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22(アルバートside)
しおりを挟む可笑しい。明らかに可笑しい。
表には出せないような多くの手段を用いて、私の婚約者として収まったアレクサンドラは、規格外な女性だ。自分の目的のためには、危ない橋も渡り、時に悪魔ともなる苛烈な面がある。だが私の前だけでは、とても甘い、砂糖菓子のような、可愛らしい婚約者となる。積極的に迫ってくると見せ掛けて、アプローチは少々突拍子もなく、恐らく本での知識だけで行動しているのだろう、とアルバートは当たりを付けている。そして、アルバートが少し迫っただけで、たじたじになる初心さが何とも愛らしい。
その愛らしい婚約者の様子が、どうも可笑しいのだ。一見するといつも通りで、領地経営の執務も滞りはない。夕食時も優しく微笑み会話をしている。だが。
(あれは、王太子妃の微笑みだ)
美しく、隙の無い微笑みに、屋敷の使用人たちは魅了されていたが、アルバートは物足りない思いだった。アルバートが愛らしく思うのはこの笑顔ではない。アレクサンドラが心から笑っている笑顔こそ見たいのだ。
アレクサンドラに付けている、専属侍女ジェニーを呼び、心当たりはないか尋ねる。
「マーガレット様が屋敷に来られた日から、様子が可笑しいように思います。溜め息をついて、ぼんやりとされていることが増えています。」
「マーガレット嬢が来たときに、何かあったと言うのか。」
「様子が可笑しいと気付いてから、面会はどうでしたか、と尋ねてみましたが、久しぶりに会えて嬉しかった、と仰るばかりで。」
アレクサンドラの為にと思って、マーガレットとの面会を勧めてしまったが、もしかしたら余計なことだったのか。
(マーガレット嬢に会う必要があるな)
アレクサンドラは気付いていない。アルバートが想像以上に、自分のことを溺愛しているなんて。
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