海に眠る琥珀を探して

すざくリン

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3日目

後ろだけで

「せっかく仔猫の格好になりましたし、涎を垂らすことも覚えました。どうせなら猫の言葉で話す貴方を皆様はみたいと思うのです」
 自己紹介もまだでしたし、語尾にニャン♡をつけて私の質問に答えてくださいね?
 それは人格の崩壊を意味すると、冷静に警鐘を鳴らす頭が鐘久にはまだ存在した。
 鐘久は元々人ウケのする性格ではない。
 大袈裟に捉えるほどの悪さではないが、何をしても付き纏う仏頂面と抑揚のない声、ぶっきらぼうな口調が鐘久の周りの人々に良い印象を与えた試しはない。話せば一応人の良さが滲み出てることもあるが、それでも語尾ににゃんをつけろなどと言われたら拒否するくらいのプライドはあった。
「…………」
 肯定も否定もできず目を逸らす鐘久の前に、丁寧な男が手をチラつかせた。
 手の先には、先ほどまで自分の尻の奥を虐めていたもののスイッチが握られている。鐘久がハッと気づいた時には遅かった。
「んあああぁああぁぁ!!!!あぁ!や、やだ!!」
 ブブブブブ……という振動がまた鐘久を襲う。一度いって敏感になったそこを容赦なく刺激され、顔がぐいと上を向く。
「はーい!司会に変わりまして私から質問をしていきますね!さぁ仔猫ちゃん、お名前をどうぞ♪」
 男は急に態度を変えて話しだした。
 どうにか男の方をチラと見ると、おもちゃのマイクをこちらに向けてアイコンタクトを取ってきた。反対の手に隠したスイッチをいじって振動を弱くすると、「教えた通り言えていれば強くはしません。お客様のためにも、心を込めて仔猫を演じてくださいね」と念を押した。
 無理だ、できっこない。
 鐘久はふるふると首を振って目で訴えてみるが、丁寧な男は何も返してこなかった。
 微妙な沈黙が続く。居心地が悪くなりようやく絞り出すように応えた。
「黒田、鐘久……でsっ?!ぅあぁ!!」
 です、で切ろうとした途端に尻尾の振動が激しくなる。
「にゃん♡、をつけるんですよ?」
「ぃ、ぃいやだ!やっぱりできなあっ!あん!ああぁ!!」
「もっと激しくした方が言いやすいですか?」
「ヒィッ?!や、やめ!やめて!!」
「それとも言い方が分かりませんか?鐘久だにゃん♡、です。どうぞ?」
「あ、あ、いや、だ……あぁああん!!わ、わかった!わかったから激しくしないでえぇ!!!」
 腰がガクガクと痙攣する。
 刺激に負けてついに鐘久はいう覚悟を決めて、黒田鐘久だにゃん、と喘ぎ喘ぎ答えた。
 途端に刺激が弱くなる。はぁはぁと息を落ち着かせている間に質問がくる。
「ぉ男だにゃん……」
「……だ、大学、院生だ、にゃん」
 顔を真っ赤にしながらどうにかして語尾をサラッと流そうと俯きがちになる鐘久に、男はふーむ、と考えるそぶりをした。
「私が教えたのはにゃん♡ですよ?」
「え……?ちゃんと、言って……」
「ですから、もっと可愛くってことです。ほら、にゃん♡、て感じです」
 男は両手を顔のすぐ下に持ってきて指を折ってぶりっ子のようなポーズをとった。
 鐘久は今度こそ無理、と言った表情で男を睨むも、また徐々に振動が激しくなる予兆を感じ取って慌てて「わかり、ました」と了承した。
「この船に乗るのは初めてですか?」
「は、初めてっだにゃん……」
「大きな声でもう一度!」
「初めてだにゃん!」
「目を開けて!恥を捨てるのです!」
「は、はい!」
「にゃんで答えて!」
「うぅっ……にゃ!」
 可愛さを意図的に表現する余裕なんてない。とにかく必死だった。
 恥ずかしさからなのか理不尽さからなのか、意識していない涙がうっすらと滲んで頬をつたっていった。
「そうです。お尻の具合はどうですか?」
「お、おかしくっにゃりそうっ!にゃ!」
「では、どうおかしくなるか具体的に伝えてみてください」
「にゃっ……?」
 急なWHぎもんしを孕む難しい質問に、今まで口を挟まずに物陰に待機していた荒い男が小さく助言した。
「俺のいう通りに答えてみな、まずどこの部分だ?」
「……お、お尻が」
「なにでどうされてる?」
「なにで……ぁっ、ぼ、棒で!ぐにぐにされててぇ!」
 荒い男は助言のついでに尻尾を掴んで丁寧な男とは別の動きを足してきた。
「いいぜぇ、その棒はどこをおかしくしてる?」
「ぉ、こ、股間がぁ!奥からっごりごりおしゃれてっ!お、おおおかしくしてりゅ、にゃ!」
 鐘久はなんとか言いきったが、答えるために腰に意識を向けてしまったおかげで余計に変な感覚を味わっていた。
 おかしい。おかしい。
 猫の言葉で話すことへの躊躇はとっくに吹っ切れ、にゃあにゃあと鳴きながら刺激の先を追い求めるように腰を振った。
「及第点ですね」
 満足げに丁寧な男が頷く。
 まだいやらしい言葉の多くに触れていないせいで答え方の出来はまずまずだが、順応はとても早く教えたことは意識的であれ無意識であれきちんとできるようだ。
 じきにお客様方の理想の見せ物ができるだろう。
「では仔猫様、そろそろいきたいのではないですか?」
「い、いく……?」
「そうです……いきたいでしょう?」
「にゃ、い、いきたい……」
 鐘久はただ言葉を繰り返すだけだ。それがどういう意味かも知らずに。
「いいでしょう、元気にいってください、仔猫様!」
 男はそういうとスイッチのつまみを最大まで上げた。
「にゃああぁぁあぁ!!!!いく、いくううぅううぅぅ!!!」
 こうして鐘久は後ろで絶頂することを覚えたのだった。
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