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しおりを挟む「静かにしていてね。お父様もお母様も動物が苦手だから見つかったら大変なの。」
レナはネズミにそう言い聞かせ、レナが持っていたバックにフィリップはストールに包まれたまま優しく入れられた。公爵家の裏口を開け、こっそり自室に向かっているようだ。しかし。
「お嬢様!あれほどお部屋にいて下さいとお願いしましたのに!」
後ろから声を掛けられ驚いたのだろう、レナのバッグが大きく揺れた。
(この声は……。)
レナの侍女マーサの声だ。彼女はフィリップに箒を振り回したミーサの姉であり、声も見た目も性格もよく似ている。フィリップはミーサの先ほどの形相を思い出し、身震いした。
「しかもこんなに濡れて!今すぐお風呂に参りましょう!」
「マーサ。申し訳ないのだけど今日は一人で入らせてくれる?」
「しかし……。」
「お願い。一人になりたい気分なの。」
マーサが小さく溜息をついたのがバッグの中にいるフィリップにも聞こえた。
「お嬢様。あまり思い詰めないでくださいね。」
「マーサ、ありがとう。」
大丈夫よ、と笑うレナの声は震えていた。
◇◇◇◇
(まずい……。まずいぞ。)
一人の入浴を許されたレナは桶にお湯を溜めるとフィリップを入れ、優しく洗ってくれた。冷え切った身体には極上の幸せだったが……。
「リスさん。気持ち良い?」
隣の浴槽にはレナが入っている。機嫌よく尋ねるレナは勿論何も身に着けていない。フィリップは絶対にレナの方を見ないように細心の注意を払った。
「リスさんはどこから来たのかしら?水びだしになって大変だったわね。」
私とお揃いね、と嬉しそうな声音が聞こえ、フィリップはただただ戸惑うしかなかった。
(レナ……本当にリスだと思っているのか……?)
ネズミのフィリップは頭を傾げた。
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