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(やっぱり、アランとちゃんと話そう。)


 自宅に帰り、エミリーは決心した。こんな風に騙し騙し、引っ越しに持ち込むのはやはり良くない、そう思えた。



(アランに単身赴任をしたい理由を聞いてみよう。)


 出来れば単身赴任をしない方向に持っていきたいけれど。自分が直せる部分は直して、アランと一緒にいられる方法を探したいけれど。まずはアランの思いを受け止めよう。


 アランが帰るまではまだ何時間もある。エミリーは、手早く家事を済ませた後、休憩しておこうとベッドに横になった。





◇◇◇



 エミリーがうとうとしていると、部屋に人の気配を感じ、意識が浮上した。


「エミリー、大丈夫か。」


 ベッドの端に座り、エミリーを心配そうに覗き込むアランが視界に入った。




「あ、れ・・・アラン?」


 まだまだ日が高い。アランが帰る時間よりずっと早いのに家にいることを不思議に思った。



「たまたま、エミリーのところの所長に会って、エミリーが体調を崩していると聞いたんだ。」


 大丈夫か、と繰り返しながら、丁寧に頭を撫でられる。エミリーはまだ少し微睡みながら、身体を起こし、アランの体温を感じていた。



「・・・大丈夫よ。少し疲れただけ。」


 アランは、眉間に皺を寄せると、迷ったように口を開いた。





「・・・なぁ、エミリー。やっぱり・・・。」



 微睡んでいたエミリーは一気に覚醒した。エミリーが体調を崩したのは、荷造りや引き継ぎで忙しくしているからだとアランは思っただろう。そして、こんな無理をさせる位なら・・・きっとこの後続く言葉は、”俺が単身赴任する”、だ。




「い、いや!」




「エミリー?」




「単身赴任なんていや!絶対いや!」



 エミリーの叫びに、アランは目を丸くしている。せっかくさっきまでは、アランとちゃんと話をしよう、と思っていたのに。落ち着いて話そうと思っていたのに。エミリーは、涙をぼたぼた流し、もう気持ちを止められなかった。






「どうして、単身赴任なんて言うの?私のこと、いやになったの?アランは私と離れても平気なの?」


 こんな責めるような言い方をしたら、アランが余計に嫌になると、分かっているのに。エミリーの口は止まらない。





「エミリー。ちょっと待ってくれ。」


 困惑したアランに、子どものようにイヤイヤと首を大きく振り、エミリーはアランの話を聞こうとしない。いや聞くのが怖かったのだ。





「おいていかないでよ・・・。」




 体を縮こまらせ、肩を震わせ、涙を流し続けるエミリーを、アランは抱き寄せた。

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