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それからのこと。
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しおりを挟むハワード公爵が口を開くまで、かなりの時間を要した。シャーロットとハロルドが無言に耐えかね、ソフィア談義に花を咲かせる程だった。シャーロットは自分がソフィアのことをよく理解しているという自負があったが、それ以上にハロルドのソフィア愛は重く、ハロルドのソフィア談義に驚かされてばかりだった。
「•••すまなかった。」
ソフィア談義が落ち着いた頃、ハワード公爵は漸く口を開いた。
「お父様。私こそ申し訳ありませんでした。今日、お父様とハロルドに話を聞くまで、私はお父様をそこまで心配させていたことに思い至らなかったのです。」
シャーロットは、婚約前まではただ自分が女公爵になればいいと考えていた。必要があれば嫁ぐ覚悟はあるが、嫁がなくても問題ないと。父がずっと心配して見守っていてくれたことに気付かなかった。
「ハロルドがお父様の思いを説明してくれて良かったです。お父様の思いを知れて嬉しかったです。」
「シャーロット•••!」
ふわりと笑うシャーロットを見て、公爵は感極まった。それを見てハロルドが口を挟んだ。公爵のだんまりの時間が再開して、ソフィア談義をしたい思いはあるが、これ以上執務が遅れるのは不味い。
「では、旦那様。お嬢様にお尋ねになってはいかがですか。」
「何を?」
「ハリー様に付けた条件の一つにあった、婚約はお嬢様の意向に沿うというものですよ。お嬢様が気が進まないなら、婚約破棄しても良いと。お嬢様へ婚約の意向を尋ねないのですか。」
「ああ。それならもう分かっているよ。」
シャーロットに向けられた優しい笑顔は、父の愛がたっぷり詰まっていた。
「最初に婚約の話をした時の顔を見たら、シャーロットの答えはもう十分、分かったよ。」
父には嘘がつけないらしい。シャーロットは、にっこりと笑い、頷いた。
◇◇◇
「•••今日、何だか可笑しくないですか?」
「ふふふ。」
「貴方がニコニコしていると恐ろしいのですが。」
「今日、お嬢様に言われたんです。俺とソフィアが似ている、と。」
はぁ、とソフィアが大きく溜め息をついた。シャーロットは決して良い意味で言っていない事は分かりきっているからだ。
「それに、お嬢様とソフィア談義に花を咲かせたんです。」
「は?何ですか、その気持ちの悪い談義は。」
「改めてお嬢様の素晴らしさを知りましたよ。ソフィアの素敵な所をよく分かっていらっしゃる。俺もつい、ソフィアの可愛い所を話しすぎてしまいました。」
湿った視線で睨みつけられても、ハロルドは上機嫌だ。
「怒っていても可愛い。」
「触れないでくれます?」
ハロルドはソフィアを後ろからがっちりと抱き締め、離そうとしない。ハロルドは、ソフィアがどんなに突き放そうと甘やかしてくる。ハロルドの腕の中で、また溜め息をついた。
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