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いつもの。
掴めない
しおりを挟むあいつは校内では学園ドラマ並にモテモテで常に人に囲まれているのに休日や放課後に誰かとつるんでいる事が極端に少なかった。
「お前、家で何してんの?」
「掃除。」
「毎日?」
「そうだよ?」
「いや、そんなわけなくね?」
「お父さんもお母さんも週に2日くらいいるかいないかだし、ペットの世話とか掃除とか、家事全般。3階建ての家掃除するのにどれだけ時間かかると思う?毎日2時間だよ?」
それからご飯作って散歩したらあっという間に夜だよ
そんな贅沢な愚痴を言っていた。
「家政婦雇えば?」
「どうして?」
「しんどいんじゃねぇーの?」
「大変だけど出来ないわけじゃないよ。それに部活もやってないし。掃除自体嫌いじゃないよ。」
サラッとお金持ち発言。
雇えない訳じゃないということ。
雇うお金はあるが雇うほどでは無いということ。
「1人で掃除やってて寂しくねーの?」
「別に?」
今はお兄ちゃんも2日に1回は帰ってくるしねーと、少し嬉しそうな顔をした。
余裕。
俺が思うにこいつが必要以上に他人を魅了出来ているのはこの溢れ出る余裕だ。
何にも支配されず、誰からも縛られず、自由でいて規則的。
この人なら大丈夫、何となくそう思わせるこの余裕が人の目を惹く。
「むぎもね手伝ってくれるの、掃除。」
そう言って見せられた動画には大きなゴールデンレトリバーがゴミ袋を運んだりクッションを洗濯室に持っていく様子。
どこの金持ちの動画だよ。
そんなツッコミを入れたい気持ちを抑えながら平和だなと答えた。
こいつは勉強する時間というものがないらしい。完全記憶能力というものを持っているらしくテキストを1度見れば全て記憶出来るらしい。
それでいて地頭もいいのだろう応用力もある。
だから常にテストで満点を取り続けている。
テスト前になる度山を張って死に物狂いで勉強して赤点ギリギリの俺とは雲泥の差だ。
何でも持ち合わせていて完璧でいるのに、誰にも心を開かない。
どこまでも贅沢な奴だと思った。
いや、だからだろうか?
俺らにはない感覚があって、それが故に心を開くことが出来ないのだろうか
誰かを頼るより自分でやった方がはるかに出来はいいだろう。
誰かに甘えるより甘えられることが多いだろう。
助けられるより助けるだろう。
そういうの、疲れるのかな
自慢なんかじゃなくて、事実としてあいつは出来すぎている。出来すぎていて周りがどうしたって劣って見える。
心を開くとか開かないとかじゃなくて、多分そんな範囲に入ってこないのだろう。
なんか、
それも
辛いな
俺は勝手にそう解釈した。
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