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俺の友人達は問題がありすぎる件2
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渡り廊下を抜け、階段を更に下に降りた先の曲がり角。そこが放送室の場所だった。
「はぁ......はぁ......よかった、まだ圭子は来てないみたいだな......」
荒い息を整えながら、安堵の息を漏らす。
午後五時半を過ぎてるだけあって、校舎に残っている生徒はほとんど居ないせいか(ほとんど居ないと言っても多少は居るため放送は寛容出来ない)いやに静かで、楽斗の吐く息が廊下をこだまするほどだった。
この静寂が嵐の前の静けさにならなければいいが。
「......てか、結局大野に会っちゃうんだったら始めから連絡しなければよかった」
呼吸が整ってくると、次第に上手く回らなかった脳も回るようになっていき、後悔の念が渦を巻いた。
もっとも、今更後悔したところで後の祭りなのだが。
完全に呼吸を整えたところで、不意にガシャガシャとまるで甲冑を着て階段を降りているかのような音がした。でも、まさか本当に甲冑を着ているとは考えられないので、おそらく何らかの機械系の物だろう。
具体的じゃないかつ、曖昧な解答に自分で考えておきながら苦笑する。
だが、分かっていない事しかない訳ではない。これだけは確証を持って言えることが一つだけある。
それはこの足跡を鳴らしているのが他の誰でもない圭子だということだ。でもなければ、こんなイレギュラーな足音を誰が鳴らすってもんだ。
楽斗は額に脂汗を浮かばせながら、圭子が今降りてきているだろう階段の方面を凝視した。
やがてガシャガシャと音がしなくなったと思ったら、ヌッと曲がり角から圭子らしき影が姿を見せた。
「は?」
そして、楽斗の時間が止まった。圭子の格好を見て止まってしまった。
「はっはっは!どうした?プリティーガール。驚いたような顔をして」
まるで『仮面の内側からこもったような声』で圭子が笑う。
「......な、なぁ。一ついいか」
「うむ、勿論いいとも」
やっとの思いで絞り出すように言った言葉に、やはり内側からこもったような声で圭子が反応する。
(こいつ今の自分の姿に何の疑問も持っていないのか)
圭子の反応に楽斗が呆れたように、これだから問題児と呼ばれるんだと自分の事を棚にあげながらも、改めてその異常さを実感した。
『まさか』の予感が当たっていたと言うわけか。
楽斗は嘆息し、ゴクリと口内に溜まっていた唾を飲み込んだ。そして、大きな声で、
「何で甲冑を着てるんだよ!!!!!」
「はっはっは。
占拠と言ったら戦いだろう?戦いと言ったら甲冑。だから私は甲冑を着てきたに過ぎん」
「お前の考え方は何か根本的にずれてるんだよ!この問題児が!」
やれやれと言った感じで、どこから持ってきたのか鉄仮面を装着しながら説明する圭子に半分本気でキレる。
「ふむ、問題児は君もだろ?プリティーガール。君は中学時代その容姿でいくつもの男を悲しませた?
おや?どうしたんだ、そんなに顔を真っ赤にして。照れてるのか?」
「怒ってんだよ!!!大体、俺の場合は誤解する奴が悪いんだよ!俺はきちんと学生服を着ていたはずだ!なのにも関わらず性別を誤解してくるなんて失礼にもほどがありすぎるだろ!腑に落ちねぇよ!」
「......鏡で自分の顔を見てくるといい。そして、その容姿で女の子だと思わない人は居ないってことに気づけ。そして、ついでに自分の本当の性別についても気づいたらどうだ?」
「男だって言ってんだよ!」
激昂する楽斗に、どうどうと馬を落ち着かせるような仕草を取る圭子。
そして、楽斗の怒りが鎮火し始めた頃、圭子は何かを思い出したかのように面越しでも分かるぐらいハッキリと笑った。
「......さて、じゃあ占拠してくるとしようか」
「させるものか」
すぐさま、背後に放送室の扉を構え、中に入れさせないようにする。
しかし、圭子は甲冑を着ているとは思えないほどのスピードで急接近して、その腰に差している模造刀を抜いた。
「ッ!!?あっぶねぇぇ!」
「ほう。可愛い顔してやるじゃないか!」
迫り来る模造刀を紙一重で避けた楽斗に圭子が称賛の言葉と共に凄まじい剣筋を浴びせる。
「だてに何年も友達やってる訳じゃないってことさ!」
楽斗は、思いもしなかった称賛に、ぶっきらぼうに答えながらも、しっかりと迫り来る刀を避けつつ、更に器用にも鼻の下を擦りながらドヤるという高等テクニックを見せつけた。
思いっきり照れていた。
しかし楽斗にしてみれば、それは仕方がないことだった。あの圭子に誉められたのなんて、それこそ何年ぶりって話だったからだ。
「━━━だが詰めが甘いなプリティーガール」
「は?......って、ええええええ!?」
見れば、いつの間にか楽斗の元居た位置と圭子の元位置が入れ替わっていた。つまり、楽斗の後ろには階段があり、圭子の後ろには放送室があるという現状だ。
なんだと......と、目をひん剥いて驚く楽斗をよそに、
「はっはっは!じゃあ失礼するぞ」
鍵がかかっていなかったのか、圭子はやけにすんなりと開いた放送室に入り込むと、ガチャリと中から鍵を閉めるような音がした。
「あっ......」
慌てて放送室のドアノブを掴むも、もう遅い。ガチャガチャと虚しく音が響くばかりで扉ガール開く様子は一向にない。
