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Act.4 押しかけペットとグルシエス家中
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「……リアン。本当に怒んないから正直に言いなさい。そのシルクねずみに似たのも、あっちに逃げてった小魚も、この小鳥も、リアンの〝お友達〟なんでしょ?」
「りあんのおともだち? やだ! ぼく、このとり、かうの!!」
ミハイル様がクリストファー様を見上げておっしゃられた。
だがクリストファー様は、リアンからじっと視線を戻さない。見定めるように、詰問するように、ただただ見つめている。
今にもクリストファー様をぽかぽかと叩きそうになっておられたミハイル様は、護衛執事が素早く抱きかかえていた。
しばらく、ミハイル様がじたばたと身じろぎなさる音だけがその場に響く。
誰も彼も、リアンの答えを待っていた。
「……あい」
クリストファー様が折れることないと観念したのか、リアンは小さく頷いた。
同時に、ミハイル様の身じろぎなさる音が止まる。横目で確認すると、護衛の腕の中でしょんぼりなさっていた。
すぅ……、とリアンは大きく息を吸い込む。
呼びかける時のように、両手を口元に添えた。
「……いーしゃーーーん、うーしゃーーーん! こっちきてぇーーーーー!」
空中に向かう、腹からの呼びかけ。
瞬き程の時間で、リアンの前に炎と水が出現した。
すぐにそれらの中から、炎を纏ったトカゲと、先ほど死に物狂いで逃げていた暫定観賞魚が現れる。
……そう、宙に水を出してその上で泳ぐゼリー魚と、さっき林の木に姿を隠して貼りついていた炎トカゲだ。
お子様方は口をあんぐりと開け、大人たちは少し警戒する。
いきなり現れた普通ではない生物に、警戒心を持つのは至極当たり前のことだと思う。
『おうおう! ようやくオレらのことをお呼びなすったぁ!』
『そうじゃそうじゃ。ほんに待ちくたびれておりましたぞ、リアン様』
『ほんとにねぇ~。いつ紹介してくれるのか思ってたよぉ~』
は!? こいつら喋るのかよ! しかもシルクねずみお前もか!!
と俺が思っていると、パリン、とどこかから薄い飴細工を割るような音が聞こえてきた。ぱたた、と羽ばたく音がする。
見ると、クリーム色の小鳥がゼリー魚の横に羽ばたきながら静止していた。
『リアン様は私たちが来ていることをご存じでしたのに、人の子たちにはお隠しなさるのですもの。仕方ありませんよ』
……やっぱりこの小鳥も普通の小鳥じゃなかった。そもそもショールを羽織ってる小鳥が普通の小鳥なワケがないんだが……。
ふと、クリストファー様が深いため息をついた。
少し眉間に皺が寄っているその表情に、リアンがおずおずと訊ねる。
「……ままぁ、おこってゆ?」
すると、クリストファー様は、先ほどよりは穏やかな声で答えた。
「……怒ってはいないけど、なんで今日になるまでリアンは黙ってたのか、そして何で俺たち大人たちは気づかなかったのか、とは思ってるかな……」
「……ごめんなしゃい……」
……謝った、ということは、クリストファー様の疑問の答えを、リアンは知ってるということか?
まあ、普通に聞き出してもこちらの納得いく答えが出てくるかどうかは分からないが……。
「……クリスおじさま」
アルフォンソ様がようやく呆然状態から抜け出されたようだ。
おずおずと、クリストファー様にご質問なさる。
「……このトリ……、ふつうのトリじゃないんですね?」
「……うん、そうなるね」
「そうですか。だってさ、ミハイル。このトリはかえないトリだよ」
「……うぅ~……」
アルフォンソ様に諭され、抱きかかえられたまましょんぼりとなさるミハイル様。
まあ仕方ない。飼育用の小鳥なら、普通の、安全と判断された小鳥をご用意いたしますので。
それは後で護衛が引き継ぎしてくれるだろう。
「……二人は遊んどいで。僕たちはちょっと用事が出来たから」
「はい」
すぐにでも報告する必要があると感じたのか、クリストファー様がアルフォンソ様とミハイル様に告げた。
アルフォンソ様は返答なされたが、ミハイル様はすっかりご機嫌を損ねたようで、護衛にしがみついたまま何もおっしゃらなかった。
アルフォンソ様が、チビ達二人とお手を繋がれて別邸の方面へと歩いていかれた。その後に護衛二人が続く。
「……さ、リアン、行くよ。その不思議生物たちも一緒にね」
「あい。みんな、おいでー」
