アルカディアンズ ~とある世界の転移戦記譚~

タピオカパン

文字の大きさ
44 / 47
猫の国の動乱

和平プロセス3

しおりを挟む

<ミャウシア海軍と連合軍の休戦協議の場>

ミャウシア軍代表となったフニャンがポンポタニア代表との話し合いを終えると今度はグレースランド代表のエリザ王女との談話に移った。
ここで王女は今までの超がつくほどの温和な態度が一変してポンポタニア代表ほどではないがそれなりに厳しい態度でフニャンに臨んだ。
なぜなら彼女はグレースランドの代表としてミャウシア軍代表のフニャンに対談しているのであり、あくまでも国の意向を代弁しなければならない。
グレースランドはミャウシア地上軍の侵攻によって既に本国深くまで攻め込まれている現状があるだけに当然ながらその負の感情は非常に大きいものと言わざるを得ないのだ。

フニャンと王女の対談ではそんな感じの重苦しい雰囲気の中で休戦の条件が話し合われ、これも大筋で合意に至たった。
そして王女がフニャンにあることを聞く。

「フニャン中佐に聞きしたいことがあります。それはミャウシアの今後です。ミャウシア海軍による政権の奪還がかなったとして、その新政府の要職に誰が、どのような人物が着くのかという展望は有るのでしょうか?」

唐突に全く未定の先の質問を振られたことにフニャンは驚き表情が少しだけ崩れた。

「現時点では誰がどのポストに着くのかに関しては一切が未定です。その時にならなければわからないとしか言えません」

フニャンは王女が何を考えてそう言ったのかわからないので仕方なく正直に答えるしかなかった。
だが王女はそれに続くように発言する。

「そうでしょう。そこで我が国は休戦条件とは別に和平条件を今ここで通告したいと思います。その条件として我が国はフニャン・ニャ・チェイナリン中佐、貴方がミャウシアのトップに立つ、もしくは主導陣の一人としてミャウシア新政府に深く携わると表明するのであれば、和平並びにミャウシア新政府と同盟を結びミャウシアクーデター政権との戦いに参加することをここで提示させていただきます!」

議場がどよめいた。
休戦協定の話から一気に同盟関係の話に議題が飛躍する。
さすがのフニャンもこれには面食らってしまう。

「そ、それは...」

フニャンは王女を見る。
その表情は自身に満ち溢れていた。
フニャンは王女がしたいことを頭では分かっていたがその反応に思考が回らなかった。
王女は非常に短い間であったがフニャンの人なりを見てきた。
そこには聖人君子にも似た揺るぎない普遍的な正義感があった。
そんな感性で人の上に立つ人は大変少なく、貴重だと言っても良い。
もしフニャンがミャウシアの新政府に携われば、少なくとも他国に戦争をふっかけるなどという蛮行はありえないだろう。
そして今後の戦いにおいてグレースランド軍やザイクス軍からの協力はミャウシア海軍にとって喉から手が出そうなほど魅力的、というより不可欠なものだった。
その両者の欲しがっているものを王女はフニャンに共有しようと提案したのだ。

「できればここで決めていただきたい。我々はあなたがミャウシアの政府の要職に着くことを希望します」

「....」

フニャンは固まったまま考えを巡らす。
その中でニャマルカム大将に言われたことを思い出す。
フニャンは自分のような人間でも、自分だからこそ必要とされているのだと改めて自覚するのだった。
そして自分がミャウシアの顔として職務を全うすることが大勢のためになるというのであればそれは率先してやるべきことなのだと決心がつく。

「...ありがとうございます」

フニャンは小さい声でそう言うと続くように王女に言う。

「では、私、フニャン・ニャ・チェイナリンは正当なミャウシア軍の代表として立候補することをここで表明させていただきます。現ミャウシア海軍の最高位であるニャマルカム大将から既にそれに関する打診を受けており、軍および新政府の意思決定に深く携わることを固くお約束することができます」

