王太子は妃に二度逃げられる

たまこ

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本編

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「……」

「フランチェスカ~もしかしてさ」

 部屋に通されアーネストは全てを察したようだ。顔面蒼白で硬直したアーネストに少々同情したマルコは口を開いた。

「領主代理のお部屋もこの階にあるの?」


「ええ、そうですわね。お父さまの従弟であるロレンツォお兄様のお部屋がありますわ」

「えぇっと、そのロレンツォお兄様?って結婚は?」

「……?お兄様は独身ですわ」

 首を傾げるフランチェスカにマルコは話にならないと言わんばかりに「もう!サラは?」と尋ねる。隅で控えていたサラを呼ぶと彼女はにやりと笑った後で経緯を述べた。



 この城塞には別棟などは無いこと。客室は家主の私室と同じフロアである、この部屋のみであること。宿を取ることも出来たがここに滞在することをフランチェスカが選んだこと。そしてサルヴァトーリ公爵もそれを了承していること。また領主代理のロレンツォはなかなか王都に出てこないため知られていないが、彼は大変な美丈夫であることもついでに言い添えて、サラの説明は終わった。

 サラの説明が終わってもアーネストは黙り込んだままだった。サラが淹れた紅茶を美味しそうに飲みながらマルコが話し始めた。

「ふうん。まぁ、サルヴァトーリ公爵が了承しているならいい、のかな?」

「ええ。ロレンツォお兄様は家族ですし問題ありません」

「ううん……父親の従弟なら結婚できるんだけどな」

 マルコの言葉にアーネストは口に含んでいた紅茶を吹き出した。

「……っ、ごほっ……」

「殿下!どうされましたか?!」

 慌てているのはフランチェスカだけである。サラとマルコは冷めた目で見ていた。

「……すまない。少し咽ただけだ」

「お加減は悪くありませんか?」

「問題ない」

「サラ。拭く物を持ってきて頂戴」

「……はい」

 サラが仏頂面で渋々退室すると、マルコも「着替えを取って来ます」と退室していった。室内に残された二人に静寂が訪れた。居心地の悪さを感じていたフランチェスカへアーネストが話し掛けた。

「その、だな」

「はい」

「……外聞が悪いのではないか」

 アーネストの言葉の意味が分からずフランチェスカは首を傾げた。彼は聡明でいつもであれば相手に伝わりやすいように話す人だ。それなのに、今日のアーネストは歯切れ悪く視線も泳いでいた。

「ええと、殿下?」

「だから……その領主代理殿と同じフロアの部屋に滞在するなどフランチェスカの名誉を傷つけるのではないかと言っている」

「まあ」

 フランチェスカは目をぱちくりとさせた。そしてくすくすと笑いだした。

「そんなこと有り得ませんわ」

「だが……っ、フランチェスカは未婚の令嬢だ」

「それはそうですが」

 アーネストは何やら焦っている。こんな動揺している彼を見たのは初めてだった。

「殿下」

 フランチェスカはにっこり笑い、安心させるように言った。

「わたくし、例え外聞が悪くても構いませんの。結婚はしてもしなくても構わないと考えていますから」

 フランチェスカは、アーネストが「ふうん、そうか」とでも答えるだろうと思っていた。だが目の前の彼は顔を青くし愕然としており、フランチェスカはまた目を瞬いたのだった。

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