【完結】婚活写真、お撮りします。

たまこ

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 あっという間に時間が過ぎ、閉店時間となる。佐藤さんと二人で閉店作業に取りかかる。

「梨奈ちゃんが来てくれて、助かったよ。ありがとう。」

 佐藤さんは眩しい笑顔でそう言うと、頭を下げた。今日は予約の電話を受けたり、お客様の対応をしたり、少し緊張もしたが、滞りなく出来ていたと思う。事務作業も、保育園でしていたものと難易度はそう変わらない。


「い、いえ。」

「……明日からも来てくれる?」

「へ?」


 私の様子を窺うような瞳で、不安そうに佐藤さんは尋ねた。


「昨日言ったことも本気で思っているし、こうやってバイトに来てくれるのもすごく嬉しいんだ。だけど、梨奈ちゃんからしたら嫌になってないかな、と思って……。」

「えーっと……昨日の話は何とも言えないのですが……バイトは頑張らせてください。」

 不安そうな言葉に、しどろもどろになって答えると、佐藤さんは晴れやかに笑った。



「良かった。」


 この人は、私に暖かさをくれるけれど、それが私の心に、じわり、と薄暗いものを生み出してくる。そして、それは、この人と会ったばかりだからとか、少し変わったアプローチをされたから、とか、そんな理由からだけではない。
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