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第1章 転移!学園!そして……
【8話】 特訓開始!
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「ん……ここ……は?」
頭が痛い、どうやら頭に衝撃を受けて倒れているようだ。
確かさっき……大浴場に行こうとした時、廊下の曲がり角で可愛い女の子が飛び出して来て、それから何か重たいものが頭に……
「うぐっ……」
ピキンッと頭がひび割れたように痛んだ。
俺はゆっくりと目を開ける。
目を開けて見えたのは廊下の天井ではなく、部屋の天井だった。
どうやら俺が倒れている間に部屋に運ばれた様だ。
それにしては俺が泊まることになった部屋とは似た様な造りだがどこか違う雰囲気がして頭を横に向けた。
すると視界に入ったのは台所みたいな所に腰まで伸びてる透き通った銀の髪の女の子が俺に背を向けて立っているのが見えた。
俺が目が覚めた事に気がついたのかその女の子は振り返って俺の近くに駆け足で近寄って来てそして……。
「ご、ごめんなさい!」
少し高めの可愛らしくて、大きな声でその女の子は言った。
いきなりの大声で体がビクッと反応してしまった。
その女の子はとても不安そうで😟そうな表情でこちらを見ていた。
このままだと泣き出しそうだ。
泣き出しそうな女の子を目の前に俺はどうしたらいいかとあたふたと戸惑う、とりあえず落ち着かせようと思いその女の子に声を掛けようとする。
「あ、あの……とりあえず落ち着いて……ね」
こんな可愛い女の子に声をかけるなんて普段はない為に緊張してしまい、声があまり出せなかった。
それでも俺の声は聞こえたのかその女の子は涙を目に溜めながらもゆっくりと俺に話しかける。
「そ、そのすみませんでした。私誰かいるなんてわからなくて……もしかしたら怪しい人……だと思って」
どうやら彼女も俺と同じように他の試験者より早く来てしまったようで曲がり角で遭遇した時、とっさに不審者だと思ったらしく攻撃をして来たらしい。
「い、いや大丈夫だよ。それより誤解が解けたようでよかったよ。」
ひとまず大丈夫という事を彼女に伝えた。
とりあえず彼女の部屋で休ませて貰っているということは俺が不審者という疑いは晴れているということだ。
それならよかった。
「その……倒れた時に部屋の鍵が落ちて……」
と彼女は俺に説明をした。
そうか、鍵を持っている事はここで泊まっている試験生って事だから不審者という誤解が解けたのか、と俺は納得した。
「あぁそうだったんだ……ところで試験までまだ1週間もあるけど、君はなんでもうここにいるの?」
俺は今日この異世界に来て試験を受ける為にセリティアさんからここへ泊まるように言われたからだけど、今俺の目の前にいる彼女は銀髪でとても俺と同じ世界から来たとは思えない、ならなんでこの子はここにいるのだろうか?
「え?えっと……それは……」
目の前にいる子は恥ずかしそうに顔を赤くして少しもじもじと体を揺らした。
「試験の日付をちょっと間違えちゃって……君もそうじゃないの?」
……あ、そうか他の人からすれば俺が異世界人だとは知らなかった、それに俺が異世界人というのはあまり知られたくはない。
例え他に異世界人がいるとしても街でディーオンが俺を異世界人と言った時の反応がちょっと恥ずかしかったからだ。
とりあえず話を合わせに行かせなきゃ。
それにしてもこの子ちょっとおっちょこちょいだな、
「あ、あぁそうだよ。い、一応他の人はどうなのかなって気になって……」
と少し無理のある言い訳をした。
疑われたか?そう思ったがレイナの目には疑っている様子はなくただ純粋に俺の事を心配してくれている様な目だった。
これ以上騙すのも嫌なので俺はこの部屋から出ようする。
「あ、それじゃあ俺はもう帰るよ。」
そう言って部屋を出ようと俺は立ち上がった。しかしさっきの衝撃のせいか立ち上がる際にふらっと体がふらついた。
「本当もう大丈夫ですか?私に出来ることがあったらなんでも言ってください。」
ん?今なんでもって……
いや、そういう意味じゃないだろ。
この子は俺が少しふらついたから心配になっただけだ。
それにそんななんでもなんて……俺にそんな事が出来る度胸なんてある訳がない。
「本当に大丈夫だよ。それじゃあまたね……えーと……」
どうせ試験の日にまた会えるだろう。
そう思って俺は別れの挨拶をしようとしたが、そういえば彼女の名前を聞いておらず、なんて呼べばいいかわからず少し困った。
すると俺が自分の名前がわからなくて困っている事に気がついたのか。
「まだ名前言ってなかったね。私はレイナ、レイナ・シルノー……君は?」
自分の名前を言い終わったレイナは俺に名前を聞いてきた。
俺は思わず神洞優斗と名乗りそうになったがそれでは異世界人だというのがわかってしまうのでは?と思い、セリティアさんから名乗るように言われた名を言う。
「あぁ、俺はユウト、ユウト・シンドウだ。よろしくな。」
と俺は名乗った。
しかし俺の名前を聞いたレイナは下を向いてなにかぶつぶつと喋っている。
声は小さくて何を言っているのかはわからなかった。ただ、ゆー……みたいな事は言ってる気がした。
「うん!よろしくねユートくん。」
何か違和感があったが、きっと気のせいだと思いとりあえずスルーした。
「あぁよろしくな、それとくんとか付けずに呼び捨てでもいいから。」
同じ学園になるんだったら少しは仲良くしておきたいと思いそう言った。
「……うん、わかったわ。少しの間だけどよろしくねユート」
とレイナは答える。
少しの間とはどう言う事なのだろうか?
