31 / 86
29
しおりを挟む
春の高校野球関東大会は秋と同じ要領で選ばれた15校と東京から2校の17校で争われる。
春の地区大会は秋のそれとは異なり言ってしまえばただの余興に過ぎないが、それでも当事者たちには大きな大会である。
関東大会2回戦、神奈川1位の桜稜学園は茨城2位の水戸英徳高校と対峙していた。
か
両チームともに背番号10、左投手同士での先発で幕を開けた。
「堀木打ちましたがこれはセカンドの守備範囲、これでスリーアウト、初回は両校ともにランナー出ず、先制して試合の流れを掴むのはどちらになるのか、注目です」
試合が動いたのは3回ウラ、水戸英徳の攻撃だった。
「万年打った!ライト前へ!あっと神崎!後逸!神崎エラー!ランナーは二塁!」
8番万年の当たりを神崎は後逸、9番の惟村は内野ゴロの間に三塁へ。
「1番 ピッチャー 天願くん」
天願という名前の投手を一条は覚えている。
第一打席にて抑えられた投手の名だからだ。そして第二に先制打を放った打者だからだ。
先制打と一口に言っても様々な種類がある。天願の打球は長宗我部が少し後退した地点に落下した。
捕球のその瞬間、三塁ランナー万年はタッチアップを敢行した。そこまで延びてはいない打球なので賭けと言っても可笑しくはなかったが、生憎長宗我部の肩はそこまで強くはない。少なくとも、犠牲フライが成立する程度には強くはない。
2番の麦倉は抑えて序盤3イニングは終了。
さて、結論から言ってしまおう。
そのまま試合に動きはなく、淡々と中盤の3イニングは過ぎ去った。1点が遠く、そして重い。一言で済ませるとしたらばそんな感じだった。
しかし、その沈黙はあっさりと消えていく。
この回先頭の中之島が引っ張って打ち、その打球はライト最奥部へ。
ライトがあまり高い守備能力を有してはいなかったことが幸いした形となり、中之島は三塁へ到達。
そして5番の鶴岡、彼は結局のところファーストへファウルフライを打ち上げたのだが、天願の疲れを見抜いていて8球に渡り粘っていたことは評価できる、そう一条は感じていた。そしてそれは事実となるのだ。
財前智宏。
彼は確かに打率や本塁打で考えれば中軸を任されるような面々と比べると見劣りするが、6番7番を任される打者として塁上にいる彼らを返し続けてこの1年、チームの打点王として明らかな戦力であった。
そんな財前の放った打球は二遊間を裂き、センター前に転がる。ひとつの進塁には十分な打球だった。
その後江島が二塁打を放ち二三塁の場面で田村。
どうにも疲れ始めているというのは察しがついた。
確かに今までの2打席よりも軽い感触だったが、打ち損じた。しかし、お見合い状態のまま打球は落ち、勝ち越しに成功する。
続く長宗我部を打ち取り、天願はマウンドを後にする。
田村も疲れが来ていたのか、それとも気が緩んでいたのか、坂林と森本に連打を浴びたが、バックに助けれて6番久禮を併殺にし、栂野も抑えることに成功した。
水戸英徳は守備の交代に出る。天願を三塁に回し、三塁の惟村をベンチに下げ、背番号1の友納がマウンド。
一条は三振に終わったが、橋本は安打を放ち、中之島。
通説では右対左では左のほうが有利らしいというのは余りに俗説じみているが事実なのだろう。
今日絶好調の中之島は4つ目の安打をライトスタンドへ叩き込んだ。
結局そのままふたり続けてアウトになり、8回のマウンドには島岡が登板する。8回3点差の状況で登板とかプロならそこそこ高い評価を受けてないと出来ないよねと意気揚々とマウンドに向かい、横の変化を使いこなし、見事に制圧した。
9回。代打の吉田がシングルを放ち、島岡も続いたが、長宗我部の併殺で水の泡になる。
魅惑のアンダースロー、若宮が2番からの上位打線をゼロに抑えて試合終了。4-1で桜稜学園の白星。
春の地区大会は秋のそれとは異なり言ってしまえばただの余興に過ぎないが、それでも当事者たちには大きな大会である。
関東大会2回戦、神奈川1位の桜稜学園は茨城2位の水戸英徳高校と対峙していた。
か
両チームともに背番号10、左投手同士での先発で幕を開けた。
「堀木打ちましたがこれはセカンドの守備範囲、これでスリーアウト、初回は両校ともにランナー出ず、先制して試合の流れを掴むのはどちらになるのか、注目です」
