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猫の国の動乱
機雷
しおりを挟む<<リビュ級原子力潜水艦テュクワーズ>>
フランス海軍の主力攻撃型原子力潜水艦で実用戦闘原潜では世界最小の潜水艦であり、原子力潜水艦にもかかわらずその水中排水量はわずか2600トンしかなかった。
動力が無尽蔵である原子力潜水艦では居住性や機能性、攻撃力が重視され、小型化などに重点が置かれることはあまりない。
なのでその方面でリビュ級は不都合の多い艦ではあった。
しかし曲がりなりにも原子力潜水艦なので常動力潜水艦とは比べるまでもない原子力の利点はちゃんと持っていた。
そんな小型潜水艦は海峡付近を航行する未確認の潜水艦群を追尾していた。
「数20あまり、深度20m、速力6ノットで西南西へ向けて移動中」
「音紋解析の結果、ポンポタニア軍のP型潜水艦の一群だと思われます」
「海峡の出入り口周辺に向かってるということか。潜水艦戦術を考えれば...」
「待ち伏せでほぼ間違いないでしょう」
「艦隊はもうじき海峡だ。まさかここで攻撃する気じゃないよな」
「艦長、ロサンゼルス級と思われる音源を探知しました。モントピリアです。潜水艦群の真下深度120m程度を高速ですり抜けていきます」
「大胆なやつだな。バレるはずないと高を括りすぎだ」
「しかし彼らのソナーではわかるはずありません」
「それはそうだが海峡の向こうは水深が大雑把にしかわからない。危険を承知でなんであんなに先行しまくっているんだ、アレは?」
「何かに気付いたからでは?もしこれがポンポタニア軍の攻撃の陣形だとした場合、海峡の向こう側は...」
「海峡側は少数の艦隊しかいない。それでも大艦隊を足止めするのであれば......まさか!?」
「!?」
<<ロサンゼルス級原子力潜水艦モントピリア>>
「ポンポタニア海軍潜水戦隊の直下を通過、間もなく最浅部です」
「既にここらへんは詳しい海図が一切ない海域です。こんな深度では海底に激突の可能性が...」
「いや、この深度のまま航行を続ける」
艦長は何かを感じ取っていたのか危険を犯しても海峡通過を断行する。
そしてモントピリアが海峡の最浅部をぬけて出口に差し掛かった。
ガコオォォン!
船体に何かがぶつかった。
「今のは...」
「...ソナー室、アクティブソナーを打て」
「了解」
ピコーン!
ソナー手の顔が驚愕の表情に変わる。
「浅深度に無数の物体を聴知!き、機雷原です!」
「やはりそうか」
連合軍の間で通達されていた機雷原の配置とは全く異なる機雷が埋設されていた。
しかも凄まじい数だった。
そのどれもが係維機雷であり、モントピリアにぶつかったのはそのワイヤーだった。
「艦長、これがMk50機雷だったら沈んでましたよ!」
「彼らは潜水艦用の磁気機雷を持ってないと聞く。そんなことより海峡出入り口全域が機雷源になっていることだ。明らかにこれは罠だ。こんなのに飛び込んだらいくら空前絶後の大艦隊と言えども全滅が十分ありえる陣容だ。このまま機雷源をやり過ごして潜望鏡深度へ浮上後に司令部へ報告する」
「了解」
モントピリアはこのまま機雷源の下をくぐり抜けていく。
この時、モントピリア周辺の海底は水深600フィートで海底に全長5m以上の長い筒が海底から短く伸びるワイヤーで短係止され浮遊していた。
その筒に搭載されたシーカーは潜水艦の音源を聞き取っていた。
そしてモントピリアが一番その筒に近づいている時だった。
筒の蓋が外れて中から魚雷が飛び出してきた。
「艦長!魚雷の航走音を聴知しました!左舷の海底付近からです。距離1000ヤード、40ノットで本艦に接近してきます!」
「最大戦速!方位045変針しろ。MOSS発射!」
これがポンポタニアの魚雷だとは誰も考えていない。
ありうる可能性は2つしかない。
ロシア軍の魚雷、もしくは中国軍の魚雷、そのどちらかしかあり得ないのだから。
「デコイ発射!」
魚雷発射管からMOSS Mk70 デコイが発射された。
デコイは速力がないので潜水艦から置いてけぼりっぽく別方向へ航走を始めた。
すると魚雷はデコイに釣られ始めた。
そしてデコイ目掛けて突っ込んでいくと目標が小さすぎて外れてしまう。
目標を見失った魚雷は捜索モードに移行しわずかに旋回を始めるが、その捜索方向の射線上にモントピリアがのってしまった。
魚雷のシーカーは運悪くまたモントピリアを標的として選んでしまう。
「魚雷、再度本艦を補足しました!」
「今の本艦の速力は?」
「25ノットです」
「急速転舵!」
モントピリアは舵を切って急速に進路を変え始める。
するとモントピリアの船体周辺の水流が急激変化してナックルと呼ばれる現象が発生した。
このナックルは潜水艦後方の撹乱水流のことで潜水艦の音を散乱させ、どれが真の音源なのかを判別困難にする効果を持つ。
艦長の狙い通り、魚雷は潜水艦を見失って旋回捜索を始めた。
だが魚雷との距離がまだ近いので再探知されるのは時間の問題だ。
しかし幸いなことに先ほど発射した囮の魚雷はまだ近傍を航行している。
魚雷は置き土産のデコイを再探知しそちらへの航走再開する。
「魚雷、デコイに食いつきました。本艦との距離1200ヤード」
「速力5ノットに減速、無音航行に入る」
モントピリアは減速し、騒音が大きく減じて音のステルス状態ともいうべき無音航行を始めた。
数分後、魚雷は燃料がなくなり自爆した。
その爆発の衝撃で周囲にあった感応機雷が2つ爆発し海面に巨大な水しぶきがたった。
「逃げ切った...」
「危ないところでした。アレ、恐らくキャプター機雷ですよ。あんなのを持っている国と言ったら...」
「ロシア海軍か中国海軍か我が軍しかない。あとは日本海軍(海上自衛隊)の追尾上昇機雷だけだな」
「どうしますか、艦長?最悪、他の潜水艦用機雷もあると見るべきですので、ここは海上、海中共に完全な機雷原と化してます。無音航行で切り抜けられたとしても司令部に報告する頃には艦隊が...」
「もう一度アクティブソナーを打て。真上に感応できる機雷がなければこのまま潜望鏡深度まで浮上だ。無茶は承知しているが、今はこれしか手はないだろう」
「...了解」
モントピリアはアクティブソナーで至近な機雷がないことを確認して浮上を開始した。
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