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シャーロットside
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しおりを挟む舞踏会当日。
「シャーロット嬢、とても似合っている。」
ハリー様が公爵家に迎えに来てくれ、贈られたドレスを身に纏った私をぎこちない笑顔で誉めてくれる。
「ありがとうございます。素敵なドレス、とても嬉しかったです。ハリー様の正装も素敵ですわ。」
今回の舞踏会は王家主催の為、ハリー様も王宮騎士団の正装を身に付けている。なかなかお目にかかれないこのお姿は、とても精悍でハリー様の体格の良さが際立っている。見惚れないように、心を奮い立たせる。
「ハワード公爵、本日はシャーロット嬢をエスコートする許可を頂いたこと、感謝致します。シャーロット嬢をお守りし、早い時間にお送りすることを約束します。」
ハリー様はお父様に深々と頭を下げた。しかしお父様は眉間に皺を寄せ、苛立ちを隠さずにハリー様へ言葉を投げ付けた。
「万が一、何かあって見ろ。公爵家の全勢力を持って、亡き者にしてやるからな。」
「お父様!そんな物騒なこと冗談でも仰らないでくださいませ!」
「シャーロット!冗談などではない。私は本気だ。こんな可愛いシャーロットをエスコートさせてもらってもし何かあれば、本来なら万死に値することだ。」
お父様の家族愛にも困ったものだ。ハリー様は真面目に「有り難き幸せです。」と答えているが居たたまれない。珍しくお父様が見送りに来たと思ったら、こんな釘を指すためだったとは。大体、行き遅れの娘なんだから、多少何かあった方が良いのではないだろうか。
「お父様、こんな行き遅れの私をエスコートして下さるハリー様にお父様は感謝すべきですわ。ハリー様、行きましょう。」
「あ、ああ」
戸惑うハリー様と共に、まだ喚いているお父様を置いて馬車へと向かう。馬車の中で、ハリー様は私の斜め前に座られた。・・・普通、婚約者であれば隣同士に座るか、向かいに座って、距離を縮めるものではないかしら。思わず、寂しさが表情に出てしまったのをハリー様は見逃さなかった。
「・・・シャーロット嬢、気が進まないか?」
「あ・・・いえ、緊張しているみたいです。久しぶりなものですから。」
王子妃候補をクビになってから初めて王宮へ行く。本来なら王家主催の行事に公爵家の者として参加する義務があるのだが、口性無い貴族も多いこともあり私は三年間参加していなかった。お父様とお母様が上手に立ち回ってくださっているお陰で私の立場は悪くなってはいないようだが、久しぶりの場に緊張しているというのは嘘ではない。ハリー様は神妙な顔をして口を開いた。
「うむ・・・今日は私がシャーロット嬢の盾となる。だから安心してほしい。そしてシャーロット嬢が帰りたいときにすぐに帰ろう。」
「ふふふ、もし私が王城に着いて早々に帰りたいと駄々を捏ねたらどうするおつもりです?」
「そしたらすぐ帰ろう。」
「国王陛下へご挨拶もせず?」
「ああ、挨拶しなかったと機嫌を損ねる方ではない。」
確かに、陛下はいつも私たち王子妃候補にも気安く声を掛けてくださる、優しくお茶目な方だった。
「ハリー様、ありがとうございます。お陰で、ハリー様に贈られたこの素敵なドレスを国王陛下へ見て頂きたい気持ちが沸いてきましたわ。」
私がわざとすました口調で伝えると、ハリー様は目を細めて頷いた。
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