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しおりを挟むアメリアはきょろきょろと辺りを見渡し、広い中庭を進む。なかなか見つからずに苦戦するが、漸く奥にある生垣の影にレイナルドが座り込んでいる姿を見つけた。
「……レイ様」
「……」
レイナルドの隣にしゃがみ込み声を掛けるが、黙り込んだレイナルドはアメリアと視線を合わそうとはしない。
レイナルドはいつも笑うことは無い。不機嫌な顔か困った顔しか見せない……最も彼をいつも困らせているのはアメリアだが。だが不機嫌な顔の時でも、本当に不機嫌なのかどうかは一年以上婚約者をしていたら分かるのだ。今レイナルドはすごく不機嫌だ。それに気付くと、アメリアは胸がぎゅっと痛くなった。
「……レ、レイ様、ご、ごめんなさ」
エリザベスはアメリアは悪くないと言ってくれたけれど、やはり何か失言してしまったのだろう。じわりと目に溜まる涙が零れ落ちる前に、レイナルドは少し乱暴にアメリアの少しふっくらした頬を抓った。
「レ、レイひゃま……?」
「……お前は意地悪だ」
「ふぇ?」
「お前は意地悪だ」
「わ、わたくし、レイひゃまにいじわるなんかしましぇん!」
初めて見る、眉を寄せムッと怒った表情にレイナルドは少したじろぐと抓っていた手を離した。きりっとした眼差しに思わず圧倒されてしまう。
「私は一生……っ、絶対にレイ様に意地悪なんてしません!それに!もしレイ様に意地悪をするような人がいれば私がやっつけます!」
アメリアは小さな拳を握るとファインティングポーズを取った。レイナルドは眉尻を落とし、何とも形容し難い表情を見せた。
こんな小さな手で、細い腕で、どう戦うと言うのだろう。だがアメリアは大真面目だ。絶対にレイナルドを守るのだと強く想っているのだ。
ああ、やっぱりお前は意地悪だ。
どうせいつかは俺の前からいなくなってしまうのに。
俺のことをいらないと突き放す筈なのに。
他の男の元に行ってしまうのに。
そのくせ、こんなにも心乱してくるなんて。
大きく宣言したアメリアは、レイナルドと目が合うとにこりと笑った。それがまた腹立たしくて、レイナルドは意地悪な婚約者の整った鼻を抓るのだった。
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