【完結】先に求めたのは、

たまこ

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「その顔は何かあったんだね?目が泳いでいるよ」

 レティの動揺に目ざとく気付いたアーネストはレティを逃しはしなかった。仕方ない、レティは拳を強く握った。

「不敬を承知で申し上げますと、アーネスト殿下のことを考えることが多かったのです。そのため、つい慌ててしまったのです……え、ミゲル様、どうなさったのですか?」

 レティの話の途中で、ミゲルの足元からゴン、と大きな物音が響いた。ミゲルが苦悶の表情を浮かべる。どうやら、テーブルに足の脛を打ち付けたようだ。

「……問題ない」

「ですが……」

「レティ嬢、ぶつけただけだから大丈夫だよ。しばらくしたら痛みも治まるでしょ」

「……ああ」

「それより、さっきの話の続きを教えてくれるかな?」

「へ……あ、ええっと……」

 誤魔化すためについあんなことを言ってしまったが嘘ではない。レティは笑顔を浮かべ続きを話した。

「家族と陛下のお話になったのです。それで殿下のことを思い出しました」

「ふむ……伯爵と陛下は仲良しだもんねぇ」

「有難いことにそのようですね。後は、私の弟が人の話を聞くことが上手なことに気付いて、それで殿下のお悩みも私なんかより弟に相談した方が良い回答が得られるかもしれない……なんて考えていました」

「う……」

「あ、殿下のお話は他言していません。一人で考えていただけのことです。」

「うん、ありがとう」

 ぐったりした様子のアーネストが苦笑いで頷き、会話は終わった。どうにか危機を乗り越えることの成功したらしい。レティはほっと息を吐き、お茶の準備を終えると退室した。


「ミゲル、大丈夫かい?」

「ああ」

 レティの言葉に動揺して脛を打ち付けるなんて、腹を抱えて笑ってやりたいがそうするとこの男は一生許してくれないだろう。アーネストは笑いを堪え、話を進めた。

「実家では家族との交流を楽しんで来た、ってところかな?」

「……何故レティにあんな根掘り葉掘り聞いたりした」

 またしてもきつく睨まれたアーネストだが気にすることは無い。大きく息を吐き、呆れ顔を見せた。

「レティ嬢がいない間、ずっと落ち着かなかったのはミゲルじゃないか。何のために帰省したのか、どうせ聞けていないんだろう?」

「……ふん」

「大体、私のことを考えていたって家族との会話の中で思い出しただけさ。そう怒るなよ」

「別に、怒ってなどいない」

「どうだか」

 ミゲルはいつだって不機嫌で不愛想だ。だがここまで苛立つことは殆ど無い。苛立ちが漏れ出る友人の様子を見てアーネストはまた苦笑した。
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