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Act.11 リアンと共に
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「ともかく、そういうわけです」
「あんた、ユグドラシルとリアンにリザードの如く嫌われまくってるみたいだから、潔く引退したら? 随分と耄碌しているみたいだし」
「……ぬぐぅぅぅ……っ!!」
怒りでわなわなと震えている教皇を、リアンは底冷えする目で見上げた。
そして嘲るようなため息をついた。
「……ここまでいくと、救いようがないな」
『本当になぁ、リアン様よぅ』
うわびっくりした! 急に<属性>の演出付きで人の背後に顕れるなよ、四大精霊!
真体姿のままのイフリートたちは、その場でユグドラシルに深々と頭を下げた。
『ユグドラシル様、オヴェロン様からオレらに下知が下りやした。この人間を、自分の元に引っ立ててこいとことでごぜぇやす』
この人間、のところで四柱の視線がざくざくと教皇に突き刺さる。
しかしまあ、ユグドラシルしか高次存在を信じていない認めていない教皇のメンタルは、随分とまあ強かった。
「ハッ、急に現れて何を言うかと思えば! おべろんなどという知らぬ相手の元に私が赴かねばならん理由がどこにある! そもそも貴様ら、ユグドラシル様に敬意を払っているようではあるが、何者だ!! まさか我々とユグドラシル様、そして次代様を陥れようという魔物の類いではなかろうな!!」
……おーう。
俺は内心頭を抱えた。そして、事前情報をくれて心の準備をさせてくれた聖女マキナに、感謝の念が沸き起こった。
もう後ろ振り向けないもん、俺。四大属性の<魔法素>や<属性>が滅茶苦茶荒れ狂ってる場面なんか見たくない。
「私はユグドラシル様と世界樹様の忠実なしもべ!! 貴様らのような得体の知れぬ魔物など、この場で討伐してくれる!!」
その瞬間、ギュルンッ!! とまた教皇を蔦が拘束した。
後ろ手に縛られ、魔力圧で強制的に地面に座らせられている教皇。浅い呼吸で震えている。
『見苦しいぞ』
ユグドラシルが冷徹なまなざしで、ユグドラシルは最後通告を告げ始める。
『アーシス・エイハム。大人しく精霊の始祖オヴェロンの元に逝くのだな。貴様の見苦しい身勝手な言い分ばかりを聞くのは飽いた』
「そ、そんな、ユグドラシル様、」
『これ以上貴様の言い分を聞く必要は無い。イフリート、ウンディーネ、シルフ、ノーム、連れて行け』
ユグドラシルの命令にめいめい返答する四大精霊たち。
……自分たちの教団の最高指導者の危機であるのに動けない騎士殿たち。精霊達の怒りに触れたとあっては滅多な動きは出来ないだろうな。
そもそも聖女マキナが助ける気がない。取りなしならもっと早いタイミングから出来ただろうし、今も教皇を無視してネレンミア殿の回復や解呪にのみ専念している。
……王侯貴族からの心証は良くない聖女様だろうな……。
一方の教皇は、ユグドラシルからの圧で身動きが取れないまま、ぐわりと迫り来るノームの巨大な手を呆然と見つめていた。
っ、いや、何か言うのか?
「………………っ、ふ、はは。ユグドラシル様に徒なす者どもめが!!! 貴様らには永劫の地獄が待ち受けてい」
……その先を、彼が口に出すことはなかった。
多分、ユグドラシルを免罪符に、自分の意見だけを正当化するようなことを口にした教皇が、目障りだったのだろう。
何せ、彼らは四大精霊なのだ。
四大精霊たる彼らにまさかそんなことを言う人間がいようとは、魔道を修めた者であればあるほど信じられないことである。
ノームは掌程度の長さの棒を掴むように、無造作、無遠慮、無配慮な力で教皇の体を握った。
めきばき――体中の骨が砕ける音――、ぶしゅっ――内蔵や血管が破裂する音――、ぼたぼた――ノームの手の隙間から溢れた血が地面に滴り落ちる音――。
教皇アーシス・エイハムが、最期に上げた音だった。
「あんた、ユグドラシルとリアンにリザードの如く嫌われまくってるみたいだから、潔く引退したら? 随分と耄碌しているみたいだし」
「……ぬぐぅぅぅ……っ!!」
怒りでわなわなと震えている教皇を、リアンは底冷えする目で見上げた。
そして嘲るようなため息をついた。
「……ここまでいくと、救いようがないな」
『本当になぁ、リアン様よぅ』
うわびっくりした! 急に<属性>の演出付きで人の背後に顕れるなよ、四大精霊!
