たとえこれが、恋じゃなくても

ryon*

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はじめてのキス③

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「んー……ごめん。
 でも僕は、今したかったんだもん」

 唇を尖らせて答えると、彼はその場にうずくまり、再び顔だけ上げた。
 そして耳まで赤く染めたまま、恨みがましい視線を僕に向けた。 

「……ホント、お前ってヤツは。
 そういうとこ、マジでずるいよな」

 でも全然嫌そうに見えなかったのはきっと、やっぱり気のせいなどではなかったと思う。

***

 結局僕が押し切るような形で、昨夜に続き、今日も彼の部屋に泊まらせて貰う事になった。
 室内に入るなり、奪われた唇。 

 突然の事に驚き、反射的に抵抗しようとしたらそのまま手首をドアに押し付けられ、逃げられないよう固定された。

 酸素を求めて、自然と開いた唇。
 その隙を逃すことなく、ぬるりと彼の舌先が僕の口内に侵入してきた。
 ぴちゃぴちゃと、いやらしい水音が玄関に響く。

 ……こんなのまるで、耳から犯されているみたいだ。

 さっき僕がしたみたいな、軽く触れるだけのモノとはまるで異なる、大人のキス。
 獣みたいに激しく貪られ、唇の端からだらしなく唾液が溢れた。
 ……でもやっぱり、嫌じゃない。

「そう…や……。 
 も、無理……。許し…て……」

 ただキスをされているだけだというのに、気持ち良くて。
 どうしたら良いか分からず、震える声で彼の名を呼び、訴えた。

 そこでようやく満足したのか、唇を解放された。
 だからそれにホッとして、脱力する体。
 そのためドアにもたれたまま、ズルズルと崩れ落ちるみたいにその場に座り込んでしまいそうになった。
 なのに腕を掴まれ、無理矢理また立たされた。

「キスは、しても良いんだろ?」

 顎先を指で固定され、今度は軽く、触れるだけのキスをされた。
 ニヤリと意地悪く笑う、聡哉。

 確かに、しても良いって言ったよ?
 ……言ったけど!
 
 あまりにもムカついたから、なけなしの力を振り絞り、ギリッと彼の背中に爪を立てた。
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