王女はフニャンのいい表情を見て満足した様子で言葉を返した。

「その言葉が聞けて良かったです。この内容は本国に伝え、速やかに返事をしたいと考えています。我々の要求や申し出は以上です」

こうしてグレースランド側との話し合いは終わった。
この話し合いによって休戦協議は一気に同盟への話し合いに昇華したのだった。
この流れからザイクスもグレースランドに同調する。
NATO側に関しては言わずもがなである。

こうして会談は終わりこの会議で話し合われたことが本国に伝えられ、政府の了承が降り次第、翌日に合意の調印を行うことが決まった。
そのため一旦、使節団はザイクス軍の空母を後にするために下船のためのボートが止まっている甲板にそれぞれ別に歩き出す。

だがここでポンポタニア代表の太子がフニャンの一向に近づいてくる。

「どうもフニャン代表」

「どうも」

「今回の協議、色々驚かされましたよ。おかげでこちらもアドリブを効かせなけれればならなくて大変でした」

「...」

「ところで代表に一ついいですか?」

「...どうぞ」

「そうですね。あなたはポンポタニア王国の良き友人となれますかな?」

この質問にその場の一同がぽかんと置いてけぼりになる。
フニャンもすぐに答えないのでしばらく静寂が続く。
そしてフニャンが口を開く。

「わかりません。でも私はポンポタニアの民と共にありたいと思っています。今はそれしか言えない」

「...」

対しはその返答を聞いてフニャンをじっと見ると口を開いた。

「ありがとうございます。下船の際はお気をつけて」

フニャンは小さく一礼するとボートに下りた。
それを太子は見送りながら独り言を呟いた。

「信義に値するのどうの以前にそもそも政治屋ですらないか...。面白くなってきそうだ」

翌日、休戦の調印が行われた。
連合軍は堅い結束があるわけではないので個々に条件を設定したにもかかわらず、そのまとまりは大変早かった。
これにより形上は連合軍とミャウシア海軍の戦いは終結するが完全にはもうひと悶着経なければならなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
コミカライズ企画進行中です!! 2巻2月9日電子版解禁です!! 紙は9日に配送開始、12日発売! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&2巻出版!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、コミカライズ決定いたしました!現在企画進行中!!そしてオリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 12日には、楽天koboにおいてファンタジー5位となりました!皆様のおかげです! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 オリコンランキングライトノベル 週間BOOKランキング 18位(2025年9月29日付)

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

最弱スライムに転生した俺、捕食スキルで無限進化していたら魔王軍すら支配してました

チー牛Y
ファンタジー
残業中に倒れた俺が次に目を覚ました時、なぜか異世界で最弱モンスターのスライムになっていた。 完全に詰んだ、戦う力もない。そう思っていた時、俺には一つだけ、とんでもないスキルがあった。 【捕食】 それは、倒した相手を取り込み、能力・スキル・力のすべてを奪うチート能力だった。 ゴブリンを食べれば腕力を獲得。 魔物を食べれば新スキルを習得。 レベルは爆速で上がり、進化は止まらない。 森の魔物を支配し、ダンジョンを制圧し、気づけば俺は魔物たちの王になっていた。 やがてその力は魔王軍すら飲み込み、世界の勢力図を塗り替えていく。 これは―― 最弱スライムから始まる、無限進化の成り上がり無双譚。

【本編完結】異世界再建に召喚されたはずなのになぜか溺愛ルートに入りそうです⁉︎【コミカライズ化決定】

sutera
恋愛
仕事に疲れたボロボロアラサーOLの悠里。 遠くへ行きたい…ふと、現実逃避を口にしてみたら 自分の世界を建て直す人間を探していたという女神に スカウトされて異世界召喚に応じる。 その結果、なぜか10歳の少女姿にされた上に 第二王子や護衛騎士、魔導士団長など周囲の人達に かまい倒されながら癒し子任務をする話。 時々ほんのり色っぽい要素が入るのを目指してます。 初投稿、ゆるふわファンタジー設定で気のむくまま更新。 2023年8月、本編完結しました!以降はゆるゆると番外編を更新していきますのでよろしくお願いします。

処理中です...