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しおりを挟む「お姉様!」
一ヶ月ぶりに会う、義妹のマーガレット。公爵家にいた頃は、それはそれは美しく着飾られていたけれど、今の平民服も活発な彼女に似合っていて可愛らしい。公爵家で嫌々学んでいたマナーは置いてきたのだろう。アレクサンドラへ力一杯抱きついてきた。
「マーガレット、久しぶりね。もう生活は落ち着いたかしら?」
「はい。お姉様の見つけてくれたお家、とても暮らしやすくて、私もクリストファー様も気に入っています。自警団の屯所のすぐ傍なので安心ですし、近所の皆さんとも仲良くなれました。」
「良かった、安心したわ。」
にっこり笑うマーガレットを見て、アレクサンドラはほっと胸を撫で下ろした。勿論アレクサンドラのことだ、色々と手は回していた。まず、家はアルバートの屋敷に勤める使用人たちが住む地域の中で探した。屋敷の使用人たちは、皆アレクサンドラへ好意的なので近くにその妹がいれば気にかけてくれるのを見越してのことだ。自警団の屯所も、建設費用をポケットマネーから出し、わざわざマーガレット達の家の傍に建てた。更にアレクサンドラの影も常時マーガレットとクリストファーに付いている。それでも、マーガレット本人に会えるまではどうしても心配してしまうのが姉というものだった。
「お姉様、今日は辺境伯様はいらっしゃらないの?便宜を図っていただいたお礼をしたいのだけれど。」
「ごめんなさい。私もそのつもりだったのだけれど、急なお仕事が入ってしまって。マーガレットへ紹介するのは、また次の機会にさせてちょうだい。」
マーガレット達が辺境伯領へ来た後「落ち着いたら、屋敷に招くといい。」と言ってくれたのはアルバートだ。いくら屋敷の者が好意的でも、やはり心の支えになるのはマーガレットだろうという、アルバートの気遣いだった。
「それにしても、マーガレット、あなた何だが雰囲気が変わったのではなくて?」
服装の違いだけではない。マーガレットは、以前より明らかに美しくなっている。
「そうですか?」
「ええ。まさかとは思うけれど、結婚前にクリストファー様と一線を越えたりしていませんよね?」
アレクサンドラとしては、義妹をちょっとからかってやるくらいの気持ちだった。しかし、マーガレットは顔どころか首まで赤く染まり、驚きのあまり声も出ない様子だった。
「マーガレット?あなた、もしかして。」
「い、いえ!一線を越えてなどおりません!ただ・・・。」
「ただ?」
「その、口付けが、触れるだけではないのです・・・毎晩とても激しく口付けられるので、私恥ずかしくって。」
「なっ・・・!」
アレクサンドラは衝撃を受けた。そう、アレクサンドラとアルバートは、唇以外への口付けはしているが、本当の意味での口付けはしていない。しかも触れるだけでない口付けなんて、アレクサンドラには未知の領域だ。赤くなりながら俯いて話すマーガレットはとても可愛らしいが、クリストファーへは怒りが沸いた。六年もの間、マーガレットと適切な距離を保っていたクリストファーが、解禁されるなりこんなにも積極的になるとは思わなかった。あの真面目なクリストファーに遅れを取っていることが悔しかった。
それからもマーガレットとの大事な時間は続いたのに、アレクサンドラはどこかぼんやりとしたままだった。
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