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番外編:キャサリン王女の幸福。4
しおりを挟むアレクサンドラが叶えてくれた『ケネスに会いたい』というキャサリンの願い、その代わりにキャサリンに求められたものは。
「おべんきょうをがんばればいいんですの?」
「ええ。キャサリン様は、以前から王女教育を熱心に取り組んでおられます。それに加えて、更に頑張る事、そうして多くの知識を身に付けたら私のお手伝いをする事、これが私からのお願いですわ。」
これを守ってくれるのならケネスに会うことを確約する、と笑顔で言われ、キャサリンは迷う事なく頷いた。
アレクサンドラからの課題やお手伝いは、年々難しくなっていった。だが、キャサリンはそれを止めることは無かった。
◇◇◇
時が経ち、六年後。
キャサリンとケネスは十四歳になった。ケネスは、父親の元、植物学者になるための道を確実に歩んでいた。ケネスは、貧困や医療に関して特に勉強熱心で、貧困を救うことを目的とした野菜の品種改良や薬草の新種開発等を研究のテーマにしていた。
「この薬草が、新しい薬になってもうすぐ医療の現場で使われるんだ。」
二人で中庭や温室で過ごすことも変わらなかった。ケネスのキラキラした顔で語られる、植物の話がキャサリンは大好きだった。こんな大好きな毎日がずっと続くと思っていた。
「・・・キャサリン、そろそろネルソン伯爵令息と会うのは止めろ。」
王太子である兄クリストファーに告げられるまでは。
◇◇◇
クリストファーも決して意地悪をしようと放った言葉ではない。それは、キャサリンもよく分かっていた。キャサリンもケネスも、婚約者を決定する時期に差し掛かっていた。アレクサンドラが同席してくれることも続いていたが、それでもこの年齢ではよく思わない人間も増えていくだろう。クリストファーは、誰かに悪意ある言葉を投げられる前に、キャサリンに忠告しただけだ。分かっている。分かっている、けど。
(大体、お兄様はずるいですわ!あんな素敵な婚約者がいるんですもの。)
自室に戻ったキャサリンは、涙が溢れるのも構わず、思いを巡らせる。
(私だって、私だって・・・。)
隣にいるのはケネスが良い。他の人が自分の隣にいるのも、ケネスの隣にいるのも、耐えられない。
キャサリンは、もう一人で泣き暮らす少女では無い。乱暴に涙を拭うと、部屋を後にした。
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