俺かレイナのどちらかが試験に落ちると思っているのだろうか?
しかし、今それを言っても仕方ない。
俺は部屋を出る事にした。
出る時までレイナは心配をしたが、大丈夫と言って部屋を出て大浴場へと向かった。
大浴場は割と普通な感じて特に元の世界と対して変わらないみたいだった。
それでも、いざ入ってみると体がすごく軽くなるのを感じた、この湯には何か魔力的なのが込められているのだろうか?
とてもいい湯だった、やっぱりこういった物は体を癒してくれるから素晴らしいと思う。
そして俺は大浴場から出て自分の部屋へと戻った。
部屋へと戻った俺は自分の部屋の電気を消してベッドに入った。
異世界に来てから初めての夜だ。
今日からここから暮らす事になる、それに関しての不安や期待について俺は考えようとするが……
駄目だ……今日、色々な事があった事で疲れが溜まり目蓋が重く段々と眠くなってきた。
とりあえず今日はもう寝て明日色々と考えよう。
そう思って俺は目を閉じ、深い眠りへとついた。
その日の朝は扉を叩く音で起きた。
そうだ……学校に行かないと……
眠気で意識が朦朧として俺が今異世界にいる事を忘れてしまっていた。
支度をしようとしたが、扉を叩く音がまだ続いており止む気配が全くなかった。
いつも起こしてくれている母親ならもう扉を叩く音は止んでいるはずなのに。
「んー起きてるよ……」
と寝ぼけながらも扉に向かい話す。
それでも扉を叩く音はまだ止まなかった。
そろそろうるさくなってきて起きてるという事を言う為に扉のほうへと向かった。
あれ?おかしい……俺の部屋ってこんなに広かったけ?普段ならばもう着いているはずなのにと疑問に思いながらやっと扉に着いた。
まだ眠気が覚めなてはないが、まぁ身内だし大丈夫と思い扉を開けた。
そこにいたのはガタイの良い大男が立っていた。
やっと来たか、と男は少し呆れた様な顔をしていた。
俺は少しずつ眠気が覚めていき自分が今異世界にいる事を思い出してきた、そして目の前にいる男、ディーオンについてもだ。
俺はとっさに頭に出来ていた寝癖を手で隠した。
「な、なんの用ですか?」
と俺はディーオンに焦りながら聞いた。
昨日の内にもう案内などは終わっているのになんで今ここにいるのか俺には全く身に覚えがなかった。
「おいおい、その言い方はねーだろ。せっかく俺が試験の為の特訓をつけに来たってのに。」
試験の特訓?高校の入試対策的なものかなと考える。
それにしても試験の特訓とは一体何をするのだろうか勉強とかか?この脳筋みたいな男が?