……どうやら、リアンを様付けしているあたり、リアンの言うことなら素直に聞くらしい。この不思議生物たちは。
リアンがシルクねずみとトカゲを抱え、ゼリー魚と小鳥は飛んでついてきた。
「りあんのおともだち? やだ! ぼく、このとり、かうの!!」
ミハイル様がクリストファー様を見上げておっしゃられた。
だがクリストファー様は、リアンからじっと視線を戻さない。見定めるように、詰問するように、ただただ見つめている。
今にもクリストファー様をぽかぽかと叩きそうになっておられたミハイル様は、護衛執事が素早く抱きかかえていた。
しばらく、ミハイル様がじたばたと身じろぎなさる音だけがその場に響く。
誰も彼も、リアンの答えを待っていた。
「……あい」
クリストファー様が折れることないと観念したのか、リアンは小さく頷いた。
同時に、ミハイル様の身じろぎなさる音が止まる。横目で確認すると、護衛の腕の中でしょんぼりなさっていた。
すぅ……、とリアンは大きく息を吸い込む。
呼びかける時のように、両手を口元に添えた。
「……いーしゃーーーん、うーしゃーーーん! こっちきてぇーーーーー!」
空中に向かう、腹からの呼びかけ。
瞬き程の時間で、リアンの前に炎と水が出現した。
すぐにそれらの中から、炎を纏ったトカゲと、先ほど死に物狂いで逃げていた暫定観賞魚が現れる。
……そう、宙に水を出してその上で泳ぐゼリー魚と、さっき林の木に姿を隠して貼りついていた炎トカゲだ。
お子様方は口をあんぐりと開け、大人たちは少し警戒する。
いきなり現れた普通ではない生物に、警戒心を持つのは至極当たり前のことだと思う。
『おうおう! ようやくオレらのことをお呼びなすったぁ!』
『そうじゃそうじゃ。ほんに待ちくたびれておりましたぞ、リアン様』
『ほんとにねぇ~。いつ紹介してくれるのか思ってたよぉ~』
は!? こいつら喋るのかよ! しかもシルクねずみお前もか!!
と俺が思っていると、パリン、とどこかから薄い飴細工を割るような音が聞こえてきた。ぱたた、と羽ばたく音がする。
見ると、クリーム色の小鳥がゼリー魚の横に羽ばたきながら静止していた。
『リアン様は私たちが来ていることをご存じでしたのに、人の子たちにはお隠しなさるのですもの。仕方ありませんよ』
……やっぱりこの小鳥も普通の小鳥じゃなかった。そもそもショールを羽織ってる小鳥が普通の小鳥なワケがないんだが……。
ふと、クリストファー様が深いため息をついた。
少し眉間に皺が寄っているその表情に、リアンがおずおずと訊ねる。
「……ままぁ、おこってゆ?」
すると、クリストファー様は、先ほどよりは穏やかな声で答えた。
「……怒ってはいないけど、なんで今日になるまでリアンは黙ってたのか、そして何で俺たち大人たちは気づかなかったのか、とは思ってるかな……」
「……ごめんなしゃい……」
……謝った、ということは、クリストファー様の疑問の答えを、リアンは知ってるということか?
まあ、普通に聞き出してもこちらの納得いく答えが出てくるかどうかは分からないが……。
「……クリスおじさま」
アルフォンソ様がようやく呆然状態から抜け出されたようだ。
おずおずと、クリストファー様にご質問なさる。
「……このトリ……、ふつうのトリじゃないんですね?」
「……うん、そうなるね」
「そうですか。だってさ、ミハイル。このトリはかえないトリだよ」
「……うぅ~……」
アルフォンソ様に諭され、抱きかかえられたまましょんぼりとなさるミハイル様。
まあ仕方ない。飼育用の小鳥なら、普通の、安全と判断された小鳥をご用意いたしますので。
それは後で護衛が引き継ぎしてくれるだろう。
「……二人は遊んどいで。僕たちはちょっと用事が出来たから」
「はい」
すぐにでも報告する必要があると感じたのか、クリストファー様がアルフォンソ様とミハイル様に告げた。
アルフォンソ様は返答なされたが、ミハイル様はすっかりご機嫌を損ねたようで、護衛にしがみついたまま何もおっしゃらなかった。
アルフォンソ様が、チビ達二人とお手を繋がれて別邸の方面へと歩いていかれた。その後に護衛二人が続く。
「……さ、リアン、行くよ。その不思議生物たちも一緒にね」
「あい。みんな、おいでー」
……どうやら、リアンを様付けしているあたり、リアンの言うことなら素直に聞くらしい。この不思議生物たちは。
リアンがシルクねずみとトカゲを抱え、ゼリー魚と小鳥は飛んでついてきた。
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