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同じ頃、ハミルントン公爵家にて。



「それで?マーガレット、話してごらん?」


 お父様がにっこり笑って尋ねる。笑ってはいるが、目が全く笑っていない。怒ってるわ、過去に類を見ないほど。だけどここで折れる訳にはいかない。


「お父さま?今、お話した通りです。私とクリストファーさまは愛し合っているのです!だから、お姉さまと婚約破棄してもらったのですわ。」


「それは、表向きの理由だろう?何があったのか全て話しなさい。」


「私とクリストファーさまが愛し合ってる、これが全てです。」


 はぁ、と大きく溜め息をついてお父様は不機嫌な表情を隠そうとしなかった。私にこのような顔を見せるのは初めてだった。


「クリストファー王太子は、王太子としての素質は全く無いが優しく穏やかな男だ。わざわざ祝賀会で婚約破棄をするような度胸は持ち合わせていない。マーガレット、お前は少々頭が足りないが、あれほど懐いていたアレクサンドラに下衆な事をするとは思えない。更に言えば、国王陛下も私も会場から離れた絶妙なタイミングであの婚約破棄劇だ。こんな過激なことを、素晴らしいタイミングで出来る人間は一人しかいないな。マーガレット、観念して話しなさい。」


 お父様にはすっかりバレているようだ。しかし、話してしまって大丈夫だろうか。お父様がをする可能性も充分ある。お父様は公爵家当主であり、国王陛下の側近としても働かれており、この国トップクラスで力を持っている。クリストファー様とお姉様曰く「この国で腹黒い」お父様に話しても良いものか、私は決め切れなかった。



 コンコン。控えめなノックの後、お母様が入ってきた。

「お話中にごめんなさい。アレクサンドラの部屋に行ってみたら、これが…」

 お母様が差し出した手紙には、お姉様らしい美しい字で私の名が書かれていた。開けてみると。


〈マーガレット、言い忘れていたけど、お父様の追及からはどうせ逃れられないわ。お父様が動いてもから、安心して話しなさい。幸運を祈るわ!〉

 お姉様らしい言葉に、私は思わず笑みを溢した。お父様もこれを見て、殆どを悟ったのだろう。再度大きな溜め息をついて、うんざりした様子で首を振った。

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