試合が動いたのは3回ウラ、水戸英徳の攻撃だった。
「万年打った!ライト前へ!あっと神崎!後逸!神崎エラー!ランナーは二塁!」
8番万年の当たりを神崎は後逸、9番の惟村は内野ゴロの間に三塁へ。
「1番 ピッチャー 天願くん」
天願という名前の投手を一条は覚えている。
第一打席にて抑えられた投手の名だからだ。そして第二に先制打を放った打者だからだ。
先制打と一口に言っても様々な種類がある。天願の打球は長宗我部が少し後退した地点に落下した。
捕球のその瞬間、三塁ランナー万年はタッチアップを敢行した。そこまで延びてはいない打球なので賭けと言っても可笑しくはなかったが、生憎長宗我部の肩はそこまで強くはない。少なくとも、犠牲フライが成立する程度には強くはない。
2番の麦倉は抑えて序盤3イニングは終了。
さて、結論から言ってしまおう。
そのまま試合に動きはなく、淡々と中盤の3イニングは過ぎ去った。1点が遠く、そして重い。一言で済ませるとしたらばそんな感じだった。
しかし、その沈黙はあっさりと消えていく。
この回先頭の中之島が引っ張って打ち、その打球はライト最奥部へ。
ライトがあまり高い守備能力を有してはいなかったことが幸いした形となり、中之島は三塁へ到達。
そして5番の鶴岡、彼は結局のところファーストへファウルフライを打ち上げたのだが、天願の疲れを見抜いていて8球に渡り粘っていたことは評価できる、そう一条は感じていた。そしてそれは事実となるのだ。
財前智宏。
彼は確かに打率や本塁打で考えれば中軸を任されるような面々と比べると見劣りするが、6番7番を任される打者として塁上にいる彼らを返し続けてこの1年、チームの打点王として明らかな戦力であった。
そんな財前の放った打球は二遊間を裂き、センター前に転がる。ひとつの進塁には十分な打球だった。
その後江島が二塁打を放ち二三塁の場面で田村。
どうにも疲れ始めているというのは察しがついた。
確かに今までの2打席よりも軽い感触だったが、打ち損じた。しかし、お見合い状態のまま打球は落ち、勝ち越しに成功する。
続く長宗我部を打ち取り、天願はマウンドを後にする。
田村も疲れが来ていたのか、それとも気が緩んでいたのか、坂林と森本に連打を浴びたが、バックに助けれて6番久禮を併殺にし、栂野も抑えることに成功した。
水戸英徳は守備の交代に出る。天願を三塁に回し、三塁の惟村をベンチに下げ、背番号1の友納がマウンド。
一条は三振に終わったが、橋本は安打を放ち、中之島。
通説では右対左では左のほうが有利らしいというのは余りに俗説じみているが事実なのだろう。
今日絶好調の中之島は4つ目の安打をライトスタンドへ叩き込んだ。
結局そのままふたり続けてアウトになり、8回のマウンドには島岡が登板する。8回3点差の状況で登板とかプロならそこそこ高い評価を受けてないと出来ないよねと意気揚々とマウンドに向かい、横の変化を使いこなし、見事に制圧した。
9回。代打の吉田がシングルを放ち、島岡も続いたが、長宗我部の併殺で水の泡になる。
魅惑のアンダースロー、若宮が2番からの上位打線をゼロに抑えて試合終了。4-1で桜稜学園の白星。
0
あなたにおすすめの小説
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妹の仇 兄の復讐
MisakiNonagase
青春
神奈川県の海に近い住宅街。夏の終わりが、夕焼けに溶けていく季節だった。
僕、孝之は高校三年生、十七歳。妹の茜は十五歳、高校一年生。父と母との四人暮らし。ごく普通の家庭で、僕と茜は、ブラコンやシスコンと騒がれるほどではないが、それなりに仲の良い兄妹だった。茜は少し内気で、真面目な顔をしているが、家族の前ではよく笑う。特に、幼馴染で僕の交際相手でもある佑香が来ると、姉のように慕って明るくなる。
その平穏が、ほんの些細な噂によって、静かに、しかし深く切り裂かれようとは、その時はまだ知らなかった。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる