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しおりを挟む季節が廻り、二人が婚約して六年が経った。レイナルドは十五歳、アメリアは十一歳になり、レイナルドは学園に入学する年齢だ。そして、社交デビューする年でもある。
学園に入学した者は貴族の令息令嬢であり、彼らは例外なく全員が社交デビューする。入学式の日の夜、王城で開かれる舞踏会に出席することで社交デビューしたと認められるのだ。
「モーリス」
公爵家の執務室にひょっこりと顔を出したアメリアは、執事長モーリスに声を掛けた。
「これはこれはお嬢様。どうされましたかな」
穏やかな笑みを浮かべたモーリスはアメリアに尋ねた。
「私宛のお手紙は無かったかしら」
「……いえ、今日は無いようですね」
「そう……お仕事の邪魔してごめんなさい」
「お嬢様……」
肩を落として去って行くアメリアの背中を見守りながらモーリスは胸を痛めた。アメリアは来る日も来る日も自分宛の手紙を待っており、届いていないことを知る度に彼女は傷ついている。モーリスは毎日、今日こそはアメリアの待つ手紙が届いているようにと祈ることしかできないでいた。
翌日、定例となっている週に一度のレイナルドとの茶会へアメリアは足を運んでいた。いつもは護衛を付けられているだけだが、今回は珍しく専属侍女ミリーが同行すると言ってきた。多少不思議に思っていたアメリアだが断る理由もなく、ミリーと共に登城した。
「お前……」
「はい?」
アメリアの顔を見るなり、レイナルドは苦い顔をした。アメリアも十一歳になり泣くことは少なくなったし今だって泣いてはいない。それなのにレイナルドは泣き顔を見たかのような反応を示している。
「その……だな」
「はい」
「……最近、顔色が悪くないか」
「へ?」
アメリアは戸惑った。体調は至って良好だし、睡眠もきちんと取れている。顔色が悪い理由は思い当たらなかった。アメリアが思案していると控えていたミリーが口を開いた。
「殿下、発言をお許しいただけますか」
「……許可しよう」
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