やさしい異世界転移

みなと

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第1章 転移!学園!そして……

【9話】 試験対策

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 まずい……
 何がまずいって俺は元の世界の知識がこちらでも通用すると思い込んでしまっていたのだ。
 漢字なんてこっちの世界では完全に使われていないから習う事がない、歴史だって世界が違うのだからそれぞれ歴史が違うのは当たり前なのだ。

 どうすればいい……?頭を抱える。

 たとえ他の試験を突破出来たとしてもこの筆記試験を突破出来なければ意味がない、ディーオンに教えてもらうか……?

 いや、戦闘の特訓してもらって更には勉強もなんて流石にやってもらい過ぎか?それに、ディーオンはあまり勉強出来なさそうだしちょっと難しいか……

 そういえば!と俺はある事を思い出す。

 可能性は低いが頼んでみようと思う……そう俺と同じで早くこの寮に来ている試験生に、
 試験を受けるのであれば俺より断然勉強がわかるはずだ。
 もう俺はこれに頼るしかない、教えて貰うのは少し恥ずかしいが今はそんな事考えるのはやめよう、そして俺は部屋を出て勉強を教えて貰う事を頼みにレイナの部屋へと向かう。
 レイナの部屋に着き、俺は扉をノックしようとした。
 しかし、俺は女子の部屋に入った事がなく、入るのを躊躇った。
 でもこのままレイナの部屋の前に突っ立っているだけでは何にも解決はしないそう思った俺は勇気を出して扉をノックした。
 ノックし終わって少しして扉が開いた。
 出てきたのは当然レイナである、少しキョトンとした感じの表情をしている。

「ユート……どうしたの?」

 と不思議そうに聞いてくる。
 やはり呼び方に少し違和感があったが、俺は用件を言う。

「ちょっと頼みたい事があって……」

 と俺はちょっと恥ずかしがりレイナに言う。
 俺の表情を見てかレイナはハッとした表情をする。

「ご、ごめんなさい……私あまり知らない人とは付き合えないの。で、でも……友達からなら……」

 となんかわからないが何故か振られた様な感じになりあたりには沈黙がながれた。
 ちょっと残念……っていやいや今話したいのはそういう話じゃなくて!

「ち、違うそっちじゃなくて!俺はただ勉強を教えて貰いに来ただけで……」

 と俺はレイナに弁解をする。

「えっ……あっそういう事……も、もちろん知ってたよ」

 俺の言葉を聞いたレイナはそう言うもその顔は物凄く赤くなっており、今にも頭から煙が上がってきそうだった。

「と、とりあえずあがって……」

 とレイナが部屋に入る様に言った。
 1度入った事あるが、あれは一種の事故みたいな物でこういった形で女子の部屋に入るのは初めての為少し緊張しながらも俺は部屋に入った。
 部屋は昨日とは変わらなずに俺の部屋とはそう変わらかった。
 まぁ数日しかいないのに部屋に何か飾ろうとは思わないしな。

「そこ座っていいよ」

 レイナが俺に座るよう床に指を指して言ってきた。
 俺はそのお言葉に甘えて言われた所へ座る。
 その後レイナが俺の正面に座った。
 気まずい雰囲気が流れる。
 何か言おうにもどう話そうかと考えて口を開けないでいた。
 レイナの俺と同じような事を思っているのか少し困っているような顔をしている。
 暫くの間無言の時間が過ぎていった。
 これは俺が頼もうとしている事だ、俺が真っ先に言うべきだ。
 そう思って俺は頼もうとしていた事についての話に入る。

「それで勉強の事だけど……」

 俺はゆっくりと恐る恐る喋った。
 レイナにも試験対策をしなければいけない、その事はわかってはいるが、例え望みが薄くても何もせずに試験に落ちたくはない。
 なぜならセリティアさんが俺に学園の試験を受けさせてくれるのだから俺はそのセリティアさんの期待に応えたいそう思ったからだ。

