王太子は妃に二度逃げられる

たまこ

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本編

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 翌朝、朝食の席に着くなりロレンツォは微笑みながらフランチェスカへ尋ねた。

「昨日の外出はどうだったかな?」

「……ええ、楽しかったですわ」

 フランチェスカはぎこちなく笑い、そう返した。思い返してみれば馬車にアーネストと二人っきりというのも初めてだった。互いに謝罪し合っていたため、馬車の中でそんなことを意識する暇は無かったがよくよく考えてみたら今更胸が高鳴り緊張してしまう。

 そして、馬車を降りる際に貸してくれた手、花畑を案内している間に盗み見た彼の横顔、お茶を飲みながら話を聞いてくれた優しい眼差し……一晩経って様々なことが思い出され、その度にフランチェスカは顔を熱くしていた。

「思い出の花畑は変わりなかった?」

「はい。昔と変わらず美しい場所でした」

「そうか、それは良かった」

 彼女の表情を見て、ロレンツォは少し揶揄うように笑った。フランチェスカは拗ねたように口を真横に結んだ。

「お兄様。どうして殿下へわたくしと出掛けるよう仰ったのですか?」

 急な仕事なんてありませんでしたよね、と付け加えるとロレンツォは「ごめんね」と謝った。

「フランチェスカは殿下と話す時間が必要だと思ってさ」

「……それはそうですが」

「ちゃんと話せたかな?」

「ええ……十分かどうかは分かりませんが」

 それでいいよ、とロレンツォは笑った。

「フランチェスカが殿下と良い時間を過ごせたようで良かったよ」

「……」

 肯定も否定もできずフランチェスカは言葉を詰まらせた。黙ったままの彼女を見てロレンツォは困ったように眉尻を下げた。

「フランチェスカ」

「はい」

「好きなだけここにいたらいいんだよ。ここは君の実家ともいえる場所だからね。フランチェスカがいたい場所に、好きなだけいたらいいんだ……そして、君のことが大切で君が幸せであってほしいと心から願っている。君の父も私もね」

 ロレンツォは「ずっとここにいたって良いんだ。フランチェスカを養う甲斐性くらいはあるさ」と軽い調子で笑った。

「……ありがとうございます」

 どうしてマルコもロレンツォもフランチェスカに幸せであってほしいと願うのだろう。フランチェスカは既に充分幸せだと思うのに……ただ一つの想いはもう七年の間にぱらぱらと崩れ落ちてしまった。崩れたそれはもう叶うことは無い。だがそれ以外はずっと幸せなのに。

 今だって幸せだ、とロレンツォに伝えようとしてフランチェスカは口を閉じた。その言葉はうまく伝わらないような気がした。


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