【完結】拗らせ王子と意地悪な婚約者

たまこ

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「やぁ、アメリア。久しぶりだね」

 アーネストが公爵家にやって来た日、アメリアは両親と共に彼を迎えた。アーネストは公爵夫妻に挨拶した後、人好きのする笑顔でアメリアに声を掛けた。そっぽを向いて背を向けてしまいたい気持ちをぐっと堪えてアメリアは淑女らしい笑みを浮かべた。


「ええ、アーネストお兄様お久しぶりです」

「レイナルド殿下も元気かな?」

「……っ、ええ、勿論です」

「ふふ、彼と同じ学園に通うのが楽しみだ」

「……っ!」

 何の不自然もない言葉だがアメリアには違う意味に聞こえてしまった。怒り出したい衝動を必死で抑え「……私、王妃殿下と約束がありますので」とその場を去った。娘を溺愛する公爵が慌てて追いかける。二人の背中を見送りながら、クラーク公爵夫人は客人を睨んだ。


「アーネスト殿下、娘をあまり虐めないでくださる?」

「すみません。アメリアが可愛くて、つい」

 表情を隠せたと思っていたのはアメリアだけで実際は違う。目に涙をいっぱいに溜めてふるふるしながら駆け出した彼女は小動物のようだった。アメリアの可愛らしい姿を思い出し、アーネストはくつくつと声を上げて笑った。


「殿下、アメリアに本当に嫌われてしまいますよ?」

「う~ん、それは悲しいなぁ。でも叔母様も悪いんですよ?」

「まぁ、どうしてかしら」

「私の方が先にアメリアと結婚したいとお願いしていたのに、後から話が上がったレイナルド殿下とさっさと婚約させてしまうから」

 そう、レイナルドとアメリアの婚約が結ばれるよりずっと前からアーネストはアメリアとの婚約を願っていた。だが、それはあくまでアーネストの希望だ。トパルーズ国と隣国デリンラード間でも話し合いが繰り返され、アーネストとアメリアの婚約は認められなかった。

 その数年前に隣国デリンラードの王女であるアメリアの母がクラーク公爵家に嫁いでおり、既に二つの国の関係は強固になっていた。もしアメリアがアーネストに嫁いでしまうと、二つの国の関係はより強固となることが予想され、他の周りの国の不安を煽ることが懸念されたためだ。

 アメリアとの婚約が認められないと言い渡されたのはもう何年も前だと言うのに、アーネストにはまだ婚約者が据えられていない。



「それでデリンラードの王太子殿下はレイナルド殿下に嫌がらせしているのかしら?」

「嫌がらせなんてしていませんよ、でも」

 王太子らしい朗らかな笑顔を浮かべて続けた。


「アメリアに相応しくない婚約者だと判断したら、すぐ攫っていこうとは思っています」

 クラーク公爵夫人は呆れ切って頭を抱えた。

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