「うん、私で良ければいいよ。」

 返ってきた答えは意外な物だった。
 だが、教えて貰えらえるんだからと思いほっとして肩の荷が少し降りた気がした。

「それでどこがわからないの?竜種の生態?それとも人神平等宣言とか?」

 とレイナは聞いてくる。
 人神平等宣言やら竜種というのもわからないのだが俺がわからないのは当然。

「ぜ、全部……」

 と恥ずかしがりながら言った。

「えっ…………」

 またお互い無言になり、暫し沈黙の時間が流れた。
 まぁ当然といえば当然ではあるが……

「全部って……全部?」

 レイナが困惑しながらも聞いてくる。
 教えて貰えるのならひと通りは教えて貰いたいそう思って全部と言ったが、流石にそれはダメだっただろうか。

「えーと……ちょっと聞いていい?どうして?」

 そのレイナの問いかけは当然だった。
 どうするか……
 全部知らないなんて流石に正直に言い過ぎたか。
 しかしもう言ってしまったんだ後戻りは出来ないし、出来るのであれば全部教えて貰いたい。
 だが、どうしようか……
 この世界の住人ならわかるような事もわからないというのはどう思われるのだろうか。
 俺が異世界人というのを明かせば納得してくれるのだろうか。でもそう言って何か特別な目で見られるのはなんか嫌だ。
 …………いや、本当の事を話そう。
 俺の頼みを聞いてくれたレイナに対して隠し事をしながら勉強を教えてもらうのはなにか騙している気分になる。
 特別な目で見られるのは嫌だが、俺はそんな騙す事の方がずっと嫌だ。

「じ、実は……俺異世界から来て……」

 そう言って俺はレイナに自分が異世界人という事を話した。
 最初は信じられないという表情をしていたが話していくうちに、詳しい異世界の話を聞いてレイナは段々と俺が言っている事を信じていった。
 最終的にはレイナは俺が話す異世界の話に興味を持っていった。

「へ~ほかには!ほかに何か異世界の話はないの?」

 聞いてくるレイナの目はキラキラとしていてとても可愛らしい表情をしていた。
 このままずっとこの顔を見ていたかったが、そろそろ本題に行く事にした。

「他にもあるけど、勉強の事は?」

 と俺はレイナに聞いた。
 レイナは異世界の話を聞いていた可愛らしい表情のまま。

「うん、私でよければ教えてあげるよ。でもちょっと私のお願いも聞いて欲しいな。」

 レイナは俺に何か条件を出すようだ。

「私が勉強を教える時に、ユートも私にもっと異世界の話を聞かせて欲しいな。」

 レイナは俺にその条件を提示してきた。
 俺はそれを聞いて安心する。
 でもどんな条件であろうとも受ける気ではいたが、変な条件だったらどうしようかと思っていた。

「あぁ、それくらいならお安い御用だよ。」

 俺はそう返事を返した。
 それを聞いたレイナはとても嬉しそうな表情をした。

「うん!ありがとう!でも今日はもう遅いから明日からでもいい?」

 レイナは明日からと言ってきた。
 確かに話すまでの間に相当な時間をかけてしまった為にもう夜遅い時間になってしまっていた。
 流石にここから勉強を教えてもらいレイナの睡眠の邪魔をしてしまうのは避けたい、そう思い俺は明日からとレイナと約束をしてその日は部屋に戻ってそのまま眠りについた。

 その日から数日間昼間はディーオンと特訓をして夜からレイナからこの世界の様々な事を教えてもらう日々を送った。
 ディーオンでの特訓をしてボロボロになった姿を見て心配されたが大丈夫と言っておいた。

 そして遂にディーオンに特訓をつけてもらう最後の日を迎えた。
 この数日で俺は微力ながらにも魔力が出せるようになった。

 ただ、その出せるようになった魔力は他の人が使うような魔法とは違うようだった。
 俺は魔力を出せるだけで魔法は俺が出せるようになった魔力をその人に合っにアレンジしてできるみたいな事をディーオンは言っていたが、俺はまだアレンジが出来ないようで魔力を拳や人器に纏わせるので手一杯だった。

