たとえこれが、恋じゃなくても

ryon*

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君がいなくなった日③

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***
 シャワーを浴び終え、のそのそと髪と体を拭くと、そのままトレーナーとジーンズに身を包み、ダウンジャケットを羽織った。

 まだ外は暗いけれど、ほのかな月明かりが窓から射し込んでいた。 

 それに導かれるみたいにしてスニーカーを履き、そのままフラフラと外へ出る。
 自然と僕の足は、実家近くにある交差点へと向かっていた。
 そう。……聡哉が自ら命を絶った、あの場所だ。

 腕時計を確認すると、時刻は3時を少し回ったところだった。
 
「あれからもう、三年も経つのか……」

 ポツリと、誰にともなく呟いた。

「ごめんな、聡哉。
 ……僕が君の想いをちゃんと、受け入れていたら」

 ポロポロと溢れ出した涙が、頬を伝っていく。
 いくら泣いてももう君は、絶対に戻ってこないのに。

 膝を折り、ペタンと地べたに座り込む。
 その場でひとり、声を殺して泣いた。
 するとその時、突然背後から話し掛けられた。

「おい、そこのお前!
 もしかして、死ぬ気か?
 でもこの時間だと、車なんかほとんど走ってないと思うぞ!」

 まるで子供みたいな、幼さを多分に残す声。
 それに驚き、後ろを振り返るとそこには、小さな。
 そう。手のひらに乗りそうなほど、本当に小さな。
 ……明らかに人ではない何かが、フワフワと飛んでいた。

 ビックリして、思わずその声の主に向かい手を伸ばした。
 柔らかだけれど、冷たい感触。
 薄紫色の肌と、黄金色の瞳。

 僕の手の中でその何か・・はジタバタと暴れ、悶えた。

「なんだ?これ。
 生きてる……のか?」

 背中から生えている、黒い羽のようなモノ。
 それをもう一方の手で軽く引っ張ると、その謎の生物は、ギャアギャアと大きな声で騒ぎ立てた。
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