「ほら、変な顔をしてないでさっさと着替えてこの寮の庭に出ろ。」
外へ?勉強ではないのか試験って筆記の他にも何かあるのだろうか。
ディーオンはそう言い残すと扉を閉めて去っていった恐らく先に外に行って待ってくれるんだろう。
俺はディーオンに言われた通り、着替えて外に出て昨日見た案内図を思い出しながら庭まで行った。
庭に行くとそこにはディーオンが立っていた。
「よし来たな、じゃあやるぞ。魔性輪を構えろ。」
そう言ってディーオンは構えた。
とりあえず言われた通り持ってきていた魔性輪を指にはめて人器を出した。
「や、やるって……何を?」
とりあえず言われた通りにしたが、何をさせらるのか分からずディーオンに聞いた。
「何って……戦闘試験の特訓だ。ほらさっさとかかってこい。お前ごときの攻撃なんて全然効かないけどな。」
とディーオンは余裕そうな顔で指で『さっさとこい』みたいな感じて挑発してくる。
試験には戦闘もやるのか。
ディーオンは俺の事を舐め腐っている、俺はそれにウザさを感じてその挑発に乗る。
「くっ言うだけ言いやがって……わかりましたよやってやりますよ。うぉぉぉぉ!」
そう叫んで俺は人器を持ち、ディーオンに向かって行った。
そして気付いたら俺は倒れていて、青空を見ていた。
体が痛む……立っていて元気そうなディーオンが俺の事を覗き込んでいたどうやら俺はディーオンにボコボコにされた様だ。
それも人器も持たずに素手でだ……
「ほら立て、もっと出来るだろ?」
まだまだ余裕そうなディーオンに少しでも冷や汗をかかせてやりたい!
そう感じた俺は立ち上がって再び立ち向かう。
「さぁ続きをやろうか。」
と言いディーオンは再び構える。
俺はゆっくりと人器を構えて再びディーオンに向かって行った。
この日の特訓は夕方までかかる。
俺は膝に手をつけて上がった息を落ち着かせていた。
ディーオンは息一つ乱してはおらず全然平気そうにしていた。
結局俺はディーオンにまともに攻撃を与えられなかった。
流石は大隊長だ……格が違う。
まず人器が重たく今は多少マシにはなったが、最初の方は全く振り回せずにいてたとえ振り回せても躱されたり、素手で真っ正面から殴り返されたりしてその後にカウンターで腹部を殴られ後方へ飛ばされたのだ。
「また明日な」
そう言い残してディーオンは帰っていった。
俺はボロボロになった体を引きずって寮内の食堂へ行き、食堂のおばちゃんに心配されながらもパン等の食事を受け取ってそのまま食堂で食べ、自分の部屋へと戻った。
疲れた……今日はもう寝たい……
そう思ったが試験には筆記もある、このまま勉強せずにってのは流石にダメだと思ったので勉強をしようと街で買った参考書的な物をを取り出して開いて中を見た。
参考書のページを見てはめくる、めくっていく内に次第に俺の体には汗が流れていった、なぜなら……
やべぇ……全くわからねぇ……
この世界の参考書に書かれている事は別の世界に住んでいた俺には理解出来なかったのだ。
頭が痛い、どうやら頭に衝撃を受けて倒れているようだ。
確かさっき……大浴場に行こうとした時、廊下の曲がり角で可愛い女の子が飛び出して来て、それから何か重たいものが頭に……
「うぐっ……」
ピキンッと頭がひび割れたように痛んだ。
俺はゆっくりと目を開ける。
目を開けて見えたのは廊下の天井ではなく、部屋の天井だった。
どうやら俺が倒れている間に部屋に運ばれた様だ。
それにしては俺が泊まることになった部屋とは似た様な造りだがどこか違う雰囲気がして頭を横に向けた。
すると視界に入ったのは台所みたいな所に腰まで伸びてる透き通った銀の髪の女の子が俺に背を向けて立っているのが見えた。
俺が目が覚めた事に気がついたのかその女の子は振り返って俺の近くに駆け足で近寄って来てそして……。
「ご、ごめんなさい!」
少し高めの可愛らしくて、大きな声でその女の子は言った。
いきなりの大声で体がビクッと反応してしまった。
その女の子はとても不安そうで😟そうな表情でこちらを見ていた。
このままだと泣き出しそうだ。
泣き出しそうな女の子を目の前に俺はどうしたらいいかとあたふたと戸惑う、とりあえず落ち着かせようと思いその女の子に声を掛けようとする。
「あ、あの……とりあえず落ち着いて……ね」
こんな可愛い女の子に声をかけるなんて普段はない為に緊張してしまい、声があまり出せなかった。
それでも俺の声は聞こえたのかその女の子は涙を目に溜めながらもゆっくりと俺に話しかける。
「そ、そのすみませんでした。私誰かいるなんてわからなくて……もしかしたら怪しい人……だと思って」
どうやら彼女も俺と同じように他の試験者より早く来てしまったようで曲がり角で遭遇した時、とっさに不審者だと思ったらしく攻撃をして来たらしい。
「い、いや大丈夫だよ。それより誤解が解けたようでよかったよ。」
ひとまず大丈夫という事を彼女に伝えた。
とりあえず彼女の部屋で休ませて貰っているということは俺が不審者という疑いは晴れているということだ。
それならよかった。
「その……倒れた時に部屋の鍵が落ちて……」
と彼女は俺に説明をした。
そうか、鍵を持っている事はここで泊まっている試験生って事だから不審者という誤解が解けたのか、と俺は納得した。
「あぁそうだったんだ……ところで試験までまだ1週間もあるけど、君はなんでもうここにいるの?」
俺は今日この異世界に来て試験を受ける為にセリティアさんからここへ泊まるように言われたからだけど、今俺の目の前にいる彼女は銀髪でとても俺と同じ世界から来たとは思えない、ならなんでこの子はここにいるのだろうか?
