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しおりを挟むコツン コツン。
ベッドに入る前、窓から嬉しい音が聞こえた。
「ヴァン!おかえりなさい!」
「ん。ただいま。」
黒くて綺麗な毛並みを撫でると、ヴァンは気持ち良さそうに身体を寄せた。
「この前のヒヤシンスのお花、ありがとう!」
「ああ。まだきれいにさいているな。ルーシーがせわしてくれているおかげだろう。」
「へへっ。」
照れ笑いを浮かべると、ヴァンは優しい瞳で私を見つめる。その顔を見るとソワソワと落ち着かなくなって、私は恥ずかしさを誤魔化すように声を上げた。
「ヴァン!あのね、これ!」
「ん?これは……?」
師匠に教わりながら編み上げたミサンガ。普通は手首に付けるものみたいだけど、ヴァンに作ったものは首に付けるものだから太めに編んだ。端には金具を付けており簡単に取り外しできるようにした。
「リボンが解れてきていたでしょう。代わりに作ったの。ヴァンはやっぱり赤が似合うと思って。それにミサンガは願いを叶えてくれるんだって!」
ミサンガは濃い赤の糸と、紫色寄りの赤の糸を組み合わせて編んでいる。あまりごちゃごちゃ色を入れない方が良い、と師匠から助言をもらったからだ。
ヴァンの首に少し余裕を持たせて取り付ける。黒いキラキラした毛並みにミサンガの赤色がよく映える。
「ヴァン、似合ってる!」
「ルーシー。」
ヴァンは私の手にスリスリと顔を擦り付けた。ヴァンの『嬉しい』のサインだ。暫くスリスリした後、ヴァンは私の手元を見て「これ……。」と目を丸くした。
「ふふ、ヴァンとお揃いだよ。」
ヴァンとお揃いのミサンガを編んで、自分の左手首にも付けていた。ヴァンと一緒に居られない時間は寂しくなってしまうけど、お揃いの物があると思うと力が湧いてくるような気がしたから。
「ルーシー、ありがとう。たいせつにする。」
いつも以上に甘えん坊になったヴァンと布団の中で身を寄せ合って眠った。
翌朝、目が覚めるといつものようにヴァンはいなかった。ぐっと込み上げる寂しさを、手元のミサンガを見て吹き飛ばす。
「……大丈夫。」
昨日より少しだけ強くなったルーシーを、机に置かれた白く美しいアングレカムの花が見ていた。
アングレカムの花言葉『いつまでもあなたと一緒』
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