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しおりを挟むシルヴィアの前で泣くと言う失態を犯してしまったが、彼女と彼女の侍女は心配してくれ必死でアメリアの目元を冷やし、化粧も直してくれた。そのおかげで腫れた目元はもう目立たない筈だ。公爵家に帰宅してから特に誰からも指摘を受けず、アメリアはほっと胸を撫で下ろした。
「アメリア、毎日忙しそうだね」
その日の夕食の後、穏やかな笑みを浮かべたアーネストがアメリアに声を掛けてきた。
「え、ええ。王子妃教育がありますので」
「毎日あんなに遅くまで?トパルーズ国は随分と厳しいんだね」
「いえ、王子妃教育の後は王妃様やエリザベス様とのお約束があるので帰宅が少々遅くなっているだけですわ」
「ふうん」
この場からさっさと去ってしまいたい。だが、去る理由が思いつかずアメリアは視線を彷徨わせた。昼間にあんなことがあったせいでいつもより頭が回らないせいだ。どうにか自室に戻りたいが、何かと手厳しいアーネストの前で迂闊な行動は取りたくもない。
「ねぇ、アメリア」
「はい」
「私もこちらの生活に慣れてきたよ」
「まぁ、それは良かったです」
「それでね……」
アーネストは笑みを深めて続けた。
「レイナルド殿下の学園での様子、聞きたい?」
アーネストが浮かべた笑みは、他の令嬢たちが見れば頬を染め上げるような美しい微笑みだった。だがアメリアには悪魔の笑みにしか見えなかった。
「……っ」
「アメリアが聞きたくないなら良いんだ、引き留めてごめんね」
「…………です」
「うん?」
「学園でのお話、聞きたいです……っ」
「ふふ、そうか。それなら少し話そうか」
二人は応接室へ行くとソファに腰掛けた。アメリアは専属侍女ミリーに声を掛け、紅茶を頼む。優秀な彼女は顔色一つ変えず、準備に向かっていたが心の中ではブリザードが吹き荒れていた。
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