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しおりを挟む「それで、何か申し開きはあるのか。」
実父であるこの国の国王陛下に睨みつけられ、ステファンは歯を食いしばった。婚約者へは横暴な態度を取り続けるステファンだが、流石に父親にはそうはいかない。
「ケクラン公爵家からの抗議はもう二十回目だ。」
セリーヌの父親は領地経営に優れており、治めている公爵領は財源が豊富である。医療や福祉にも力を入れており、この国には無い技術や製品も積極的に取り入れている。王宮職員が公爵家の専門家たちへ学びに行くことも多いほどだ。
そのためセリーヌの父親は王家との繋がりを重視している訳ではなく、娘がステファンに無下に扱われる度に臆することなく国王陛下へ抗議を重ねていた。
「なぁ、ステファン?」
「はい。」
父親の威圧的な瞳を見て、ステファンは声を震わせないようにするので精一杯だった。国王は大きく息を吐き、諭すように言葉を続けた。
「ここ数年、誰が見たってセリーヌへのお前の態度は酷い。最初の内は年齢的なものもあるのだろう、とケクラン公爵も堪えてくれていた。一時だけ我慢してくれるよう、公爵も私もセリーヌへ何度も頼んだ。」
「……はい。」
「そして、私は数えきれないほど何度も言ったはずだ。セリーヌを大切にするようにと。そして、お前がどうしてもセリーヌと婚約を続けたくないのであれば婚約を解消しても良い、セリーヌとお前のどちらも立場が悪くならないようにする方法はいくらでもあるのだから、と。」
だが、と言葉を続けながら国王はステファンの瞳を見据えた。
「お前が言ったのだ。婚約を解消したくない、と……このやりとりだって何度もした。しかし、お前の態度は全く変わらなかったな。……ステファン、これが最後だ。」
「……っ!父上!」
縋るように声を上げたステファンを見て、国王は肩を落とした。
「ステファン……確かにお前たちの婚約は政略的なものだ。公爵家との繋がりが欲しいと願ったのも私だ。だがな、何度も言っているがセリーヌと婚約したからと言ってお前の王位継承権に影響は無い。セリーヌを大事にしてやれないなら解放してやれ。」
「……解放、ですか。」
「……今回までは公爵に頭を下げた。だが、もう次はない。」
ステファンを下がらせると、国王はまた大きく息を吐いた。
「……平等に育てたつもりだったがな。」
国王は小さく呟いた。国王と正妃は仲が良い夫婦だったが、長い間子どもを授からなかった。そこで第二妃を娶り、産まれたのがステファンの兄だ。その後、正妃との間にも子どもを授かり、産まれたのがステファンだった。国王は、どちらの子どもも大切に育てたつもりだが兄と弟との間には大きな差が生まれていた。
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