たとえこれが、恋じゃなくても

ryon*

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気付いてしまった想い③

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 確かに話す声も、スピードも。
 そしてその仕草や動きまでもが、完璧なまでに僕そのものだ。

 しかし成人済みの男がこてんとあざとく首を傾げる様子は、ちょっと鼻に付く。

 ……他人から見たら、本当に僕はいつもこんな感じなのだろうか?
 これからは少し気を付けようと、心から思った瞬間だった。

***

 かなり不安ではあったものの、留守番を悪魔見習いに任せ、聡哉と待ち合わせたファミレスへ。
 
 背が高く、なのにどこか少し中性的な雰囲気を持つ美しい聡哉は、とても目を惹く。
 平凡を絵に描いたような僕とは、大違い。

 ふたりだけの時は気にならないけれど、こういう人の多い場所だと、それを強く感じてしまう。

 これまで付き合った人はいなかったけれど、僕が好きになるのは、いつだって女の子だった。
 だから恋愛対象は、異性だけなのだと信じて、疑いもしなかった。

 高校生らしき女の子達がきゃあきゃあと騒ぎながら、チラチラと彼の姿を盗み見ているのを目にして、なんとなく不快な気分になった。

 だって聡哉は、死ぬほど僕の事が大好きで。
 ……もうすぐ僕に、告白してくれるんだから。

 そんな醜く、浅ましい事を思ってしまう自分が本当に嫌だ。
 ……タイムリープする前は彼に対して、恋愛感情なんて一切抱いてなかったはずなのに。

 想いを受け入れようと思ってはいたけれど、それはすべて彼を死なせないためだった。
 でも今の僕は、気付くと聡哉の事ばかり考えている。

 今だって彼に少しでも早く会いたくて、めちゃくちゃ急いで来てしまったし。
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