「え?えっと……それは……」
目の前にいる子は恥ずかしそうに顔を赤くして少しもじもじと体を揺らした。
「試験の日付をちょっと間違えちゃって……君もそうじゃないの?」
……あ、そうか他の人からすれば俺が異世界人だとは知らなかった、それに俺が異世界人というのはあまり知られたくはない。
例え他に異世界人がいるとしても街でディーオンが俺を異世界人と言った時の反応がちょっと恥ずかしかったからだ。
とりあえず話を合わせに行かせなきゃ。
それにしてもこの子ちょっとおっちょこちょいだな、
「あ、あぁそうだよ。い、一応他の人はどうなのかなって気になって……」
と少し無理のある言い訳をした。
疑われたか?そう思ったがレイナの目には疑っている様子はなくただ純粋に俺の事を心配してくれている様な目だった。
これ以上騙すのも嫌なので俺はこの部屋から出ようする。
「あ、それじゃあ俺はもう帰るよ。」
そう言って部屋を出ようと俺は立ち上がった。しかしさっきの衝撃のせいか立ち上がる際にふらっと体がふらついた。
「本当もう大丈夫ですか?私に出来ることがあったらなんでも言ってください。」
ん?今なんでもって……
いや、そういう意味じゃないだろ。
この子は俺が少しふらついたから心配になっただけだ。
それにそんななんでもなんて……俺にそんな事が出来る度胸なんてある訳がない。
「本当に大丈夫だよ。それじゃあまたね……えーと……」
どうせ試験の日にまた会えるだろう。
そう思って俺は別れの挨拶をしようとしたが、そういえば彼女の名前を聞いておらず、なんて呼べばいいかわからず少し困った。
すると俺が自分の名前がわからなくて困っている事に気がついたのか。
「まだ名前言ってなかったね。私はレイナ、レイナ・シルノー……君は?」
自分の名前を言い終わったレイナは俺に名前を聞いてきた。
俺は思わず神洞優斗と名乗りそうになったがそれでは異世界人だというのがわかってしまうのでは?と思い、セリティアさんから名乗るように言われた名を言う。
「あぁ、俺はユウト、ユウト・シンドウだ。よろしくな。」
と俺は名乗った。
しかし俺の名前を聞いたレイナは下を向いてなにかぶつぶつと喋っている。
声は小さくて何を言っているのかはわからなかった。ただ、ゆー……みたいな事は言ってる気がした。
「うん!よろしくねユートくん。」
何か違和感があったが、きっと気のせいだと思いとりあえずスルーした。
「あぁよろしくな、それとくんとか付けずに呼び捨てでもいいから。」
同じ学園になるんだったら少しは仲良くしておきたいと思いそう言った。
「……うん、わかったわ。少しの間だけどよろしくねユート」
とレイナは答える。
少しの間とはどう言う事なのだろうか?
俺かレイナのどちらかが試験に落ちると思っているのだろうか?
しかし、今それを言っても仕方ない。
俺は部屋を出る事にした。
出る時までレイナは心配をしたが、大丈夫と言って部屋を出て大浴場へと向かった。
大浴場は割と普通な感じて特に元の世界と対して変わらないみたいだった。
それでも、いざ入ってみると体がすごく軽くなるのを感じた、この湯には何か魔力的なのが込められているのだろうか?
