たとえこれが、恋じゃなくても

ryon*

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予想外の凶行②

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「でもさすがにここまでされたら、鈍いお前でも分かるよな?」
 
 にんまりと意地悪く、聡哉の形の良い唇が弧を描く。
 それに一瞬見惚れそうになったんだけれど、そこでようやく我にかえり、さっき彼の唇が触れた頬にバッと手を当てた。

「スゲェ、良い反応。ちょっとは意識、して貰えたようで」

 ククッと楽しそうに笑いながら、今度は手を握られた。
 恐らく真っ赤であろう、僕の顔。
 なのに余裕綽々といった表情の、聡哉が憎たらしい。

 ギロリと睨み付け、その手を振り払う。
 そしてさっきキスされたところを、これ見よがしに手のひらでゴシゴシと拭った。

「なぁ、晴。ホント今日のお前、どうしちゃったの?
 ……そんな顔されたら俺、期待しちゃうんだけど」

 こちらは睨んでいるというのに、なんでコイツはそんなにも、嬉しそうに笑っているのだろう?
 それが分からず、仏頂面のまま答えた。

「はぁ!?意味が、分かんないんだけど。
 ……睨んでるのに、なんでお前、そんな笑顔なんだよ?」

「んー。理由、聞きたい?」

 耳元で甘く囁かれ、カラダがふるりと小さく震えた。

「んっ……!」

 唇から零れた、卑猥な声。
 それに驚き、慌てて両手で唇を覆った。

「可愛いなぁ、ホント。
 こんなつもりで、家に誘ったんじゃなかったのに」

 口元を隠していた手は彼に掴まれ、そのままソファーに押し倒された。

「ちょ……お前、ふざけるのもホントいい加減にしろ!
 飯!オムライスを、食うんだろ!?」

 必死に押し戻そうとしたけれど、僕よりも一回り大きな彼のカラダはびくともしない。
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