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番外編:キャサリン王女の幸福。6
しおりを挟む「クリストファー様。マーガレット。お帰りなさいませ。」
クリストファーとマーガレットが冒険ギルドから帰ってきた馬車の前でアレクサンドラは待ち構えていた。
「・・・アレクサンドラ。何故こんな場所で待っているんだ。」
二人が冒険ギルドに加わっているのは極秘のことだ。王城からも、ハミルントン公爵家からも離れた場所で馬車を降り、そこからは別々のルートで帰っている。そんな場所で王太子妃候補一人待っていたのだ。
「そんなことより・・・クリストファー様。キャサリン様に随分な言い方をなさったそうですね。目を腫らしていましたわ。」
「まあ!」
マーガレットから、じっとりと非難の視線を浴び、クリストファーは気まずそうに目を逸らした。そう、こんな辺鄙な場所でわざわざアレクサンドラが待っていたのは、マーガレットの前で伝え、マーガレットに非難されることこそが、クリストファーにとって一番のお仕置きになると考えたのだ。
「う・・・。あれは、ただキャサリンのことを思って。」
「勿論キャサリン様は、そのことも理解なさっていました。ですが、妹君の思いを聞き、寄り添うことも、兄の務めかと思いますが。」
アレクサンドラは攻めの手を緩めない。
「だが、あれは、いつかは言わなくてはいけないことだった。」
「そう思ったとしても、私に一言声を掛けて欲しかったですわ。あの二人のことは私が首を突っ込んでいることは分かっていたでしょうに。」
「すまない。いつもキャサリンのことで、アレクサンドラに手を煩わせていたから、これ位は俺がしないとと思ったのだ。」
アレクサンドラの厳しい言葉に、クリストファーは降伏した。申し訳なさそうに項垂れるクリストファーを見て、アレクサンドラは漸く合点がいった。クリストファーは無闇に厳しい言葉を掛けるような人間ではない。
「こちらこそ、申し訳ありません。言い過ぎましたわ。マーガレットもごめんなさい。こんな話に付き合わせてしまって。」
マーガレットは首をふるふると振った。まだあどけなさが残る彼女は、そんな仕草すら可愛らしい。
「・・・それでアレクサンドラ。キャサリンのことは、どうするつもりなんだ。」
「ふふふ。クリストファー様。私、妹というものには随分甘い人間なのですよ。」
マーガレットのことも、キャサリンのことも、いつかは縁が切れるのだからと最初は距離をとって接していたアレクサンドラだったが、ぐいぐいと慕ってくる二人の妹に、いつの間にか絆されてしまっていたのだ。
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