とてもいい湯だった、やっぱりこういった物は体を癒してくれるから素晴らしいと思う。
そして俺は大浴場から出て自分の部屋へと戻った。
部屋へと戻った俺は自分の部屋の電気を消してベッドに入った。
異世界に来てから初めての夜だ。
今日からここから暮らす事になる、それに関しての不安や期待について俺は考えようとするが……
駄目だ……今日、色々な事があった事で疲れが溜まり目蓋が重く段々と眠くなってきた。
とりあえず今日はもう寝て明日色々と考えよう。
そう思って俺は目を閉じ、深い眠りへとついた。
その日の朝は扉を叩く音で起きた。
そうだ……学校に行かないと……
眠気で意識が朦朧として俺が今異世界にいる事を忘れてしまっていた。
支度をしようとしたが、扉を叩く音がまだ続いており止む気配が全くなかった。
いつも起こしてくれている母親ならもう扉を叩く音は止んでいるはずなのに。
「んー起きてるよ……」
と寝ぼけながらも扉に向かい話す。
それでも扉を叩く音はまだ止まなかった。
そろそろうるさくなってきて起きてるという事を言う為に扉のほうへと向かった。
あれ?おかしい……俺の部屋ってこんなに広かったけ?普段ならばもう着いているはずなのにと疑問に思いながらやっと扉に着いた。
まだ眠気が覚めなてはないが、まぁ身内だし大丈夫と思い扉を開けた。
そこにいたのはガタイの良い大男が立っていた。
やっと来たか、と男は少し呆れた様な顔をしていた。
俺は少しずつ眠気が覚めていき自分が今異世界にいる事を思い出してきた、そして目の前にいる男、ディーオンについてもだ。
俺はとっさに頭に出来ていた寝癖を手で隠した。
「な、なんの用ですか?」
と俺はディーオンに焦りながら聞いた。
昨日の内にもう案内などは終わっているのになんで今ここにいるのか俺には全く身に覚えがなかった。
「おいおい、その言い方はねーだろ。せっかく俺が試験の為の特訓をつけに来たってのに。」
試験の特訓?高校の入試対策的なものかなと考える。
それにしても試験の特訓とは一体何をするのだろうか勉強とかか?この脳筋みたいな男が?
「ほら、変な顔をしてないでさっさと着替えてこの寮の庭に出ろ。」
外へ?勉強ではないのか試験って筆記の他にも何かあるのだろうか。
ディーオンはそう言い残すと扉を閉めて去っていった恐らく先に外に行って待ってくれるんだろう。
俺はディーオンに言われた通り、着替えて外に出て昨日見た案内図を思い出しながら庭まで行った。
庭に行くとそこにはディーオンが立っていた。
「よし来たな、じゃあやるぞ。魔性輪を構えろ。」
そう言ってディーオンは構えた。
とりあえず言われた通り持ってきていた魔性輪を指にはめて人器を出した。
「や、やるって……何を?」
とりあえず言われた通りにしたが、何をさせらるのか分からずディーオンに聞いた。
「何って……戦闘試験の特訓だ。ほらさっさとかかってこい。お前ごときの攻撃なんて全然効かないけどな。」
とディーオンは余裕そうな顔で指で『さっさとこい』みたいな感じて挑発してくる。
試験には戦闘もやるのか。
ディーオンは俺の事を舐め腐っている、俺はそれにウザさを感じてその挑発に乗る。
「くっ言うだけ言いやがって……わかりましたよやってやりますよ。うぉぉぉぉ!」
そう叫んで俺は人器を持ち、ディーオンに向かって行った。
そして気付いたら俺は倒れていて、青空を見ていた。
体が痛む……立っていて元気そうなディーオンが俺の事を覗き込んでいたどうやら俺はディーオンにボコボコにされた様だ。
それも人器も持たずに素手でだ……
「ほら立て、もっと出来るだろ?」
まだまだ余裕そうなディーオンに少しでも冷や汗をかかせてやりたい!
そう感じた俺は立ち上がって再び立ち向かう。
「さぁ続きをやろうか。」
と言いディーオンは再び構える。
俺はゆっくりと人器を構えて再びディーオンに向かって行った。
この日の特訓は夕方までかかる。
俺は膝に手をつけて上がった息を落ち着かせていた。
ディーオンは息一つ乱してはおらず全然平気そうにしていた。
結局俺はディーオンにまともに攻撃を与えられなかった。
流石は大隊長だ……格が違う。
まず人器が重たく今は多少マシにはなったが、最初の方は全く振り回せずにいてたとえ振り回せても躱されたり、素手で真っ正面から殴り返されたりしてその後にカウンターで腹部を殴られ後方へ飛ばされたのだ。
「また明日な」
そう言い残してディーオンは帰っていった。
俺はボロボロになった体を引きずって寮内の食堂へ行き、食堂のおばちゃんに心配されながらもパン等の食事を受け取ってそのまま食堂で食べ、自分の部屋へと戻った。
疲れた……今日はもう寝たい……
そう思ったが試験には筆記もある、このまま勉強せずにってのは流石にダメだと思ったので勉強をしようと街で買った参考書的な物をを取り出して開いて中を見た。
参考書のページを見てはめくる、めくっていく内に次第に俺の体には汗が流れていった、なぜなら……
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