たとえこれが、恋じゃなくても

悪魔見習いとの契約②

「へぇ、そうなんだ。
　なら魂と引き替えに、なんでも望みを叶えてくれる……とか？」

　じっと彼の姿を見下ろしたまま、半信半疑で聞いた。

「おぅ、そうだ！叶えられるぞ。
　死んだヤツを生き返らせる以外なら、なんでもな」

　おとなしく僕の手のひらの上に、乗ったまま。
　パタパタと羽を羽ばたかせ、見習い悪魔はまた得意げに笑った。

「……なんだよ、なんでもではないじゃん」

　僕が一番、望んでいた……それこそ自らの魂を、差し出しても良いと思えるほどの願い。

　それが叶えられないと知り、落胆した。
　すると悪魔はその反応が気に入らなかったのか、両手をブンブンと振り回しながら叫んだ。

「仕方ないじゃないか！魂と魂は、等価だ。
　だから誰かを生き返らせたところで、ひとり分の魂しか得られなかったら、俺様は何の利益も得ることが出来ない。
　それだと、意味がないだろう？」

　確かに、彼の言う通りだ。
　納得はしたが自分の望みが叶えられないのであれば、もうコイツに用はない。
　しかし彼は未練がましく僕に追い縋り、またしても頭の上に飛び乗った。

「そうだね。でも僕には、叶えて欲しい望みなんて無いや。
　他を、当たってくれる？」

　今度は投げるのではなく、優しく地面に彼を降ろした。

「待て、待て！人間！
　金も、地位も、名誉も、女も。
　なんだって、手に入るんだぞ！？
　それに生き返らせるのは無理でも、時間を巻き戻す事は出来るし！」

　その言葉に反応し、思わず足を止めた。

「しかもキャンペーン中の今なら、特別に。なな、なんと！
　願い事を、ふたつ叶えてやるぞ。どうだ？」