真体姿のままのイフリートたちは、その場でユグドラシルに深々と頭を下げた。
『ユグドラシル様、オヴェロン様からオレらに下知が下りやした。この人間を、自分の元に引っ立ててこいとことでごぜぇやす』
この人間、のところで四柱の視線がざくざくと教皇に突き刺さる。
しかしまあ、ユグドラシルしか高次存在を信じていない認めていない教皇のメンタルは、随分とまあ強かった。
「ハッ、急に現れて何を言うかと思えば! おべろんなどという知らぬ相手の元に私が赴かねばならん理由がどこにある! そもそも貴様ら、ユグドラシル様に敬意を払っているようではあるが、何者だ!! まさか我々とユグドラシル様、そして次代様を陥れようという魔物の類いではなかろうな!!」
……おーう。
俺は内心頭を抱えた。そして、事前情報をくれて心の準備をさせてくれた聖女マキナに、感謝の念が沸き起こった。
もう後ろ振り向けないもん、俺。四大属性の<魔法素>や<属性>が滅茶苦茶荒れ狂ってる場面なんか見たくない。
「私はユグドラシル様と世界樹様の忠実なしもべ!! 貴様らのような得体の知れぬ魔物など、この場で討伐してくれる!!」
その瞬間、ギュルンッ!! とまた教皇を蔦が拘束した。
後ろ手に縛られ、魔力圧で強制的に地面に座らせられている教皇。浅い呼吸で震えている。
『見苦しいぞ』
ユグドラシルが冷徹なまなざしで、ユグドラシルは最後通告を告げ始める。
『アーシス・エイハム。大人しく精霊の始祖オヴェロンの元に逝くのだな。貴様の見苦しい身勝手な言い分ばかりを聞くのは飽いた』
「そ、そんな、ユグドラシル様、」
『これ以上貴様の言い分を聞く必要は無い。イフリート、ウンディーネ、シルフ、ノーム、連れて行け』
ユグドラシルの命令にめいめい返答する四大精霊たち。
……自分たちの教団の最高指導者の危機であるのに動けない騎士殿たち。精霊達の怒りに触れたとあっては滅多な動きは出来ないだろうな。
そもそも聖女マキナが助ける気がない。取りなしならもっと早いタイミングから出来ただろうし、今も教皇を無視してネレンミア殿の回復や解呪にのみ専念している。
……王侯貴族からの心証は良くない聖女様だろうな……。
一方の教皇は、ユグドラシルからの圧で身動きが取れないまま、ぐわりと迫り来るノームの巨大な手を呆然と見つめていた。
っ、いや、何か言うのか?
「………………っ、ふ、はは。ユグドラシル様に徒なす者どもめが!!! 貴様らには永劫の地獄が待ち受けてい」
……その先を、彼が口に出すことはなかった。
多分、ユグドラシルを免罪符に、自分の意見だけを正当化するようなことを口にした教皇が、目障りだったのだろう。
何せ、彼らは四大精霊なのだ。
四大精霊たる彼らにまさかそんなことを言う人間がいようとは、魔道を修めた者であればあるほど信じられないことである。
ノームは掌程度の長さの棒を掴むように、無造作、無遠慮、無配慮な力で教皇の体を握った。
めきばき――体中の骨が砕ける音――、ぶしゅっ――内蔵や血管が破裂する音――、ぼたぼた――ノームの手の隙間から溢れた血が地面に滴り落ちる音――。
教皇アーシス・エイハムが、最期に上げた音だった。
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