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とある双子のお話
しおりを挟むマスティア歴2015年に私は生まれた。
私は一人っ子で、貧しくもなく、裕福でもないが、暖かい家庭で育てられた。
15歳の誕生日。
私には、双子の妹がいたことを知った。
この国、ランデ王国には、古い掟のようなものがあった。
双子罪。
双子が生まれると、後に生まれた方を、国に渡さなければならない。
そして追加で賠償金を払わなくてはならない。らしい。
そして先に生まれた方には、15歳の誕生日がくるまで、伝えてはならない。らしい。
この掟は、正直あやふやな部分が多い。らしい。
なので、たくさんらしいがつくのだが、実際に娘を取り上げられてるのだから、らしいではなく事実なのだが。
しかしその事を知った私、アンデは、妹を一目見たくてたまらなくなった。
母には「危険だから、やめておきなさい。国に、掟に逆らってはなりません。」と、いつになく真面目な顔で言われた。
しかし誕生日から一月後、父が少しのお金と、冒険の書を渡してくれた。
父は「お前のやりたいことをやりなさい。妹に会わせてやれなくてごめんな。妹は、北のマカド地方にいるはずだ。そして治癒術師をやってる。」
と言った。
私が「なぜ知ってるのか?」
と聞くと、
「実は、俺の仕事はダングリを拾って売る仕事じゃなくて、とある傭兵団に所属してるんだ。何年か前、とある城を攻め入った時、お前にそっくりな女の子がいたのを見た。いや、あれは妹に間違いない。」
と答えた。
私は妹が治癒術師として頑張っているのを聞いて、それは確信に変わった。
親に内緒ではあったが、治癒術を使えたのだ。ただし、免許のようなものが必要で、国に認められないと、魔法の行使は禁止なのだ。
すぐに旅立とうと思って、全ての支度をし、家を出た。
お父さん、うちの家計は、ダングリ拾いで賄ってたなんて思い込んでたのは、5歳までだよ。
次の日の朝、とある宿屋で目が覚めた。
そうだ、私は妹を探しに、北に向かってるのだ。
しかしお金が無い。父から貰ったお金を、そう無駄にすることはできないし、帰ってきたら返すつもりなのだ。
あれは多分父のへそくりだ。
趣味でやる鍛治のハンマーを新しく買うために、コツコツと貯めてきたお金なのを知っている。
そのお金を使ってでも、旅立たせてくれたのだ。めっちゃ優しい。ありがとう。
北に向かいながらできる仕事で、その辺の人でもなれる、初期投資にお金がかからないっていうのは、冒険者くらいしかない。
街の真ん中に、小川の流れるこの街、ウイの真ん中に、あるギルド、ウイギルドで冒険者登録をする。
ギルド嬢に声をかけた。
「冒険者登録をしたいのですが」
「はい。かしこまりました。女性で冒険者だと色々大変でしょうが、応援してます。冒険者登録は初めてですか?」
冒険者登録をして、2度目の人とかいるのだろうか?
「初めてじゃない人もいるんですか?」
「そうですね、だいたい12歳くらいで登録して、Fランクからスタートして、ダングリ拾いクエストに嫌になって、この街の薬草採取クエストに移行する人が多いですね。かなり。」
かなり。マジか。ダングリ拾いってそんなに過酷なのだろうか。あんなのちょっととる時にトゲトゲしてるからって、手袋してればそんなに痛くない。そんなに。
そんな会話をしつつ、ギルド嬢はテキパキと、書類を私に渡して、それを書いて、提出した。
「とにもかくにも、これで登録は完了です。こちらの証明するカード、俗にプレイヤーカードと呼んでますが、こちらと共に、後ろの掲示板、クエストボードから、依頼を持ってきて、見せてください。そのクエストを受理しましたら、Fランクであれば、そこから3日間でクリアしてください。」
「FランクがEランクのクエストを受けることはできますか?」
という質問をしてみたら、横から男性が声をかけてきた。
「お姉さん、綺麗ですね。僕が代わりにお答えしましょう。実はココだけの話、できちゃうんです。」
「誰だコイツ」
「お姉さん、口に出てますよ。」
おっと口が滑った。
やれやれと言った顔でこちらを見てくる男性。
「まったく、可愛らしいお姉さんだ。僕はビニー。なんとこの若さでEランク!スゴいでしょ!お姉さん、唐突で悪いんだけど、僕とパーティー組まない?」
とのこと。いや年齢そんなに変わんないじゃん。しかも弱そう。さらにEランクって一つ上なだけじゃん。自慢されても。
「お断りします」
「なんで!?」
「私、ここに留まる予定がないので。というか弱そうなので。さよなら」
と告げて、クエストボードを見た。
僕ちゃんは手を前に出したまま、口をあんぐりさせていた。
手頃な北に向かいそうなクエストか、簡単で危険が少ない、金稼ぎ効率のいいクエストを受けたい。
最悪、私も治癒術師の免許をとって、働きながら北を目指すしかない。その場合は、免許の強制力で、南に向かってしまう場合があるので、あまりなりたくない。
治癒術師はそもそもそんなに数が多くない。だからここでは隠したい。バレると国がめんどくさい。なんて口にしたら死刑かもしれないね。
適当にダングリ採取クエストの依頼を持って、受付にて受理してもらった。幼少の頃からやっていたのだ。得意なハズである。
最低限の武器(ショートソード)と防具(胸当て、マント)を買い、初めてのクエストに出発した。
応援ありがとうございます!
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