「嘘だろぉぉぉぉ」
楽斗は多少だが、目から涙を流した後、糸が切れた操り人形のようにドサリとその場に倒れた。
「はぁ......はぁ......よかった、まだ圭子は来てないみたいだな......」
荒い息を整えながら、安堵の息を漏らす。
午後五時半を過ぎてるだけあって、校舎に残っている生徒はほとんど居ないせいか(ほとんど居ないと言っても多少は居るため放送は寛容出来ない)いやに静かで、楽斗の吐く息が廊下をこだまするほどだった。
この静寂が嵐の前の静けさにならなければいいが。
「......てか、結局大野に会っちゃうんだったら始めから連絡しなければよかった」
呼吸が整ってくると、次第に上手く回らなかった脳も回るようになっていき、後悔の念が渦を巻いた。
もっとも、今更後悔したところで後の祭りなのだが。
完全に呼吸を整えたところで、不意にガシャガシャとまるで甲冑を着て階段を降りているかのような音がした。でも、まさか本当に甲冑を着ているとは考えられないので、おそらく何らかの機械系の物だろう。
具体的じゃないかつ、曖昧な解答に自分で考えておきながら苦笑する。
だが、分かっていない事しかない訳ではない。これだけは確証を持って言えることが一つだけある。
それはこの足跡を鳴らしているのが他の誰でもない圭子だということだ。でもなければ、こんなイレギュラーな足音を誰が鳴らすってもんだ。
楽斗は額に脂汗を浮かばせながら、圭子が今降りてきているだろう階段の方面を凝視した。
やがてガシャガシャと音がしなくなったと思ったら、ヌッと曲がり角から圭子らしき影が姿を見せた。
「は?」
そして、楽斗の時間が止まった。圭子の格好を見て止まってしまった。
「はっはっは!どうした?プリティーガール。驚いたような顔をして」
まるで『仮面の内側からこもったような声』で圭子が笑う。
「......な、なぁ。一ついいか」
「うむ、勿論いいとも」
やっとの思いで絞り出すように言った言葉に、やはり内側からこもったような声で圭子が反応する。
(こいつ今の自分の姿に何の疑問も持っていないのか)
圭子の反応に楽斗が呆れたように、これだから問題児と呼ばれるんだと自分の事を棚にあげながらも、改めてその異常さを実感した。
『まさか』の予感が当たっていたと言うわけか。
楽斗は嘆息し、ゴクリと口内に溜まっていた唾を飲み込んだ。そして、大きな声で、
「何で甲冑を着てるんだよ!!!!!」
「はっはっは。
占拠と言ったら戦いだろう?戦いと言ったら甲冑。だから私は甲冑を着てきたに過ぎん」
「お前の考え方は何か根本的にずれてるんだよ!この問題児が!」
やれやれと言った感じで、どこから持ってきたのか鉄仮面を装着しながら説明する圭子に半分本気でキレる。
「ふむ、問題児は君もだろ?プリティーガール。君は中学時代その容姿でいくつもの男を悲しませた?
おや?どうしたんだ、そんなに顔を真っ赤にして。照れてるのか?」
「怒ってんだよ!!!大体、俺の場合は誤解する奴が悪いんだよ!俺はきちんと学生服を着ていたはずだ!なのにも関わらず性別を誤解してくるなんて失礼にもほどがありすぎるだろ!腑に落ちねぇよ!」
「......鏡で自分の顔を見てくるといい。そして、その容姿で女の子だと思わない人は居ないってことに気づけ。そして、ついでに自分の本当の性別についても気づいたらどうだ?」
「男だって言ってんだよ!」
激昂する楽斗に、どうどうと馬を落ち着かせるような仕草を取る圭子。
そして、楽斗の怒りが鎮火し始めた頃、圭子は何かを思い出したかのように面越しでも分かるぐらいハッキリと笑った。
「......さて、じゃあ占拠してくるとしようか」
「させるものか」
すぐさま、背後に放送室の扉を構え、中に入れさせないようにする。
しかし、圭子は甲冑を着ているとは思えないほどのスピードで急接近して、その腰に差している模造刀を抜いた。
「ッ!!?あっぶねぇぇ!」
「ほう。可愛い顔してやるじゃないか!」
迫り来る模造刀を紙一重で避けた楽斗に圭子が称賛の言葉と共に凄まじい剣筋を浴びせる。
「だてに何年も友達やってる訳じゃないってことさ!」
楽斗は、思いもしなかった称賛に、ぶっきらぼうに答えながらも、しっかりと迫り来る刀を避けつつ、更に器用にも鼻の下を擦りながらドヤるという高等テクニックを見せつけた。
思いっきり照れていた。
しかし楽斗にしてみれば、それは仕方がないことだった。あの圭子に誉められたのなんて、それこそ何年ぶりって話だったからだ。
「━━━だが詰めが甘いなプリティーガール」
「は?......って、ええええええ!?」
見れば、いつの間にか楽斗の元居た位置と圭子の元位置が入れ替わっていた。つまり、楽斗の後ろには階段があり、圭子の後ろには放送室があるという現状だ。
なんだと......と、目をひん剥いて驚く楽斗をよそに、
「はっはっは!じゃあ失礼するぞ」
鍵がかかっていなかったのか、圭子はやけにすんなりと開いた放送室に入り込むと、ガチャリと中から鍵を閉めるような音がした。
「あっ......」
慌てて放送室のドアノブを掴むも、もう遅い。ガチャガチャと虚しく音が響くばかりで扉ガール開く様子は一向にない。
「嘘だろぉぉぉぉ」
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