上 下
35 / 41
それからのこと。

35(エドモンドside)

しおりを挟む


 エドモンド第二王子には、十歳の頃から、公爵令嬢のシャーロットを始めとした三名の王子妃候補がいた。



 元来、正義感が強く穏やかな性格だったエドモンドは、三名の王子妃候補と分け隔て無く仲良く過ごしていた。



 しかし、ある時国家間の交流を深める為の茶会で、優しい微笑みが美しい隣国の王女、ステファニーに目を奪われた。


(シャーロット達が、辛い思いをして王子妃教育を受けているのに、他の女性を想うなど•••。)


 そう思えば思う程、ステファニーへの想いは募っていた。誰にも気付かれないように装うのに必死だった。




◇◇◇



 六年前、政治的背景からエドモンドとステファニーの婚約話が持ち上がった。婚約が決まった場合、確実にシャーロットを傷付ける状況になるにも関わらず、エドモンドの心には、仄暗い想い、ずっと想っていたステファニーと結ばれるかもしれない、という期待が占めていた。




 何度もそんな想いを振り落とそうと、国の為にと王子妃候補に残ってくれたシャーロットに誠実であろうと努力した。シャーロットだって、自分に対して恋慕の情を抱いてはいないだろう、だがいつも王子妃候補らしく自分を大切にしてくれていた。それに報いるよう努めていた。





 三年前、エドモンドとステファニーの婚約が結ばれた。エドモンドは罪悪感から、シャーロットへ何か出来ないか何度も尋ねた。しかし。


「殿下が私の為に何かしたい、と心を砕いて下さっているのなら、どうか幸せになって下さい。戦友が幸せであることが、私の幸せなのです。殿下がお幸せであることを、心よりお祈り申し上げます。」



 シャーロットは、最後にそう言った。大事な幼馴染であり戦友だと、シャーロットが言っていたように、エドモンドもシャーロットをそう思っていた。そんな大切な存在を行き遅れにしてしまい、自分だけがおめおめと想い人と結ばれるなんて、許されるのだろうか。シャーロットが最後に見せた微笑みが何度も頭を散らつき、心がじくじくと痛んだ。








◇◇◇



※注:初恋を拗らせていたのは、シャーロットだけでは無かったようです。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

王妃は涙を流さない〜ただあなたを守りたかっただけでした〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,093pt お気に入り:5,692

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:738pt お気に入り:3,759

殿下、それは私の妹です~間違えたと言われても困ります~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,040pt お気に入り:5,287

全力告白女子は、今日も変わらず愛を叫ぶ

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:85

〖完結〗妹が妊娠しました。相手は私の婚約者のようです。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:504pt お気に入り:4,656

家に住み着いている妖精に愚痴ったら、国が滅びました

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:612pt お気に入り:9,029

堅物監察官は、転生聖女に振り回される。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,746pt お気に入り:151

処理中です...