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しおりを挟む「どういうことだ……」
混乱するミゲルへアーネストは呆れて息を吐いた。
「はぁ、だから訂正しておけって言っただろう。前も言ったけど……あの第三王女との婚約話、相当広まってるよ。レティ嬢はそれを信じてるんだ」
「う……」
「前伝えた時になんで訂正しなかったんだよ」
「……」
黙り込むミゲルをアーネストは急かした。
「ああ、もういいから!早く追いかけろ。本当に手遅れになるぞ」
アーネストの言葉に青褪めたミゲルは何も言わないまま走り出した。
「ふぅ……」
厨房へ戻ったレティはほっと胸を撫で下ろした。漸く伝えられた。弟のジャックとの約束も、これで一応は守れたのではないだろうか。
「ミゲル様の気持ちは聞かずにそのまま出てきちゃったけど、まぁいいでしょう」
ミゲルの気持ちなど聞かずとも分かっている。ミゲルはあの美しい王女様と結ばれるのだ。レティなんかと違ってミゲルととってもお似合いだったあの人と。そして公爵となってあの人と共に公爵家を守っていくのだ。
「さぁ、転職先を……っ」
平気だと、もう大丈夫だと、そう思っていたのにぼたぼたと涙が溢れた。公爵家を出てしまえば、もうミゲルとは会えないかもしれない。ミゲルのために料理は作れない。今までのように言葉を交わすことはできない。
「……っく、うぅ……っ、ミゲルさま」
拭っても拭っても涙は止まらなかった。名を呼んでしまうと余計胸が締め付けられた。
「……っ、ひっく……」
「レティ」
声を漏らして泣いているレティを呼ぶ声が聞こえた。自分に都合の良い幻聴かと思えてレティはのろのろと頭を上げ振り向いた。その声はレティが聞き間違えることの無い声だったからだ。
「ミゲルさま……っ、どうし」
レティが聞き終わる前にミゲルはつかつかと足早に近付くとぐいっとレティを抱き寄せた。
「……っ!ミゲル様、だ、駄目です」
「行くな」
「……はい?」
「どこにも行くな。ここから出ていくな。婚約者なんて探すな」
「そ、そんな、酷いです。ミゲル様は婚約するのに私は駄目なんて」
「俺は……」
ミゲルは言葉を切った。少し顔を上げるとミゲルと目が合う。彼の瞳はいつかのように不安そうに揺れており今にも泣き出しそうに見えた。
「……ミゲル様?」
「……俺はお前以外とは婚約なんてしない」
「……はい?」
レティは大きく目を見開いた。ミゲルの顔が僅かばかり紅く染まっていく様が見えた。
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