 今日も特訓をしてもらっているが、特訓というよりは遊ばれている方が正しい。

「おいおいもう終わりか?数日かけて俺に一撃も当てられないのか?」

 そうディーオンが俺に言った。
 正論だが、こうも言われるとなんとも腹が立つ。

「まったく……まだ魔法を使えないのか?」

 少し呆れたかのような言い方でディーオンが俺に向かって言った。

「そんな……簡単に……言わないで……くださいよ……」

 俺はディーオンに対して息が上がって途切れ途切れに返した。

「魔法なんて実は魔性輪がなくても使えるもんだよ。」

 魔性輪がなくても魔法が使えると、そうディーオンは俺に言ってきた。

「それって……本当……ですか……?」

 まだ息が整っていなく、息を荒げながら質問をする。

「まぁ微量だがな、死の淵に立たされた時に魔法が使えるようにはなるって話だ。」

 死の淵……それは俺が立たされた事のないものだ。
 だが、その時俺の頭にこの異世界に来た時の事を思い出した。

 あの時空で確か……

 しかしそんな事を思い出している暇は無かった、気づいた時には俺は後方へと飛ばされて地面に叩きつけられていた。
 俺は地面に叩きつけられた衝撃で数秒息を出来ないでいた。

「おい、気を抜くなよこれが死闘ならお前は死んでいたぞ。」

 どうやら今の俺には考える事は不要という訳だ。
 ……わかったよ、それならとことんやってやるよ!
 そして俺はディーオンに向かって走り出す。
 人器をディーオンに向かって振り回すも至近距離だというのにも関わらず全て余裕の表情で避ける。

「くっ……」

 俺は一旦後ろへ下がる。
 そしてまたディーオンに攻撃を仕掛けようとする……が。
 疲労からか人器を振った際にスポッと手から抜けてディーオンの方へと飛んでいった。
 ディーオンは少し驚いたがすぐに右手を振り落とし人器を叩き落とした。

 今なら右が空いてる……そう思い立って右側に殴りかかった。
 そして遂に俺の右手がディーオンの顔に当たった。
 しかし、ディーオンは殴られたのにも関わらず動かずに微動だにしなかった。

 そしてすぐにカウンターで左ストレートで殴られて再び倒される。

「今のはいい攻撃だったぞ、これならセリティアからのご好意も無駄じゃないな」

「なんでそこでセリティアさんの話になるんですか……」

 ディーオンに見下ろしながらも立ち上がる、もう慣れたものだ。
 そして突如として出たセリティアさんの話題に突っかかる。

「いや別に、アイツに頑張ってもらうよう支援受けたのに受からなかったらどうしてやろうかと……」

 少し悪い顔をしながらディーオンは話す。
 なんかこのままだと癪だからちょっとからかおう。

「なんですかセリティアさんのこと好きなんですか?」

 子供みたいな煽り方をする、煽り方の種類少ないなぁ

「いやっ!ばっ!!そんなわけない!!」

 しかしディーオンはわかりやすいように取り乱す。
 あれ……これって……

「えっ本当に好きなんですか!?いやぁまぁわかりますよねあんな美人さんが近くにいるなんて!気持ちはわかりますよ!!」

 と少し挑発するように口が動く。

「よしわかった、特訓を続けるぞ」

 なんかガチ焦りするディーオン見れて新鮮だなぁ~!

 しかしそれがいけなかった。

 その後の特訓はいつも以上にボコボコにされたのだった。
 人を煽るのはいけないことだと身に沁みて理解した。

 なんともアレな最後だったがこの数日で強くなれた気がする。
「頑張れよ」そう言い残してディーオンは去っていった。
 そして夜にはレイナに勉強を教えてもらうと共に俺の元の世界の話で盛り上がった。

 そしてその勉強会的なものも終わり俺は自分の部屋へと戻って寝る、今ではもう当たり前になりつつある日常だが明日からは他の試験生もくるという……どんな人達が来るか不安半分期待半分で眠りについた。
 そして次の日、俺は部屋の外が何やらうるさく感じて起きるのであった。 

 本日は試験の前日である。
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