき、私の休みを一日ほしいと言ったベイル様。けどその約束を果たせないまま、ずるずると日にちが過ぎてしまっていた。
ベイル様の願いを叶えたいとは思う。でも私と一緒にいることでベイル様までもが馬鹿にされたら忍びないし、だからといって変に距離を取って他の人たちに割りこまれるのも嫌だ。
ベイル様にはこのまま友人でいてほしいと思っていた。今くらいの距離感なら私からベイル様を引き離そうとする人もいないのでちょうどいい――なんてのは完全に私の勝手な都合だけど。
それに、やっぱり丸一日一緒にいるのは不安だった。絶対にミュリエルらしくない言動をしてしまうだろうから、それで幻滅されてしまうのではないかと思うと恐ろしい。
最近は、そのベイル様とは、毎朝教室の前で軽くおしゃべりする程度の付き合いだ。いつも私より先に来て待ってくれているのが嬉しい。大体いつもセーファス様がいらっしゃるまでおしゃべりをして、セーファス様に朝の挨拶をしたところでそれぞれの教室へと別れる。
セーファス様とはごくまれに一緒に登校することもあるけれど、基本、二人と関われるのは授業以外では朝の時間だけだった。お昼も一緒に食べれるかなと思っていたんだけど、昼食時に男女が同じテーブルにつくことは校則で禁じられていたのだ。
でも、それでよかったのかもしれない。教師の態度のこともそうだし、クラスメイトの視線や嫌がらせもそうだけど、私はいつもすぐにベイル様に助けてほしいと思ってしまう。もし、昼食を一緒に取っていたら、とっくに泣き言を漏らしていただろう。自分がミュリエルであることも忘れて泣きついていたに違いない。
そうしたら、今頃はもうベイル様に愛想つかされて、一人ぼっちになっていたかもしれなかった。
あー、それは言っちゃ駄目か。私には、なんだかんだと私に巻き込まれながらもいつも一緒にいてくれるレイラ様がいる。レイラ様がいるのに一人ぼっちだとか言ったら割を食っているレイラ様が可哀想だ。
レイラ様に対してのクラスメイト達の当たりは当然のことながら悪くないんだけどね。私と一緒にいると絶対に話しかけてこないし、この間の実技がそうだったけど、私に嫌がらせをするためならレイラ様を巻き込むこともいとわない。
レイラ様も侯爵家の令嬢なんだけど、学院内の身分制度ってホントどうなってるんだろうってちょっと疑う。
そして今は授業と授業の間にある中休み。短い休憩なのでベイル様やセーファス様が顔を出すことはほとんどなく、いつものようにレイラ様とおしゃべりをして過ごしていた。
お昼は約束があるからとどこかに行ってしまうレイラ様だけど、中休みはずっと一緒にいてくれる。私が学院を続けていられるのは、そんなレイラ様様だろう。
「ねぇ、ミュリエル様。こう言ってはなんですけれど、どうして学院に戻ってらしたの?」
「え……?」
だから、まさかそんな言葉がレイラ様の口から飛び出すなんて思っていなくて、私は大きなショックを受けた。
0
あなたにおすすめの小説
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる