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第二部
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しおりを挟む「お義姉さま……」
エラは自分を抱き締めていたナスタジアの腕を外すと彼女の両手を握り、義姉の瞳を見つめた。
「お義姉さま、これまでずっと申し訳ありませんでした」
「……エラ?」
「領地経営の手伝いをしなかったことも、チャーリー殿下との婚約破棄の騒動を起こしたことも……、お義姉さまに迷惑ばかり掛けてきました」
「でも、それは魔力のコントロールが上手くいかなかったせいだって聞いたわ……だからエラが申し訳ないなんて思う必要はないの」
エラは大きく首を振った。
「確かに魔力のせいでもあったかもしれません。でも私の元々の性格のせいでもあったと思います……ずっとお義姉さまに謝りたかったけど、遅くなってしまってごめんなさい」
「そんな……私怒ってないわ。それに……私こそごめんなさい」
「……?お義姉さまが謝ることなんて」
「いいえ、あの婚約破棄の時、あなたに対して沢山酷いこと言ったわ」
「あれは事実ですもの、謝る必要なんてありません」
あの頃の自分を思い出すと顔から火が出そうな程に恥ずかしい。傍若無人に振る舞い、家族に散々迷惑をかけ、義姉の婚約者を誘惑したのだ。あの頃のことは消してしまいたい。だけど今、償いの時間を貰えていることは有り難いとも思う。
目の前ではらはらと涙を流すナスタジアに寄り添うように立ったイザードは苦笑いを浮かべて口を開いた。
「ナスタジアはずっとエラ嬢に謝りたいと気に病んでいたんだ」
「そうでしたか。でも私、全く怒っていません」
「エラ……許してくれる?」
「勿論……というか私こそごめんなさい」
「エラの謝罪を受け入れます。だから、もう気にしちゃ駄目よ」
「え……うーん、それはどうでしょう」
ナスタジアが許してくれたからと言って、あの頃のことを忘れてしまうのは違う気がする。エラの困り顔を見て、ナスタジアはくすくすと笑った。
「初めての喧嘩と初めての仲直りね」
「……そうですね」
ナスタジアと暮らしていた間、エラは随分と扱いづらい子どもだった。そんなエラをナスタジアはいつも心配し、構ってくれていたが、喧嘩ができるような間柄では無かった。魔力のコントロールが難しくなっていた一年ほどの間は余計に関わりづらい人間になっておりナスタジアを散々悩ませはしたが喧嘩にはならなかった。
「エラ、変わったわね。幼い頃のエラとも違う気がするわ」
「そうだと思います」
「ふふ、今沢山愛されているのね」
「と言うより……」
次の言葉を待つナスタジアを見ていると少し恥ずかしくなってエラの声はつい小さくなってしまった。「これまで沢山愛されてきたことを、今教えて貰っているような気がします」そう伝えると、ナスタジアは破顔し力いっぱいエラに飛びついてきた。戸惑いながらも義姉の背中に手を添えられるようになったことが、彼女にとって大きな変化であると知っているのは姉妹だけだった。
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