まさかのヒロイン!? 本当に私でいいんですか?

つつ

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Ⅳ 日本人は空気を読める子、だよね

39. 実技の時間だそうな

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「諸君、静粛に! まだ席の決まっていない人は近くの席に速やかに座りなさい」

 授業の開始時間になると男性教師が前に立ち、声を張り上げた。

 私たちの大机にはそのあと他の生徒が座ることはなく、ベイル様の大机には無難にセーファス様とクリフォード様が座られた。そして、セーファス様がそこに座られたことで、周囲の大机はすべて女子生徒の席になった。
 そんなに近くに座りたいなら私たちの向かいの席にも来ればいいのに、なんてちょっと思ったけど、まあ、それはそれということだろう。

「よし。では、本日より、神秘を使った実技に入る」

 普段私たちの授業を担当するのは女性教師だ。だから前に立つのが男性教師というだけでも不思議な感じがした。日本では当たり前だったのに。
 私は少しだけ緊張しながら、教師の言葉に耳を傾ける。
 
 神秘の実技が合同授業なのは、神秘を専門とした教師が少ないからだという。どの教師も神秘は使えるし、人並み以上の知識は持っているけれど、神秘の力を使うことに全く危険がないわけではない。そのため、授業の際は必ず専門の教師が主導で行わなくてはならないという決まりがあった。
 ちなみにこの授業ではサポート役として、この男性教師以外にも三人の女性教師がついている。この三人は普段の授業でも私たちがお世話になっている先生方だった。

 ちぇ、残念。
 この男性教師は初対面だったけど、いつもの教師が側にいるんじゃ、すでに色々私のこと聞いちゃってるんだろうね。偏見ない目で見てもらうチャンスだったのに。
 この実技でもみんなの前で恥をかかされるのかななんて思ったら、楽しみにしていた授業だったのに、やっぱりちょっと気が重くなってしまった。

「全員、メイズヤーンはつけているな? ペンを忘れてきたやつもいないな? 今日はまずその力を解放し、神秘を一つ起こすこと目標とする」

 神秘の力自体は体内のどこかにある。けれど、巡っている血を特定の場所に集めることが難しいように、また全身にある体温を一部に偏らせることが難しいように、神秘の力を自分の意思だけでどこかに集めることは不可能だった。
 ゆえに考えられたのがメイズヤーンだった。

 メイズヤーンは神秘の力に対する磁石のようなものだ。神秘の力を集め、その場に留めておいてくれる。で、私たちはその力を蓄えたメイズヤーンから神秘の力を引き出すのだ。
 引き出し方としてはペンを使って実現したい神秘の構成を三次元的に「描く」というのが一般的。この「描く」行為自体は神秘の力を通すための道を作っているイメージで、その「道」がきちんと完成することで初めて神秘の力が流せるようになる。で、この「道」にメイズヤーンから引き出した神秘の力を流すことを解放って言っていて、描いていた「道」がすべて神秘の力で満たされると完成だ。

 つまりペンを通して構成を描くために神秘の力を引き出す、というのが第一段階で、それから、きちんと構成を完成させて神秘の力を解放することが第二段階。
 この両方ができないことにはどんなに頑張っても神秘は起こせないのだ。

 ちなみに、メイズヤーンを早いうちからつけておくと体の成長に影響があるらしい。だから成人するまで――十五歳になるまではメイズヤーンをつけてはいけないなんて決まりがある。
 なるほど納得のクラスわけだよね。少しでも早く実技に入れるよう誕生日で区切ったわけだ。うん、神秘中心の世界ならではだね。

「それでだ。神秘の構成が正しく描けていないと力の解放ができないことは知っているな? だからその段階で躓くことがないよう、事前課題として神秘の構成を考え、構成図を提出するよう指示させてもらった。だが――」

 淡々と説明していた男性教師の声が、険しさを含みながら途切れる。私はたった今、耳にした言葉に混乱した。

 ――え? ……え、なにそれ。事前課題? そんなの聞いてないんだけど。

 背中に冷たい汗がだらだらと流れる。
 考えてみればそうだ。男性教師がいうように、解放の仕方を学ぶためとはいえ、神秘の構成ができてなくてはそもそも解放自体できない。であれば事前に解放できる構成を考えておくというのは当然のことで――。
 どうしてそれに気づかなかったんだろう。

「どうやらそれを提出していないものがいてな。よほど自信があるのだろうな。んん?」

 男性教師の視線が私を捉える。私は蛇に睨まれた蛙のように身を固くした。


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