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しおりを挟む「観劇?」
仕事終わりの帰り道、ウィリアムが待ち伏せており、カレンに観劇のチケットを手渡した。
「今、人気みたいなんだ。カレンと行きたいな。」
なぜこんなにスマートなのだろう。女慣れしているウィリアムを見て、どうして自分はモヤモヤしているのだろう。最近のカレンは、ウィリアムへの思いを持て余していた。
「この観劇、小説が原作になっているみたいなんだ。カレンが知っているのだと良いけど・・・。」
「こ、これ・・・!」
カレンがチケットに目を落とすと、そこにはカレンが大好きな小説のタイトルが書かれていた。観劇には詳しくないカレンは、まさかお気に入りの作品が観劇の脚本になっていることは知らず、目を丸くした。
「知ってる作品みたいだね。」
「う、うん。好きな作品だわ。」
「それは良かった。じゃあ次の休みに一緒に行こう。」
優しく微笑むウィリアムに思わず見惚れてしまい、頭を振って気持ちを切り替える。
「チケット代、払うわ。」
「いや、婚約者とのデート代くらい払わせて。」
財布を取り出すカレンをウィリアムは制止した。カレンが思い出したくないあの夜から一ヶ月経ち、その間にカレンとウィリアムの婚約は無事成立した。正直、カレンの両親はウィリアムの素行が気に掛かっていたが、ウィリアムの両親がこの婚約に大賛成だったため、断りきれずに婚約が決まった。
(ほんと、別人みたい。)
ウィリアムがカレンの両親へ最初に婚約の話をした際に「これからの自分の行いを見て、判断してほしい」と言ったように、ウィリアムの行いはすっかり変わっていた。令嬢と話している場面は一切見なくなった。これまでは顔を合わせればカレンを揶揄ってばかりだったのに、本物の恋人のように振る舞うウィリアムにカレンは戸惑っていた。
「カレン、楽しみだね。」
どうせ他の令嬢に同じことをしていたのだろう。そんな思いが何度も過るのに、カレンは優しく握られた手を、振り切ることが出来ない。
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