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しおりを挟む王宮へ到着すると、他の貴族とは別の待合室を案内された。親善パーティーの主賓であるアーネストを他の貴族と一緒には出来ないのだろう。アメリアとアーネストはパーティーの開始時間まで暫し休むことができた。
「ねぇ、アメリア」
「はい」
「アメリアがさ、レイナルド殿下が嫌になったらさ」
「……っ、嫌になんてなりません」
むっとした表情を隠すことなく、アメリアは冷たく返した。そんな彼女へアーネストは苦笑いを浮かべる。
「もしもの話だよ。もしも、そうなったら私のところにおいで」
「なっ……」
「アメリアのこと、ずっと想っていたんだ。私の婚約者になってほしい」
「そ、それは幼い頃のお話で……」
「そうだね、幼い頃からずっと変わらずそう想っていたんだ」
アメリアは呆然とした。アーネストがアメリアを幼い頃から好きだったとは全く思えなかったからだ。
「……嘘です」
「どうしてそう思うんだい?」
「アーネストお兄様は私にいつも意地悪ばかりされていました。私のことを想っていたのならそんなことする筈ありません」
アメリアの言葉にアーネストはきょとんとしていた。
「アメリアにはいつも優しくしていたつもりだけど?」
「レイ様に酷いことばかり言っていました!」
「ああ、そうだね」
ほらみろ、といった表情でアメリアは淑女にあるまじく鼻息を荒くしていた。一方アーネストは少し呆気に取られていた後で優しく微笑んだ。
「そうか、レイナルド殿下への意地悪はアメリアへの意地悪になるのか」
「そうですよ!私、レイ様に意地悪する人はやっつけるって約束していますから!」
「そうだったんだね」
アーネストは「やり方間違えていたんだな」と小さく呟いた後で、アメリアの頭を優しく撫でた。幼い頃の親切で温かかった彼を思い出させる、穏やかな表情を見せながら。
「……可愛い婚約者に意地悪する人をやっつけてもらう男って、かっこ悪いと思うけどな」
「レイ様はかっこ悪くありません!」
「じゃあ、かっこいいんだ?」
「う……」
顔を赤らめるアメリアを見てアーネストはくすくすと笑った。
「意地悪ばかりしてごめんね」
「……、昔の優しいアーネストお兄様が良いです」
「うん、そうだね」
アーネストは微笑んだまま、瞳には哀しみを纏わせていた。
「……ずっと大好きだった女の子が他の男の婚約者になって、悲しかったんだ」
「……っ」
「もう意地悪はしないから安心して。でもねアメリア、覚えていて。アメリアが辛くなったら、いつでも私のところに来て欲しい」
「アーネストお兄様……」
アメリアが返事をする前に、使用人の一人がパーティーの始まりを知らせに来た。
「アメリア、行こう。君をエスコートできることが堪らなく嬉しいんだ」
心底嬉しそうにそう言うアーネストの手をアメリアは拒むことはできなかった。
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